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勇者がいない人類の魔王軍との戦いの記録(北部王国軍参謀本部戦記)  作者: ゆーや
共和国軍の独断専行と北部王国軍の憂鬱
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総動員令の検討と見送り

 「総動員令」


 全国民を軍に編入し、戦闘部隊、後方支援関係なく軍務に就かせる国王命令。


 魔王軍との戦いが始まってから発令の是非がずっと議論されてきた。

 ただ、ひとたび発令すると国家経済が完全に停止するため、軍事活動への影響も大きく、諸刃の剣の性格が強かったため今日まで発令は引き延ばしされてきた。


 内容についても紆余曲折があった。


 当初案はそもそも発令自体を想定していなかったため、全国民総動員という実現方法もわからない、いわば意味の分からない命令となっていた。


 魔王軍との戦いが始まり、実際に使う可能性が出てきたため、主に参謀本部企画部主体で内容のブラッシュアップが行われた。

 まず対象者の仕分けが行われた。総動員という名前だが、老人、子供を動員しても意味がないので年齢制限の設定が行われた。

 子供については満15歳未満は一律対象外で異論がなかったのだが、何歳以上を兵役免除とするかで意見がまとまらなかった。

 最多意見は40歳以上免除だったが、45歳とする案や、35歳とする案があり、戦況によって必要兵力が変化していたため、全く意見がまとまらなかった。


 少数意見ではあったが、女性を動員対象から外すという意見もあった。

 女性はその特性上、最前線部隊への投入は基本的に考慮されていなかった。後方支援を主とするが、その後方支援の具体的内容がまとまらなかった。そのうえ、女性の後方支援投入はすでに行われており、わざわざ総動員令を発出するまでもなかった。


 ほかにも、特定職種、例えば教師、治安維持部隊などの兵役免除案もあったが、そこまで細かい検討をしてしまうと、命令が複雑になりすぎてしまい実効可能性が低下する恐れがあった。


 こうして議論が続いていく中で、南部王国が消失し南部王国軍が北部王国軍に合流した。大規模な増援を得た形になり、動員の必要性が薄れてしまった。


 それどころか、軍務に明るくない民間人を軍に投入しても混乱が発生するだけという意見が大勢となり、今回も見送りとなった。



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北部王国軍参謀本部会議室



 「検討結果は今回も見送りです」

 「前線部隊から兵力の不足について話が来ているのは承知しているが、動員令が必要とまでは思わないので、了解した。ちなみに現実的に発動は可能なのか?」

 「おそらく意味がありません。検討すればするほど現状との違いが分かりませんし、動員計画の一部は既に実行されています。わざわざ総動員令という国王発布を出すこと自体が国内の混乱を招く恐れがありますので、おすすめはしません」

 「わかった。検討したということは陛下軍事顧問閣下には伝える。陛下に伝えるかどうかは軍事顧問閣下に一任しようと思っている」

 「小官もそれでいいと思います」

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