北部王国への道1 「いち南部王国民視点」
※南部王国側視点で3話ほど投稿します。今回は市民視点
魔王軍との戦いが始まるまでは、雑貨屋として首都の一角でお店を経営しつつ、自警団の一員として街の警邏も担当していた。魔王軍という言葉や、魔物という聞きなれない単語が街中で聞かれるようになったあたりまでは、特に大きな変化もなく、普段通りの日常を過ごせていた。
変化は少しずつやってきた。
最初は、共和国からの物資が届かなくなった。
次に王国内東側で取れていた物資の供給が不安定化し、最初的には届かなくなった。
最後にはすべての物資が届かなくなり、そして首都が魔王軍なるものに包囲されたことを知った。
自警団は軍隊ではない。あくまて街の治安を守る組織。しかも自主的な組織のため、騎士団みたいな法的拘束力も持たない。本当にただのいわば住民の集まりである。
そのため、戦闘に参加するかなどの決定もできなかった。だが、物資の供給が途絶し、食料に困るという現実がすぐそこまで迫っていたため、何かをしなければならないという思いだけは一致していた。
王国政府からは北部王国への脱出の指示が首都の全住民に対しかなり早い段階から出ていた。ただ、強制力はなく、脱出できる者はするようにという程度だったため、最初は主に南部王国以外から来ていた人々、ついで南部王国民でも首都に住んでいなかったものが、首都から脱出していった。
家族の間や、お店の従業員の間でもどうすべきか意見は割れていた。
現実味を急激に帯びたのは、ある日、近くの井戸から魔物が突然現れたときだった。このときになって、すでに地下水道が魔王軍の支配下になってしまっていて、井戸などを通して魔物が首都のいたるところに出没していることを知らされた。
この頃には、首都は持たないという考えが、住民の間でも薄々広がり始めていた。
問題は避難のタイミングや方法だった。すでに包囲下ではあったが、軍主導での脱出作戦は実施されており、女、子供は特に優先して避難させる方針が固まった。
このとき、私が考えていたのは避難後の生活だった。雑貨屋を営んでいたので、各国の商人やいわゆる運び屋とは雑談程度だが、いろいろな話を聞いてきた。こういう場面で別々に避難を行うと、その後終生会えずに一家離散ということも珍しくないということも。
そのため、私は私の家族はもとより、従業員、その家族まで避難できるものは全員同時に避難しようと提案した。
みな、似たような考え方を持っていたようで、賛同が得られたので、ただちに避難準備を開始した。
実際の避難は、首都内の全く関係のない街区の住民たちとともに王国軍部隊の護衛を受けて、西門から夜の闇に乗じて行われた。魔物がいない場所を選びつつ、いる場所では王国軍や、いままで遠目にしか見たことがなかった竜騎兵部隊による援護を受けつつ、ひたすらに北上した。
脱出を開始して4日目。北部王国軍との合流を果たし、ここまで護衛してくれた南部王国の兵士は首都に戻っていった。後で知らされたが、首都陥落の2日前だった。
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