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vol.008_指摘

会社(ファインダーシステム社)に戻るや、オレと真木さんは早速、追加機能の開発にかかる金を見積もるために情報を集めることにした。


オレたちがいる部署は、主にシステムの安定運用を目的とした基盤管理部。


対して、追加機能の開発を行うのはアプリケーション開発部というところらしい。


本来であれば、開発の見積もりはアプリケーション開発部で行うことだが、この会社では開発した後の運用の方がお金の比重が大きいという理由から、基盤管理部が主体となって見積もる風習となっている。


とりあえず、真木さんが過去の類似見積もりを参考にして、今回版の見積もりをドラフトしてくれた。


この真木さんという子は、自分では自信無さそうにしているが、オレから見ると非常に優秀だと思うんだけどな。きっと、何か仕事を通して成功すれば、自信もつくだろうに。


「真木さん、見積もりのドラフトありがとう。さて、あとはアプリケーション開発部とやらの人間をつかまえて、今回の見積もりを反映してもらおう。」


真木さんがクスクスと笑っている。。。あれ、オレなんか変なこと言ったかな?


芸満ゲイマン先輩、見積もり資料を印刷して手にもって行かなくても、メールがあるじゃないですかぁ。わたしの方から開発部の担当者に依頼しておきますね。」


ほう・・・メールという通信手段があるのか。なんでも、パソコンから手紙を送ってくれる機能とのこと・・・


こちらの世界の技術にはつくづく驚かされる。


というか、真木さん、めちゃめちゃ仕事早いからオレいらないんじゃね?


・・・・・・・・


・・・・・・・・


・・・・・・・・


小一時間ほどすると、アプリケーション開発部から見積もりが返ってきた。


芸満ゲイマン先輩、開発部の見積もりですが・・・ちょっと高すぎる気がします。」


「へぇ、別に佐伯の会社から金をぶんどれるから良いんじゃないかな(笑)」


オレが笑いながら返答すると、真木さんは真面目な顔でオレに言い返してきた。


芸満ゲイマン先輩、それはダメですよ!ちゃんと正しく見積もられたお金じゃないと、わたしたちはボッタくり業者になってしまいます。先輩の視点でも見てもらえませんか?」


うーん、オレに見ろと言われてもなぁ・・・書いている用語も分からないし、金額の妥当性なんて皆目検討つかないぜ。


・・・ん?これも、パソコンの中の話だからひょっとして・・・


オレは試しに、モンスターの特性や弱点を分析する魔法を唱えた。


「アナライズっ!」


「あ、アナライズ??」


真木さんが不思議そうな顔で、こちらを見る。オレは気にせず、アナライズをかけた見積もり結果を見る。


ビンゴ!


パソコンの画面上には、アナライズによって正しくない見積もり金額が赤文字となり、金額の下に本来正しい金額とその根拠が浮かび上がった。


「真木さん、オレの考えを見積もり結果に赤文字で反映させておいたよ。」


「えっ!?い、いつの間に・・・!?と、とりあえず確認しますね。」


真木さんはビックリしながらも、アナライズされた見積もり結果を確認する。


「そ、そうです!私も芸満ゲイマン先輩の指摘が正しいと思います。それにしても、一瞬で見積もりが正しくない箇所を見抜くだけでなく、正しい見積もりの根拠を論理的に分かりやすく書けるなんて・・・すごすぎます!!」


いや、オレはアナライズを唱えただけなんだけどね。この赤文字がなんで正しいのかは、オレには分かりましぇん。


「わたし、早速この指摘事項をアプリケーション開発部に返信しますね。」


「うん、よろしく!それと・・・」


オレは真木さんに話を続ける。


「今回の開発部が出してきた見積もりにオレが指摘できたのは、真木さんがちゃんと確認してくれたからだ。オレだけだと、ちゃんと確認せずに鵜呑みにしてしまっていたかもしれない。助かったよ。」


真木さんが恥ずかしそうにしながらも、笑顔で答える。


「そんな・・・ありがとうございます!わたし社会人になって、あまり感謝されたことなかったので・・・芸満ゲイマン先輩にそういう風に言ってもらえると嬉しいです。」


なんで、この子はこんなに優秀で一生懸命なのに、誰も褒めてあげないんだ?こういう子が将来を担っていくはずなのに。


開発部からは、指摘事項を素直に受け止め見直しの入った見積もりが返ってきた。オレはこっそりアナライズで確認したが、特に問題なさそうだ。


「よし、あとはオレたちの分の見積もりを追加して、金内部長にチェックしてもらおう!そして、佐伯のオッサンから、しっかり金もらおうぜ!」


・・・・・・


気が付くと、すっかり日が暮れて夜になっていた。金内部長も帰ってしまったようだし、続きは明日かな。


「今日のところは、これくらいにして帰ろう。」


オレは真木さんに話しかける。真木さんも、そうですねと頷き、帰る準備をする。


そうだ、オレはこっちの世界の生活をまだ完全に分かっていない。会社に来るときに飯屋がたくさんあったが、支払いはどうするんだ?とか店の入り方は?とか色々聞いておくことがある。


「真木さん、もしよかったら飯でも行かない?まだ、記憶が曖昧なところがあるんで色々話聞きたいんだけど。」


真木さんはクスっと笑い「いいですよ!」と答えてくれた。


よっしゃ、色々聞いて、こちらの世界のことを把握していくぞ。


こうしてオレは真木さんと飯を食いがてら、こちらの世界の常識を教えてもらうべく会社をあとにした。


vol9.へ続く

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

ブクマと★の評価をしていただけると今後の励みとなります!


ぜひぜひ、次作もご期待ください!!

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