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勇者がいない人類の魔王軍との戦いの記録(北部王国軍参謀本部戦記)  作者: ゆーや
南部王国の陥落、南部王国軍の撤退そして
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南部王国側の事情

北部王国軍が東部戦線で激戦を繰り広げていた時、南部王国で何が起きていたのかを書いています。

 

 そもそも南部王国に明確な防衛計画というものはなかった。遅滞戦術を展開できる地形はなく、戦力比が圧倒的な魔王軍相手に遊撃をしかけたところで意味もない。いくつかの城塞都市で籠城戦をするにも、それは救援が来るという前提があっての話である。救援が期待できないのに籠城などただの自殺行為でしかない。


 さりとて、有効な手立てがあるでもなく、という堂々巡りの議論を繰り広げている間に首都に肉薄されてしまったというのが南部王国側の基本的な戦争推移だった。結果、首都の市民の計画的な避難ができなかった。逆に首都以外の街は魔王軍に蹂躙される前にさっさと脱出しており、首都に避難してきたものや、北部王国領に脱出したものも少なくない。



 南部王国は首都が包囲されてから、城内に避難させた市民や王国軍主力の扱いをずっと協議していた。北部王国軍が組織的に魔王軍の攻勢を撃退していることは情報として入手しており、市民の避難先として申し分なかった。ただ、首都の包囲網がほぼ完成してしまうと、市民だけを脱出させるという作戦が成り立たなくなった。

 比較的魔王軍の軍勢が手薄な西門を使った脱出を細々と進めていたが、いつ終わるとも知れないほど規模の小さなものだった。


 そんなとき、北部王国軍から首都との連絡線構築の話がやってきた。南部王国全軍は首都防衛にあたっており、連絡線確保のための部隊をねん出できないことは事実だったが、連絡線をうまく形成できれば少なくとも市民に避難は実施できる。


 そこから女王も交えた軍議が連日行われ激論が交わされた。女王の基本的な考え方は、市民だけでなく南部王国軍主力も一緒に脱出させ、人類軍の反撃作戦主力として将来南部王国を再興できるように温存させることだった。首都の放棄は早々に決めており、その際自らは首都と運命を共にすることもかなり早い段階で宣言していた。当然、南部王国軍指導部が了承するはずもなく、軍議は一向に話が進まない状況だった。


 北部王国軍が、首都防衛部隊である第1軍団全力を出撃させ連絡線確保にあたるという連絡がもたらされたのはまさにそんなときだった。あの北部王国軍をしてほぼ総動員のような作戦を遂行しようとしているのに、南部王国側だけ首都に引きこもって戦い続けるわけにはいかない。南部王国軍指導部でもそのような考え方が多数を占めるに至った。

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