04500.『元の世界』団体旅行
それは初めて、仲間たちを『元の世界』に招待したときのことだった。
十分に事前準備を重ねて、調査・確認も終わらせ、かなり前からゲート扱いになっている賃貸家屋を通じて――僕、ラスティアラ、ディア、マリア、スノウ、リーパーの六人で、『元の世界』まで遊びにやって来る。
六人揃って、家から出た。
その『異世界』とは少し違う『青い空』を見上げて、まず零すのはマリア。
「こ、ここが……」
同じ色の空だ。ただ、その空の下に見える光景は、少し異なる。
以前にクウネルを招待したときと全く同じ場所で、田舎風景という一言で表現しても、その家屋の造りは特殊。遠くで歩く住民の服も、全く別物。
いまみんなが、あの『異世界』という三文字を、言葉ではなく肌で味わってくれていることだろう。
「うわあ……」
呟いて、ぼうっと眺め続けるのはマリアとリーパー。
二人の格好は、以前にクウネルと一緒に買って、《ディフォルト・武装破壊》でプレゼントして回った奴だ。
地毛が黒なので日本でも自然で、他に変装らしい変装はしていない。
対して、ラスティアラとディアとスノウは、魔法で髪を黒染めしていて(セルドラが使っていたのを、スノウがパクッてオシャレ系簡易魔法に改良した)、その上でこちらもプレゼントした『異界の服』を纏っている。
ただ、髪の変色は何度も繰り返すと(竜人であるスノウ以外の)髪が痛む恐れがあるので、他の解決策を考えているところでもある。
ちなみにディアとマリアは、以前研究されたプロトタイプの義肢・義眼が使われていて――と、とにかく全員が『元の世界』に普通の女の子として溶け込んでいた。
その中でもディアが特に落ち着きなく、きょろきょろと見回しては「あれなんだ!?」とラスティアラと一緒に盛り上がっている。
ああ、平和だ……。
そう和む僕の隣で、スノウが一人だけ静かに警戒していた。
「…………」
「スノウ。一応前に来たときに安全は確認したから、大丈夫だよ」
そう言っても、まだスノウは警戒を解いてくれない。
その竜人の超人的な五感で、どこかに潜伏者がいないかを確認し続ける。
「先にカナミが、ラスティアラと一緒にご両親に挨拶したって話は聞いてるけど……。それでも、慣れないところってなんだか不安なんだよね。癖で、地形とか色々確認しちゃう」
暇人二人組は、こういったイベントを先行することが多い。
そのことをスノウは知っていて――でも、元軍人・元斥候としての性が出てしまうようだ。
「ちょっと魔力を奮発して、僕が《ディメンション》展開してるんだけど。それでも、不安?」
「それなら安心……、ん? いや、魔法使うと、こっちの『切れ目』ってやつが反応するんじゃなかったっけ?」
「前に来たとき、それも解決したんだよ。今回は、本当の本当に超々安全って確認したからこその海外団体旅行ってわけ」
「……んー。でも、その超々安全って言ってるのが、カナミなのがなあ。しかも、付き添ったのがラスティアラだけってのもあるし」
それでも、スノウは納得がいかないようだ。
その僕たちの信用のなさは受け入れて、色々と情報を開示していく。
「実は、みんなに隠してたけど……、前に来たとき、ラスティアラだけじゃなくて、エルとディプラクラにも来て貰ったんだ。二人にも『切れ目』の問題はよく確認して貰ったから、本当に安心して」
「え? エルとディプラクラが……?」
「こっそり来て貰わないといけない大事な事情があったんだ。でも、おかげで、こうして『元の世界』君とも仲良くなれてる」
と、ふと僕は空を見上げる。
反応は返ってこないが、『元の世界』はツンデレなところがある。いまも僕たちを見守ってくれているだろう。とはいえ、妙なことをし始めたら、すぐ『身じろぎ』して追い出そうとするだろうが……。
そこまで話して、スノウは肩の力を抜く。
元婚約者の名前が出て安堵したようで、警戒心を緩めていく。
「……そうなんだ。あのエルなら、私の何倍も上手くやるし、安心か」
納得してくれて有り難いが、信用度が違いすぎて、ちょっと悲しくもある。
あの『終譚祭』での僕とエルを比べれば妥当なのだが、ここらで挽回したいところだ。
早く汚名を返上して、エルよりも信用できる男になろう。
そう誓ったところで、思いがけない指摘がスノウから入る。
「でも、むー……。なんかちょっとあれだなあ。その『切れ目』の確認作業って、私たちじゃ駄目だったの? 私たちじゃ、問題起こすって思った?」
その「大事な事情」を任されたのが、なぜエルとディプラクラの二人だったのかと突かれる。
信用していないのはそっちもだろうと、スノウは少し頬を膨らませていた。
「いや、みんなが駄目ってわけじゃないよ? ただ、向き不向きを考えると、エルが一番適任だったから。あの白虹の魔力にも関わる技術だったし」
「ふーん、へー。なんか最近のカナミって、エルばっかりと連んでるよね? 私たちよりもさー」
「そ、そう? そんなことない……ような、あるような?」
「あるよ、あるよ。ねえ、みんな」
とスノウは答えつつ、周囲を見回した。
すると、みんなが揃って「うん」と頷いていた。
僕としては同性相手にしかできないことも多いのだと言い訳がしたかった。だが、みんなの表情を見ると、それを踏まえた上でエルと遊んでいる回数が多いようだ。
正直、僕自身も思っていたことだ。
言い逃れしようがないので、開き直って、誤魔化していく。
「――ああ、そういえばっ! ここに最初に呼んだセルドラとクウネルは、あそこの土とか食べてたなあ! スノウは食べないの!?」
下手すぎる誤魔化し方だ。だから、スノウから睨まれる――ことはなく、「ふふっ」と苦笑いを浮かべられた。
こんなに下手な誤魔化し方でも良くなった気軽な空気を味わいつつ、適当に誤魔化されてくれる。
「ふふっ、セルドラ……。こっちに来て、まず土食べたんだ。当たり前だけど、私はセルドラほど食べ物に切羽詰まってないからね! こっちには美味しいものを一杯食べに来たんだから!」
「ああっ、了解! それなら、まずはあっちに行こっか。美味しいものをたくさん食べられるところがあるから」
と僕は、誤魔化されてくれたスノウを、最初の目的地まで案内しようとする。
しかし、一行の動きは悪かった。
いま僕が「あそこの土」と指差したところに向かった仲間たちがいたからだ。
マリアが懐から小さな袋を取り出して、地質研究家のように採取していく。
「食べはしませんが……けど、少し持って帰らせてください。色々と調べたいと思うのは確かです」
さらに、その後ろにはラスティアラも続いている。
いまの僕の「食べないの?」という言葉を聞いて、なぜかセルドラたちに負けじといった顔で、土を手に取って口に含んでいく。
「私は食べるよ! 『異世界』記念だからね! たぶん、いけるいける! 土とか石を食べる風習の地方なんて一杯あるし!」
精神的空腹や学術的興味は関係なく、ノリと勢いだけで土のテイスティングをしようとする。
それを見た周りの仲間たちは慌てた。すぐさま保護者代理であるマリアとリーパーは近づいて止めようとする――が、間に合わない。
「――あっ! もうっ、カナミさんが変なことを言うからですよ! ラスティアラさんは本だけの知識で、すぐいけると思っちゃうんですから!」
「ラスティアラお姉ちゃん、それ、ばっちいよ! すぐペッして、ペッ! お腹痛くなっちゃうから!」
だが、ラスティアラは二人の制止を振り切って、少量ではあるが土をモグモグしつつ「芳醇な大地の香りとコクが……というか、ただの土だなあこれ」と適当なことを言って、ついには飲み込んでしまう。
「んー、やっぱ土って不味いね! 二人とも、心配しないでも大丈夫だよ! 私って丈夫な胃してるからさ! ……それに、もしものときは、ディアの回復魔法でお腹撫で撫でしてもらう!」
「いや、駄目だぞ、ラスティアラ。そういう回復魔法ありきの無茶は治さないって、ずっと言ってるだろ」
「げっ……。そ、そういえば、最近はそうだったっけ……! じゃあ、回復魔法なしのお腹撫で撫では!?」
「え? あー、まあ……。それならいいか」
「よしっ、なら問題なし! ディア大好き!」
解決していない気はするが、ラスティアラの中では解決したようだ。
それに保護者たちは呆れつつ、でもまあいつものことかとマリアは笑って(本当に、マリアはラスティアラに甘い)、ラスティアラの胃の丈夫さを信じて、聞いていく。
「もう食べてしまったものは仕方ないとして……。それでラスティアラさん、どうなんです? あのクウネルさんも食べたということですから、私たちの世界と大きな違いがあるのでは?」
それはそれとして、気になっていたようだ。
理由は、あのクウネルが食べたならというのが大部分のようだが。
「んー、正直分かんない……。けど、これ魔力が薄味なのかな? あとなんか鉄っぽい……?」
凄い。
一発で違いを言い当てるラスティアラに、僕は二重の意味で驚く。
舌が確か過ぎる。
あと、おまえ『異世界』のほうでも土を食べたことあるのか? ……ありそうだ。
と自己解決していると、マリアも自己解決していく。
「なるほど。そういうことですか。それが、こちらで魔法が発動しにくい理由に繋がってそうですね」
そう分析するマリアの隣で、リーパーが話に続いていく。
「うん、だねー。なんかこっちって、空気中の魔力が薄いよね。千年前の『魔の毒』の環境を知ってるアタシからすると、もう白湯だよ、白湯。これ」
その分析を答え合わせするように僕も続いていって――
「もうちょっと前までは、結構マシだったんだけどね。でも、うちの妹の陽滝が星ごと凍らせたり、あのセルドラが本気で暴れたりして、星単位でごっそりと減っちゃって――」
「なんか隠そうとしてるけど、ここでお兄ちゃんが『紫の糸』で世界を埋め尽くしたのも原因の一つだと思うよ? アタシ知ってるんだから」
「あ、あれは……。深海の『魔の毒』を中心に使って伸ばしてたから……、そこまで影響なかったはず」
僕も十分やらかしていると、リーパーに少し怒られてしまう。
しかし、『元の世界』で暴れた面子の中では、僕が一番環境に気を遣っていたはずだ。
ただ、周囲からは「大して変わらない」という目線が突き刺さり、そこで話を締め括るようにラスティアラから号令をかけていく。
「みんな! これ以上、こっちの人たちに迷惑をかけちゃ駄目だよ! 連合国の代表として、慎みある行動を取ろう!」
その号令に、迷惑をかけた代表の僕が続いていく。
「ああ、そうだ! ちなみに一般人に魔法を見られたり、素性がバレたりした人から退場! そういうルールだから!」
それを聞いた仲間たちは、真剣な面持ちで「了解」「当然」「分かった」と頷いていってくれる。
やっと一行が纏まったのを確認して、今度こそ僕は案内を再開する。
「――ということで、行こうか。すぐ近くだよ」
まずは様子見だ。
なので、クウネルのときと同じ旅行プラン――つまり、ファミレスに向かう。
それを聞いた仲間たちは「待ってましたー」と喜び、数百メートルほど歩いた先にあるチェーン店の建物を見つけて騒ぎ出す。
到着したとき、店前の駐車場でも一盛り上がりしてから、そのまま僕たちは入店していく。
そして、前と全く同じく、軽快な店内BGM。
女性店員の「いらっしゃいませー」という挨拶が通って、すぐに僕は答える。
「――六人で。あそこの広めのテーブルでお願いします」
それに店員さんも、すぐさま「ご案内致します」と返答して――怪訝な目を、一瞬だけした。
よく見れば、偶然にもクウネルが来たときと同じ店員さんだった。
さらに、僕の後ろに向かって、じっと目を凝らしている。
入店したあと、仲間たちが内装に目を輝かせていた。
事前に「静かに」と釘を刺しているので、クウネルの時と違って騒ぎ声は一切漏れない。
しかし、最初の自動ドア、電灯、空調システムなどを指差しては「うんうん」と楽しそうに頷き合っていた。この異文化の内装全体を肌で感じて、無言の小躍りしている興奮状態のラスティアラもいるので、正直目立つ。
最終的に、店員は「なんかやべーやつらが来た」という顔をしていた。
さらに言えば、いまは最も空いている時間帯だが、他に少なからずお客さんもいる。周囲から奇異の視線が向けられながら、僕たち一行は席に案内されていく。
お店には申し訳ないが、このまま食事を摂らせて貰いたい。
こうして、後ろでみんなが異文化に驚く姿を見るのは、大好きなゲームや漫画を布教している感覚に近く、非常に楽しいのだ。
今度こそ、それを全力で味わいたい――そう思うのは、セルドラやクウネルのときは、じっくりと味わう余裕がなかったからだろう。
以前のクウネルのときは、楽しむ余裕がなかった。
ラスティアラと陽滝を喪って、思考しているようで思考を止めていながら思考をしていた状態だった。『現在』を捨てて、『未来』だけを視ていて、およそ普通の状態ではなかった――が、いまは違う。
後ろで、異文化に驚いている姿を、しっかりと『現在』認識できている。
わちゃわちゃしているみんなが、とても可愛らしくて、和んで……。
どこか、僕の生まれた『元の世界』の凄さを自慢できているような気もして、大変に心地が良い……!
あとで他の知り合いも呼ぼう。
いま確認できたけれど、「異世界人を現代日本に招待して、その反応を見る」というのは何度繰り返しても楽しめそうだ。
と、新たな生き甲斐を見出したところで、店員さんがテーブルまでやってくる。
すぐに僕は、前もって考えていた六人分の注文を伝えた(できるだけ、お店側に迷惑がかからないように、クウネルのときの経験を活かした時短だ)。
その際、全員分のドリンクバーも忘れない。
僕は招待者として、みんなにはテーブルで待って貰って、全員分のフリードリンクをコップに注いで持ってくる。
何気ない顔で、それぞれが好きそうなテイストの炭酸ジュースを、みんなの前に置いて「美味しいよ」と促した。そして、それぞれが口を付けては――
「う、うわっ! 喉がしゅわしゅわ!」
「これは……、炭酸水ですか? 初めてですが、ちょっと私は苦手ですね」
「私は貴族の集まりで飲んだことあるかな? でも、私の知ってるやつとちょっと違う? しゅわしゅわとフルーツ味が濃いなー」
「おっ。いいな、これ。なあ、リーパー」
「いいよね、ディアお姉ちゃん! アタシも、こういう甘いの大好きだよ!」
ああ、楽しい……。
生きてて良かったぁ……。
と思いつつ、僕は鼻を軽く鳴らす。
「ふふん」
「カナミさん。自分のことじゃないのに、なんだか自慢げですね」
その僕の反応を見逃さなかったのは、マリアだった。
ただ、咎めるような顔はしていない。
僕が嬉しそうなことに嬉しそうにしている顔をしていたので、素直に自分の欲望の充足を伝えていく。
「うん。自慢げだし……、すごく楽しいよ。こうして、『元の世界』でみんなと一緒に食べられるようになったのが」
「なら、良かったです……。けど、申し訳ありません。炭酸は、私駄目ですね。凄いのは分かっても、美味しいとは思えません」
「苦手な人もいるのは当たり前だよ。実際、僕もそこまで得意じゃないし」
「えぇぇ……。カナミさん、自分が駄目なものを振る舞ったんですか?」
「いや、でも炭酸って、こっちだと人気なんだよ。子供たちには、特に」
「まあ確かに、そうみたいですね……」
苦手なのは、マリアと僕だけのようで、みんなは笑顔で驚いている。
特にディア・リーパーが「これ、美味しいー!」とハマっているのが確認できた。
ラスティアラは以前来たときに、高級ホテルでドンペリ・シャンパンなどのスパークリングワインを飲まされていたので炭酸の驚きは少ないようだ。
なので他の仲間たちに「ちょっと頂戴!」と願って、回し飲みをするのがメイン――なのだが、そのラスティアラの動きが、ふと止まった。
じっとグラスのジュースを見始めたのを、パーティーの医療係なところのあるディアが心配そうに声をかける。
「どうした、ラスティアラ。お腹、痛くなったか? 擦ろうか?」
先ほどの土食に加えて、水分の摂りすぎだ。
ただ、健康面についての問診を始めようとしたディアに向かって、ゆっくりとラスティアラは首を振る。
そして、好奇心で目を輝かせて、零す。
「ま、混ぜたい……」
ジュースの入ったみんなのコップと先ほど僕が注いできたサーバーを見て、ドリンクのミックスを思い付いただけのようだ。
僕も子供の頃に何度かやって、楽しんだり後悔したりしたものだが……。
ラスティアラの長身を眺めてから、言葉を濁す。
「それは……、推奨してる店もあるから大丈夫だろうけど、ここは違うっぽいからなあ。リーパーくらいの年なら、たぶんミックスしても許されると思う……。あとマリアとディアまでなら、ギリギリ? でも、おまえはちょっと……」
実際は「飲みきれる範囲ならば構わない」あたりがお店側の見解になるだろう。だが、一般的なマナーとして「余り大人がやることではない」と大人ぶって答えてみた。
それを聞いたラスティアラはショックを受ける。
「えぇっ、駄目なの!? 自由な飲物なのに!?」
「駄目じゃないけど、それを嬉々とやる大人は少し目立つ」
「く、くうっ! また立ち塞がる「やっていいのは子供だけ」という理不尽ルール……! 子供だよ、私は! まだまだ!」
「いや、見た目がこっちの成人女性の平均身長を超えてるから……」
「それ! 前々から思ってたけど、私は四歳扱いで色々と禁止されてることが多いのに! こういうのだと大人扱いで禁止されてるのって酷くない!? 理不尽だぁ!」
常日頃から抱えていた不満を、ここでぶちまけられた。
確かに、ラスティアラの言っていることは理解出来る。
なので、今回は自分で作る楽しみは薄れても、リーパーあたりに混ぜて欲しいドリンクを頼んで貰うしかないか――と僕が考えたとき、もっと別の提案がなされる。
「だから、年齢相応の姿になれる魔法が私は欲しい!」
「え?」
急な根本的すぎる解決案に、僕は驚く。
「状況に応じて、ちゃんと精神年齢相応の姿になれるような……。そんな魔法が、私には必要だよ! そう思わない!?」
想像する。
確かに、そういう魔法があれば、いまのラスティアラの理不尽は解決するだろう。
身体年齢と精神年齢の食い違いも減って、健全な成長にも繋がるだろう。
誰かを謀る目的でなければ、十分に研究していい魔法だ。
しかし、リーパーぐらいになったラスティアラか……。
へえ……。なるほど……。ふんふんふん。
「いや、待ってください、カナミさん。何ですか、その「そういうのも悪くないな」って想像してる顔は。間違いなく、肉体変異は危険ですよ」
「もちろん、身体や時間の操作は危険だよ。だけど、幻影系ならいいんじゃない? 今回みたいなとき用に。ディプラクラが研究してるファッション系魔法の発展版だ」
「んー、まあ。それなら、いや、んー……」
マリアも今回のことに関しては、ラスティアラに落ち度はないと思っているのだろう。
魔法について、仲間たちも本気で考えていく。
そして、ディアが軽い気持ちで反応して、それにマリアが過剰反応する。
「精神年齢相応の姿になる魔法か……。ははっ、それだとカナミは子供に、リーパーは大人になるかもな」
「カ、カナミさんが子供にっ……!」
スノウとリーパーも楽しそうに話題に加わっていく。
「じゃあ、私はちょっと小さくなるのかな? というか、そんな魔法あると犯罪に使われる気しかしないけどね」
「アタシも嫌な予感をビンビンに感じるけど……、大人にはなってみたいなー!」
意外にみんなのウケがいい……!
夢が広がる……!
なので、僕とラスティアラは「いつかみんなでやってみよう」と頷いた。
ただ、それはそれとして今日は仕方ないので、ラスティアラは「絶対に飲みきる」と決めてから、リーパーを連れてドリンクバーまで元気よく向かって行く。
年下のリーパーに付き合うお姉さんという自然な形で、嬉しそうにドリンクをミックスし始めた。
そのカモフラージュもあってか、ミックス行為は大して注目されない。
当たり前だが、騒ぎさえしなければ問題ないお客さんや店員さんがほとんどだろう。
僕の「大人は少し目立つ」というのは世界間の移動で神経質になっていただけのようだった。
頼んでいた料理がテーブルに届くまで、ラスティアラは――いや、ラスティアラだけでなくみんなで、こちらのミックスジュースを全力で楽しんでいった。
時間逆行してるので、次話投稿するときには、この「04500.『元の世界』団体旅行」は別の正しい場所に移動します。
それよりも、時間逆行するならいきなり今までやっていた話の間に投稿する方が分かりやすいのかな。
と色々実験しますね。