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5 探索師・古海淳の【第六感】

「しかし、生臭いな……」


 ゴブリンを斬り殺しまくった結果、ゴブリンの死臭がひどく充満してしまった。


『きちんと処理をしなくては、他の探索師の迷惑になる。汝、やり方は心得ているか?』

「初めてダンジョンに潜った人間にいうセリフじゃないだろうが……神竜は兄さんと一緒に探索をしていたんだから、わかるんじゃないか?」

『すべてを教えてしまったら、教えられる側は学べないと思ったのだ。これに関しては仕方ないようだな』


 受付嬢のお姉さんはモンスターの処理の仕方を教えてくれなかった。

 絶対に必要になる知識だというのに……。


「ああ、ゴブリンの退治をしてくれたのは君だったのか」


 後ろを見ると、中年の男性が短剣を手の中でぐるぐると回しながらこちらを見ていた。


「誰だ、あんたは」

「君と同じ探索師だ。ダンジョンが現れてからずっと潜っている、いわば古参だ。自分でいうのも何だが」


 よく見ると、服も靴もボロボロで、さまざまな色のシミがついている。

 それと対照的に、短剣だけは妙に綺麗だった。


「その短剣、すごい輝いてるが。新品かなのか?」

「いいや、この剣とは、長い付き合いだ。私にとって、この短剣は命みたいなものでね。こいつの手入れだけは、誰よりもやっている自信がある」


 探索師は、「ちょっと落ち着いて話をしようか、君」と、にこやかな表情で、こちらに訴えかけてくきた。


「……本当に信頼していいのか、あのおっさん」


 小声で神竜にきいてみる。


『大丈夫だ、ただの探索師だ。警戒する必要はない』

「信じるぞ、その言葉」


 俺は腰掛け、背を壁に預けた。


「まだいっていなかったが。私は古海淳(ふるみあつし)。独り身の探索師さ」

「俺は赤城竜司(あかぎりゅうじ)。高一」

「学生でここにきているということは、きっといろいろあるんだろう」

「唯一の身寄りだった兄さんを亡くして、ここに。兄さんは、ダンジョンで死んだから」


 きのうのことを思い出すと、怒りと憎しみとかがぐるぐる渦巻いてやるせなくなる。

 無意識のうちに、拳をぎゅっと握りしめていた。


「私も似たようなものさ。妻を亡くして、自暴自棄になって、仕事を辞めて。どれも続かなくて、最後はここにたどりついた。探索師っていうのはそういう訳ありばかりなのさ」


 すると、淳はいきなりガハハと笑い出した。


「すまない、ちょっと変なところで笑ってしまったな。すまない」


 そういうと、古海はどんよりとした表情に戻った。

 きっと、古海はいろいろ抱えているのだろう。


「淳さんは、ダンジョンに潜る目的は他にあるんですか」

「死ぬため、かな。私はもう失うものは自分の命くらいなんだ。それなら、この命、尽き果てるまで極地に置いてもいいと思ったのさ。君は?」

「俺は。ダンジョンをぶっ壊してやりたいと思っている。兄さんのために、ダンジョンに復讐がしたいんだ」

「復讐は何も生まない。それに、ぶっ飛びすぎた考えだ。人ではないものに復讐したいなんてね」


 この思いは、他人に受け入れられなくても仕方ない。

 それでも────。


「俺は、本気だ。そのために強力な力を手に入れた。初めての探索で、第三層のケンタウロスを一撃で倒してきた」


 古海は、唖然とする。


「それは本当か」


 俺はうなずく。

 古海は考える素振りを少し見せたあと、また笑い始めた。


「面白い。君の夢、私が付き合おうか。どうせ死ぬなら、でっかい夢を見て死にたいもんだ。組まないか」

「いいんですか」

「いいさ。面白そうなことを本気でやろうとする君を、見届けたいだけだ」

「ありがとうございます」


 古海はふいに立ち上がる。


「それじゃあ、竜司くん。決闘をしようか。その腕前、見せてもらいたい」


 初の対人戦。ここで、自分の実力を確認しておきたい。


「私の【ユニークスキル】は【第六感(シックスセンス)】。能力は、未来予知だ。きっと今の君では、私に勝てないだろう」


 ここで勝たない限りは、先に進めない。


「引き受けます、その勝負。負けられませんから」

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