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零章 エピローグ

※この話だけ三人称視点で書いてあります。


※この作品のストーリーは次から始まります。次の話から一人称視点になります。

「―――どうして世界はこんなにも残酷なんだろうね」


 業火に包まれようと、涙がかわくことはなかった。血とすすで汚れた手で俺の頬を優しくなでてくれる。そしてそれが最後の慈愛であるかのようにシスターは美しく微笑んでこの世を去った。俺が守ると誓った人は俺の腕の中で息絶えた。


 最後にこの世界を呪う言葉を残して………。




 果てどなく続く、ただただ広いだけの白い空間。神が創り出したこの世の果てで、この世の終わりのような戦いが繰り広げられていた。


 幾星霜もの稲妻が降り注ぎ、地は砕かれ裂かれ絶望が底から覗いている。裁定された滅亡の炎と紫電ほとばしる氷結の銀世界に、幾重にも開かれた、この世の究極にして真理。

 

 その全てに刀一本ではむかう者が一人。


 ――――――『死神』は『神』に向かって駆け出した。




 神が見下ろす。自身の足元に転がる一人の男を。


 『戦場の死神』などと呼ばれていた男は、己が握る刀をカタカタと杖の様にしながらふらふらと立ち上がる。怒り、憎しみ、憎悪、ありとあらゆる負の感情を込めて、その目に神の姿をうつした。


 死神がまっすぐと刀をかまえる。


 同じく、神も動く。ただしひどくゆっくりと静かな動作で。そこに感情はなく、とどめをさすために反応した訳でもない。ただ、目の前の"それ"がまだ動いたからにすぎなかった。


 駆け出した死神の視界が突如爆ぜる。瞬間、死神はすんでのところで魔法を避けた。


 長年の戦士としての勘か、感情なき神の攻撃を読んでいた。二撃、三撃と神の《炸裂魔法》を避け続ける。五撃目を避け、そしてついに死神が刀を振りかぶる。


「―――ッツ!!」


 小さく吐く息と共に振り下ろされた。積年の恨みと怒りとともに。


 数多の人間の命を奪ってきた死神の最後の一閃。


 死神の最後の一撃は神に――――――かすり傷一つつきはしなかった。


 神が使用した《超級魔法》。己をも巻き込むはずの最大規模破壊魔術。しかし、それでも神には汚れ一つつくことはなく、煙が晴れれば、また神は何事もなかったように足元に転がる"それ"を見下ろすだけであった。


 一方、死神の体は燃え尽き、焼け焦げ、朽ち果てていた。


 神はもう全てが終わったとして後ろを向き、その場を立ち去ろうとした。


 

 だが、―――ゆらりと何かが立ち上がった。


 幽鬼のごとく、ふらりと。


 どこにそのような力が残っているのか。


 炭化した足で身体を支える。崩れ落ちた腕で刀をふるう。焼け焦げた目で神を睨む。


 死神は朽ちた体で一歩、神へ近づいた。


 


 そして……死神は勢いよくはじけ飛んだ。


 神が振り向きもせずに先ほどと同じようにただ軽く魔法を使った。


 たったそれだけのことで死神の百年近い復讐は終わりを迎えた。


 使われたのはただの小規模な《爆破魔法》。この戦いの中では最も威力が弱かった攻撃。


 それでも―――死神が倒れ、息をひきとるには十分な威力だった。


 体が倒れる中、意識が消える中、死神は何をみたのか。何を思い出したのか。


 ただ自然と神に向かって腕が前に伸びたような気がした。


 そんな気がした。その程度のことだった。



 そうして死神の意識は今度こそ途絶えた。


 死神は神に敗北したのだった。





 ………静寂の中、神は呟いた。


 この日、この殺し合いのなかで初めて言葉を発っした。


「―――ありえない」


 神の頬には今、一筋の金色の血が静かに流れていた。


 死神が崩れ死んでゆくさなか、彼が最後まで握っていた刀が頬をかすり、小さく切り傷となっていた。


「…………………」


 神は静かに手を見つめた。


 そして次に己に傷をつけた男の死体を改めて見下ろした。


 ―――だがそこには何もなかった。


 その男の朽ちた肉体も燃えカスとなった肉片も。何もかもが。


 神は息をのむ。


 全てが己の予想を超えていた。


 しかし、それでも神が感情を表に出したのはこの時、それきりであった。


 原因不明でありながら、それ以上の追及はしなかった。


 神は空間を引き寄せ、己が元居たイスに腰を下ろす。


 そうして『神』はまた、何もない虚空をジッと眺め続けた。


 この千年間毎日そうしてきたように。


※この物語はフィクションです。登場する人物、団体、名称は全て架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。


※ギルド【幽焼け】様が主催された第5回なろうデスゲームに参加させて頂いておりました。

開催期間中、応援して下さった方々には本当に感謝の念が絶えません。

ありがとうございました。

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