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28 ゴーレム討伐①

 風神竜の討伐から数日が経つ。


 家に帰るやいなや、吸い込まれるようにベッドに倒れたことをよく覚えている。戦っている最中は気にしていなかったが、相当な体力を持っていかれたらしい。


 ダンジョンから出ると、ステータスは意味をなさない。【人竜融合】はもちろんのこと、【バックステップ(風)】すら発動できない。MPに関係なく、肉体を酷使し、精神的に強く負荷がかかったので、疲労感を覚えた、というわけだ。


「ただ、風神竜の討伐は序曲に過ぎないと」

『汝がそのことを理解しているのは幸いだな』

「当たり前だ。なんせあと二体のボスを倒さなくちゃならんのだろう?」

『いい忘れていたが、二体倒してようやくスタートラインだ』

「そりゃ初耳なんだが」


 現在、俺は舞風ダンジョンに潜っていた。八ツ橋と有栖はきていない。つまり、単独での探索だ。


『【早熟(アーリーブルーム)】というユニークスキルはたしかに強力だ。他の者に比べ短時間で強くなれるのだからな。しかし、たった数ヶ月の初心者(ビギナー)上級者(エキスパート)を易々と凌げるほど、探索師も甘くない』

「人間でもないのに詳しいな」

『汝の兄のおかげだ』


 赤城王牙。ダンジョンで死んだ兄貴であり、黒神竜の前相棒である。

 彼の死が、俺をダンジョンに引き寄せた。


「ほぅ。元相棒の兄さんは、どれくらい強かったんだ」

『汝と比べるにはまだ早過ぎるくらい、とでもいっておこう』

「そりゃ相当らしいな」

『そうさ。なんせあの男が死ぬとは信じられなかったくらいであるからな』

「どうして死んだかは……」

『まだ伝えるときではない』

「そういわれると思ってたよ」


 兄の死については、いまだ疑問が残っている。どうして死んだかはもちろんだが。


 どうして黒神竜が舞風ダンジョンの第三層にいたか、そしてどうやって俺の意識に語りかけてきたのか。


 舞風ダンジョンの受付で遺留品をもらっている以上、兄さんが死んだのも舞風ダンジョンとみて間違いないだろう。


 舞風ダンジョンを攻略した経験をふまえると、あそこは、兄さんが死ぬような場所ではないと思った。


 唯一懸念されるのは、俺の周りで、不可解な死を迎えた者がいることだ。


 古海淳。


 黒神竜曰く、古海は安易に真実を知ろうとして、生命を絶たれたという。


 隠し部屋にいたゴーレムは、あの階層におけるモンスターの一般的なレベルを上回っていた。


 こういった現象が、舞風ダンジョンの他の場所でも起こるとすれば、初心者向けであるはずのあそこで兄が死んだのにも、説明がつきそうだ。


「なあ。古海のことだが。安易に真実を知ろうとした、ってのはどういうことだ?」

『ダンジョンの秘密を知ろうとしすぎただけのことだ。だから、消された』

「答えになっていないじゃないか!」

『立場を弁えろ、人間よ。私はコンピューターでも教科書でもないし、なにより汝にとって都合のよい存在と誤解されては困る。汝の求めしむるところを、私が解決してやるとは限らないのだ』

「……すまない」


 黒神竜との距離を感じさせる言葉だった。仲良しこよしではない。俺に目的があって、黒神竜もそれは同じだ。


 目的だけで繋がるような関係でありたいと望まれるなら、黙って受け入れるしかない。


 兄の死の真実を手繰り寄せるには、黒神竜が必要なのだから。


『わかったなら構わない。ともかく、汝には強くなってもらう必要がある。そうしてはじめて、汝は兄の死の真相を知りえるだろう。いいか?』

「ああ。ダンジョンに潜り、戦い、強くなる。戦うのは俺の担当というわけだな」


 戦わねばならない。もっと、強く……。



「さて、きょうは隠し部屋にいく。それでいいんだよな?」

『むろん。隠し部屋の秘密は、汝の試行錯誤によって発見することだ』

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