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vol.003_整理

ドタバタしていた会社にも落ち着きが戻ってきたようだ。


初老のオッサンの指揮のもと、オレがエスティナで直したシステムの障害経緯や原因の整理を配下と思われるメンバーに指示している。


なるほど、会社というのはオレたち冒険パーティー以上に組織化されて、指揮系統が整っている。


俺がどうやってシステムを直したかは、後輩らしき女(真木という名前らしい)が、アプリ?のログとやらを見て整理してくれたみたいだ。


まぁ、俺はエスティナを唱えたとしか言いようがないからね。


真木さんの仕事もひと段落したみたいで、オレが鼻くそをほじりながら茶を飲んでいたら話しかけてきた。


芸満ゲイマン先輩、先輩が修正したログを整理して、システム復旧までの対応手順をまとめたので確認していただけますか?それにしても、これだけの修正をあっという間にやってのけるなんて…先輩って、インフラの人かと思ってましたが、アプリにも精通しているんですね…わたし見直しちゃいました。」


インフラ?水道や電気のことを言っているのだろうか?アプリって何だ?ま、ここはひとまず適当に答えておくか。


「整理ありがとう。よくまとまっているよ。まぁ、メインスキルはインフラだけど、こういう時に困るだろ?アプリも少しはかじっておかなきゃね。」


真木さんは、また尊敬の目でオレを見る。そして、うつむき加減に、ため息をつく。


「ほんと、芸満ゲイマン先輩の言う通りだなって思います。私は入社してからこのアプリしか見てなくって。インフラのことも詳しくないし、他のシステムのことも分からない…今回のトラブルも全然役に立ってなくて、自分がイヤになります…」


おいおい、なに泣きべそかいちゃってんだよ。


まぁ、そもそも、エスティナも知らないんだもんな。勉強不足と言われても仕方ないが、自分で勉強不足なことを認識できているだけ、マシというものだろうか。


そういえば、前のパーティで一緒だった魔法使いのオッサンなんてヒドイものだった。


自分が魔法使いから上級職を目指さないのは、「ワシは今のモンスター討伐しかやらないから、上級職を目指すなんて時間のムダ」とか言ってたな。


だから、次の街に進む時に別れた。「ここから先は、ワシの担当範囲外」だと。


・・・おっと、昔を思い出してばかりいないで、真木さんの話に相づちを打っておくか。


「真木さんは、まだこの仕事して経験浅いでしょ。今こうやって状況を整理してくれているのはすごいと思うし、オレは本当に助かった。自分でスキルが足りないと認識できているなら、これから少しずつ身につけていけばよいんじゃないかな。」


真木は、うつむきながらも、コクンとうなづいた。


さて、そろそろ、オレも状況整理しないとだ。


ついさっきまで、オレは勇者一行と魔王討伐に挑んでいた。そして、死んだ。


死んだら、オレは教会に送られて生き返る・・・予定だったが、なぜかこの会社で目を覚ました。


「真木・・・さん、オレからも一つ聞いていいかな?」


「はい、なんでも聞いてください!」


「ここって・・・どこかな・・・?」


真木が心配そうにオレを見る。


芸満ゲイマン先輩・・・本当に疲れているんですね。大丈夫ですか?ここは、株式会社ファインダーシステムの本社オフィスですよ。わたしたち、基盤管理部のシステムエンジニアは昨日起きたオンラインゲームの障害対応で、徹夜で対応していたじゃないですか。」


なんだと・・・!?


にわかに信じられないが、オレはまったく別の人間として生き返ってしまったということか。。。魔王に呪いでもかけられたのだろうか・・・


そして、おそらく、魔法とは無縁の人間が集まる世界に飛ばされてしまったのだろう。


この場所にいるオレ以外の人間が魔法を知らないのも、そういうことだと推測できる。


自分自身を納得させるため、試しに真木さんに「魔法」の存在を知っているか聞いてみるか。


「ちなみに、真木さんたちは魔ほ・・・ぉおがっ・・・!!!!!????」


な・・・なんだ、この激痛は!!!!!頭がねじ切れそうだっ!!!!!!!!


頭を両手で抱えてうつむくオレを心配して、真木さんが慌てている。


芸満ゲイマン先輩!!大丈夫ですか・・・っ!?あとは私に任せてもらって、一回自宅に帰ってください!」


「おいおい、大丈夫かぁ?」


心配そうな顔で、初老のオッサンがやってくる。


「金内部長、芸満ゲイマン先輩がかなり辛そうにしているので、一度帰宅してもらった方がよいかと思います。」


「そうだな、芸満ゲイマンのおかげで障害から復旧できたわけだし、ぱあっと飲みに誘おうかと思ったけど、今日はやめとくか!芸満ゲイマン、一徹おつかれ!今日は家でゆっくり休めな!わははははは!」


くそっ、なんなんだこの痛みは・・・家に帰れと言われても、こっちの世界の自宅なんてどこにあるのか分からんぞ。


「心配なので、わたしが芸満ゲイマン先輩の自宅まで送っていきます。」


真木さんが心配そうにオレを見ながら初老のオッサン(金内部長と呼ばれた)と話している。


「そうだな、真木ももう帰っていいぞ。あとはこっちでやっておく。」


た、助かった。とりあえず、一度家に帰って休もう。HP・MP・ステータス異常もこれで元通りになるはずだ。


ところで、真木さんはオレの家・・・知ってるのか?


vol4.へ続く

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

ブクマと★の評価をしていただけると今後の励みとなります!


ぜひぜひ、次作もご期待ください!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] エスティナ! こんなスキルがほしい…! そして、お客に障害があったことを忘れさせるスキルもあれば完璧…! [一言] Twitterから参りました。私もSEなので、内容が気になって拝読いたし…
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