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17 組織のボス

 いつの間に、知らぬ男が俺たちの前に顕現した。背が高く、威圧感が溢れ出ている。筋肉質な体で、ガタイがいい。アレックスと同じで、頭にはカチューシャのようなものをつけていた。


「いやぁ、【迷宮神話(ラビリンスミス)】も大きくなれば人払いと隠密の能力を使えるものがひとりやふたりいてもおかしくないという話。アレックスが潰してくれればボスである私の出番はなかったが、状況が変わった」


 ボスは自身の拳を強く突き合わせる。


「アレックスが取り逃した敵だとはいえ、私にとっては片腕で十分といった程度だろう。たとえ厄介な魔法を使おうとも、私の拳は止められるまい」


「本当にそれで勝つつもりなのか? というか、俺たちのような小物のためにわざわざボスがおでましとは、正直強くないんじゃなかろうな」


「目障りな蚊を手で叩いて殺すように、目障りなものに私が制裁を加えても何もおかしくなかろう。どうせ君たちが私に勝てることはない」


 片腕だけの肉弾戦で、この竜の鱗を打ち破るとでもいうのだろうか。竜のに乗って空中へ浮かんでしまえば、あちらは簡単に近づくことができないだろう。


「組織名で神話を語るだけの自信はあるらしいな」


 相手を煽ることで、自分が優位に立っていると自信を錯覚させる。拳だけだからといって、油断できる相手ではない。それでも、自分にも勝てるようなレベルだと思って気持ち負けしないことはかなり大事になってくる。


「自信のある無いなど関係ない。私はボスとして勝つのみ」


 右拳の周囲に、念のようなものが具現化してきた。


「【迷宮神話(ラビリンスミス)】はいわばファミリー。子にひどい扱いをするわけにはいかない。私は"子たち"に最大限に手厚い待遇をする。その代わり、ファミリーの一員には、それ相応の働きを求める……」


「ファミリーだからって、何が違うのか」


「親子のギブアンドテイクが至った境地──────これこそ、私に仕えるファミリーの力ということよ!!」


 念はさきほどよりも大きくなり、色も濃くなっていく。


「オラアッ」


「【人竜融合】!」


 はじめのターゲットは、俺だった。飛んでくる拳を、俺は華麗にかわす。軌道を外れた拳は、壁へと吸い込まれていく。


 指はダンジョンの床に食い込むほどだった。拳がはまった場所の岩がぼろぼろと崩れ、床に落ちて嫌な音を立てる。腕の半分が埋まるほどの凄まじい力。当たったらひとたまりもない。


 反動の大きな一発のはずだったのだが、行動の遅れはさほど見えない。壁に拳がめり込んだことがなかったのではないかと勘違いしてしまいそうになる。


「まだッ!」


 拳が飛ぶたび、念は強くなり威力も向上していく。


「使えば使うほど強くなるってか。レベルアップは戦闘終了時だけじゃないのかよ」


「無論、私のファミリーは戦闘中も強くなれる。私がこの手を止めても、さらに念は強くなっていく。私のファミリーの力によってな」


 ボスは頭のカチューシャをポンと叩く。


「それは何の意味を持っているんだ?」


「呑気に語ってる余裕など、ない!」


 念が込められた拳が、腹を直撃する。竜騎士状態であるにも関わらず、痛みが直に強く伝わる。勢いのまま、俺は壁に激突した。


「い、いってぇ……」


「赤城君!」


「うわああ……ああああ……」


 八ツ橋と日向がこちらを心配してくれるのも束の間。


 背中を壁に預けたままの俺に、ボスは歩み寄ってきた。


「もうおしまいだな。優しいこの私は、最後に私の能力を教えてやろう」


「なんだ、その能力っていうのは?」


「──────【連鎖講(チェーンストラクチャ)】。頭にこのカチューシャ、つまりは学習装置をつけた者はレベルが一時的に上がる代償として、得た経験値の一部を、他のプレイヤーに共有する能力だ。つまり─────他の一員がモンスターを倒すことで、私も自動的に強くなるということよ!」

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