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勇者がいない人類の魔王軍との戦いの記録(北部王国軍参謀本部戦記)  作者: ゆーや
共和国軍の独断専行と北部王国軍の憂鬱
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day92(東部戦線に関する情報統制と綻び)

北部王国軍参謀本部情報部



 各部隊にはそれぞれが担当している戦線に関する情報は提供している。

 それと関係がない他戦線の戦況や、動員の進捗状況、部隊の編制状況、魔王軍との戦闘の全般動静などは各部隊の士気に影響するため、特別な場合を除きそもそも提供していない。南部王国崩壊のプロセスも、東部方面軍司令部には連絡したが、その下級部隊へ情報を伝えることは禁止した。



 東部戦線で共和国軍が反乱を起こしたという事実は秘匿されている。

 というのも、この事実自体が北部王国軍による指揮統制が機能していないことを意味しかねず、兵士の士気に影響する懸念があったからである。

 魔王軍という巨大な敵を相手にしているため、内部不和は今まで基本的になかったが、警戒するに越したことはない。

 もっとも、共和国軍が北部王国軍の士気に不満を抱いていて、あわよくば共和国領への進撃を試みようとしていたことは北部王国軍将校の間では公然の事実ではあったので、噂と事実がごちゃごちゃになっている現状はそれほど大きな問題ともならないという認識が参謀本部にはあった。



 そんな共和国軍が敗走し、あろうことか北部王国軍に救援要請を出してきて、それに応えないと東部戦線そのものが崩壊しかねないということ。その原因が、共和国軍の反乱に北部王国軍兵士が少なからず参加したことというのは看過できない事実だった。一部では軍法会議という話もあったが、参謀本部が一蹴した。

 この情報は断片的にではあるが、北部王国軍全体に広まりつつ合って、変な尾ひれがついて噂として周知されている。この噂の最大の問題は、その内容が場所によってバラバラで、参謀本部情報部でも把握も制御もできていないというだった。正式な情報を出してしまえば一発で解決するが、前述の通りそのまま情報を出すことはできない。



 この問題は、南部方面軍一部部隊の東部戦線への配置転換や、予備部隊だった第4軍団投入など、目に見えて動いている事態によっていよいよ覆い隠せなくなりつつある中、いかにして辻褄の合う説明を行うかという非常に難しい話となった。

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