day57 (岬防衛部隊の近況)
作者が存在を忘れるくらいなので、当事者も存在を忘れているでしょう
南部王国首都の戦いがクライマックスを迎えつつある頃、各岬防衛部隊の戦いも徐々に厳しさを増しつつあった。
魔王軍が南部王国首都へ殺到しようとしていた時期は、岬防衛部隊への圧力が相対的に減少し、防衛部隊が一息付ける場面もあったが、首都が完全に包囲され魔王軍のいわば余剰部隊が発生するようになると、それらが岬に押し寄せ毎日激戦が繰り広げられるようになった。
北部王国軍参謀本部は、戦争初期は東部戦線の戦力調整に忙殺され、それが終わる前に南部方面軍司令部設置や、南部方面軍司令官人事、戦力増強などの業務が今度は発生してしまい、岬部隊のことはほぼ完全に失念していた。
どれくらい失念していたかというと、南部方面軍新設に伴い北部王国軍編制表を書き換えたのだが、その際に岬防衛部隊の記述を完全に忘れていたのである。
海上部隊による細々とした輸送で岬を持ちこたえさせていたのだが、参謀本部はそうした命令を出したこと自体ほぼ完全に忘れていた。
岬防衛部隊の方も、補給物資の受領、わずかな兵士の増援、負傷者の後送などに気を取られており、東部戦線や、南部戦線、南部王国がどうなっているのかという情報は全く入手しておらず、そうしたことを考える余裕すらなかった。自分たちのことで手一杯だったのである。
各岬ともしばらくは持ちこたえられるという判断を独自に下していたが、それを参謀本部に報告することも失念しており、北部王国軍参謀本部が岬の情勢について思いを巡らせることができなかった原因の一つでもあるが、参謀本部の怠慢としか言いようがなかった。
このようなありさまなので、各岬をどのようにするのか、各部隊をどうするのか、補給を継続するのか。つまり各岬で戦闘を継続させるのか、撤退させるのかという本来北部王国軍参謀本部が決定すべき高度な判断を全くしていなかったし、検討自体していなかった。
南部方面軍司令部設置の際は、参謀本部内で異論があって意見をまとめきれなかったという曲がりなりにも議論の結果があったが、岬防衛部隊についてはそれすらなく、当初命令として最初に発出していた岬防衛命令というべき戦闘継続命令がそのまま有効な状態でここまで来てしまった。
この岬防衛部隊のことを北部王国軍参謀本部が突然思い出すのは、南部王国軍各部隊を北部王国軍内でどのように組織化するかという計画立案を作戦部が始めようとして、過去の編制表を見たときに、岬防衛部隊の記述が消えていることに気づき、情報部経由で各岬防衛部隊が善戦しているといういい意味で衝撃的な報告が上がったためである。
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