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vol.007_任命

「佐伯さん、このメールはどういうことでしょう?はじめからシステムのバグに感づいておられながら、それを放置し、障害が起きたことをイイことに弊社に値引きさせることを始めから想定されていた・・・という風に見えますが・・・?」


金内部長は言葉を選びつつも、かなりドスの効いた声で佐伯に迫っている。


「そ・・・その・・・これはだね・・・、何かの手違いかと思うが、一応見なかったことにしてもらえるかね。うちとしても、今回の障害に迅速に対応いただいた御社に感謝しているし、これからも引き続きお願いしたいと考えているので・・・」


佐伯が苦し紛れに言う。


「値引きの件ですが、うちとしても今回のような障害が起きないように、しっかりとコストを確保して次の機能を開発したいと考えています。よろしいですか?」


金内部長がここぞとばかりに、値引きの話を潰しにかかっている。やるなこの人。


「も、もちろんだとも。先ほどの値引きの話は、あくまで弊社側の支出を抑えたいという気持ちを言ったまで。ユーザに迷惑をかけないためにも、しっかりとコストを確保して進めてもらえるとありがたい。」


よしっ!佐伯の話し方はイラっとくるが、ひとまず値引きの話は封じることができた。


「佐伯さん、ありがとうございます。それでは、追って次の開発コストについては提示しますので、よろしくお願いしますね。」


金内部長は軽く会釈すると、オレたちを引き連れて部屋を後にした。


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・


会社に戻りながら金内部長は、オレに感謝の気持ちを伝えてきた。


「いやぁ、芸満ゲイマン、お前なかなか言うなー!感謝するよ。最初はドキっとしたけどスカッとしたぜ。」


「しかも、なぜか佐伯の野郎が内部メールを俺に誤送してきたおかげで、値引きの話も封じれたしラッキーだったな。」


オレが佐伯のパソコンに唱えた「パニックス」は、敵を混乱させる呪文なのだが、この世界ではパソコンなどの誤動作を誘発するようだ。


とにもかくにも、あのムカつく佐伯って男に一泡吹かせてやらたので、オレもスカッとした気持ちだ。


それにしても・・・このシステムエンジニアという仕事は大変だ。


システムを作ったり、安定稼働させたり、関係者と駆け引きをやったりと。よっぽど魔王と戦っていた方がラクかもしれんな。


そんなことを考えていると、真木さんが金内部長に話を切り出した。


「金内部長、さっきの追加機能の見積もり・・・どうしましょうか?今、うちの会社のみなさんは別システムの開発で駆り出されているので、どなたが対応するのかなって・・・」


金内部長が「う~ん・・・」と考えること数秒、オレの顔を見てニヤリと笑った。


芸満ゲイマン、任せた!お前が追加機能の開発チームを作り、見積もりをリードしてくれ!」


オ、オレがリーダーだと!!!????


オレは今まで勇者に指示されるか、自分がやるべきことだけ行ってきた人間だぞ。他人をまとめたり、リードするのは本職じゃない!


オレは渋い顔をして、金内部長を見つめる。それを察してか、金内部長が言葉を続ける。


「お前も中堅社員として、これまで会社で頑張ってきた。正直、お前はリーダータイプではないと思っていたが、さっきの佐伯のクレームにも動じずに、全面に立ったお前はまさしくリーダーだ。」


「しっかり、見積もり作って、佐伯にぶつけてやれ!」


なるほど、さっきのオレの行動で任命されちゃったというわけか・・・とほほ、余計なことしなきゃよかったよ。


だが、こうなったら仕方ない。これまで値引きばかりさせてきた佐伯から、しっかり金をぶんどってやろうじゃないか。


「金内部長、分かりました。真木さんには僕のチームに入ってもらうんで、追加で人が欲しい時は相談させてください。」


真木さんは、頑張りますっと拳をにぎってオレに意気込みを伝えてきた。


金内部長も、笑顔でオレの肩をポンポンと叩く。


「よっしゃ、いい返事だ。何かあったらサポートするからよろしく頼むぜ!」


かくして、オレはパーティの一メンバーである賢者という立場から転生し、なぜかシステムエンジニアとして追加機能の開発見積もりをリードすることになった。


・・・で、何をすればいいんだ?


vol8.へ続く

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

ブクマと★の評価をしていただけると今後の励みとなります!


ぜひぜひ、次作もご期待ください!!


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