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vol.018_御礼

目を覚ましたオレはゆっくりと回りを見渡した。


・・・変わらず、芸満ゲイマンの部屋。転生した世界のまま・・・か。


真木さんと飲んだ日の夜は、眠った後に目を覚ますと元の世界に戻っていたが、あれは何だったのだろうか?


いや、考えるのはよそう。いくら考えても答えなんて見つかりっこないのだから。


オレはいつもの白いワイシャツに袖を通し、昨日の帰りにコンビニで買ったパンをかじる。


さて、ファインダーシステム社に行くか。


なんやかんやで、オレはこちらの世界に馴染みつつあった。


相変わらず、こちらの世界の常識に戸惑うことはあるが、適応できているように思える。


ファインダーシステム社に着き、自席に歩いていくと、隣の席には真木さんが既に出社していた。


なにやら、パソコンに向かって一生懸命カタカタとやっている。また、障害でも起きたのかな?


「おはよう、真木さん。朝からすごい頑張ってるみたいだけど、何か問題でも起きたかい?」


真木さんは、我に返ったようにハッとこちらを見ると、笑顔で挨拶してくれた。


芸満ゲイマン先輩、おはようございます!昨日お話したオンラインゲームが動いているこのシステムを、クラウドに移行する件で、私なりに提案資料を作っておこうと思って朝早くから会社来ちゃいました。あとで、一度見てもらえますか?」


おぉ!さすが、真木さん!仕事が早い!


まぁ・・・ぶっちゃけ資料を見たところで、システムの知識皆無のオレが役に立てるとは思えないが、とりあえず見てみるか。


それにしても、システムエンジニアの仕事は本当に大変だ。


こういう提案書の作成もやらなきゃいけないんだもんな。


逆に言えば、色々やってみたいという人には向いている職業なのかもしれない。


芸満ゲイマン先輩、提案資料一通りできました。鈴木グローバルテクノロジーシステムの里中部長に説明できる内容になっているか見ていただけますか・・・?」


真木さんが恐る恐る、作成した提案資料をオレにメールで送付してきた。


「もちろん、ちょっと見せてもらうね。」


オレはそう言いながら、真木さんの作った資料を見てみる。


ふむふむ・・・


ほむほむ・・・


ふ、ふがっ・・


わ、分からん・・・!


オンプレからクラウドに移行するメリットや移行時の懸念点、スケジュール感などが書かれているが、これが正しいのか否かオレが見ても全く分からん・・・!


そうだ、この前、アプリケーション開発部の見積もりが正しいかどうかを確認する時に使った魔法を使ってみるか!


オレはモンスターの特性や弱点を分析する魔法を唱えた。


「アナライズっ!」


「あ、アナライズ??」


真木さんが不思議そうな顔で、こちらを見る。


以前も同じような反応してたな、とオレは軽く笑みを浮かべつつ、アナライズをかけた結果を見る。


ビンゴ!


パソコンの画面上には、アナライズによって修正や追加すべき内容が赤文字となり、資料に書き込まれていた。


「真木さん、すごく良くできていると思うよ。あとはオレの方で気になった箇所や追加した方がいいかなと思うところを記載しておいたから、時間があるときに見てもらってよいかな?」


オレはそれっぽく真木さんにアナライズされた資料を見せる。


真木さんは、ビックリしながら急いで資料を確認する。


「えっ・・・!?もう資料見て更新までしてもらえたんですか!?・・・これは・・・なるほど・・・確かに追加いただいた箇所は必要ですね!芸満ゲイマン先輩の追加していただいたページは、とても説得力があるし、それに・・・分かりやすいです!」


「それならよかった。真木さんの作ってくれている資料が良く出来ているから、オレも追記しやすかったんだよ。まぁ、うちの会社の立場で書いてしまっている箇所もあるから、里中部長の意見も聞きながら、話を詰めて行けるとよいね。」


オレは、度々それっぽいことを真木さんに伝える。


芸満ゲイマン先輩・・・あの・・・」


真木さんが何かモジモジしながら、オレに何かを言いたそうにしている。


なんだ?小便でも催したのだろうか?


芸満ゲイマン先輩って、前は寡黙で淡々と仕事をされている感じでしたが、最近すごく話してくれるし、助けてくれるので本当に仕事するのが楽しくなりました!ありがとうございます!」


おぉ・・・!なんかオレがやっていることはプラスの方向に働いているみたいだ。


そういえば、真木さんもこの前一緒に飲みに行った時から、よく話してくれるようになった気がする。


「さて、あとはこの資料を金内部長にも見せて、問題なかったら里中部長のところに行こう。」


「はい!私、金内部長に資料の説明してきますね。あと、里中部長のアポイントも取れたら芸満ゲイマン先輩にも日程をお伝えします!」


「OK!よろしく!」


「あっ、・・・そうだ・・・・えっと・・・」


金内部長の座っているデスクに行こうとした真木さんは、何かを思い出したかのようにオレの方を振り返る。


「・・・芸満ゲイマン先輩、これよかったら食べてください。」


そう言いながら、真木さんは彼女のデスクから可愛くラッピングされた小さな箱を手渡してきた。


「これは・・・?」


オレが受け取りながら訪ねると、真木さんは少し顔を赤くしてオドオドしながら答える。


「えと・・・昨日の夜に焼いたクッキーなんです。いつも先輩にはお世話になりっぱなしなので、何かお礼がしたくって・・・あの、美味しくなかったら捨ててくださいね!」


そう言いながら彼女は金内部長の方に走っていった。


・・・・・そこまで世話したつもりもないのだが、まぁ貰えるものは頂いておこう。


さて、真木さんが作り、オレが「アナライズ」で加筆修正した資料は、金内部長にも好評だったようで、里中部長へのプレゼンにGOサインが出た。


「真木、芸満ゲイマン、なかなか良いプレゼン資料が出来たな!里中部長に電話でアポどりしたところ、早速、明日の朝一で説明を聞きたいとのことだ。よろしく頼むぜ!」


金内部長がオレたちが座っている席にやってきて激励してくれた。


まぁ、オレはアナライズを唱えただけなんだけど。


・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


さて、もう夕方だし、そろそろ帰るか。明日は朝一番で鈴木グローバルテクノロジーシステム社に集合か。


「じゃあ、真木さんオレはそろそろ帰るけど、一緒に飯でもどう?」


「ぜひ!ご一緒させてください!」


オレは今日も真木さんと夕飯を食べにいった。今度は、オレが見つけておいたお好み焼き屋なる場所に案内する。


真木さんは、提案書も無事に出来上がったからか、ホッとしたみたいで、よく食べ、よく飲み、よく話した。


そうそう、たまにはこうやって息抜きもしなきゃだよね。


「ふぁー・・・楽しかったです!昨日、あんまり寝てなかったので、今日はぐっすり眠れそうです!」


真木さんは酔っぱらっているのか、饒舌に話している。


「昨日はあんまり寝てないんだ?仕事のことでも考えて眠れなかったとか?」


「はい・・・それもありますけど・・・先輩に渡すクッキーを作ってたらいつの間にか朝になっちゃって・・・」


今日オレに渡してきた箱の中身のことか。


なぜ、そこまでしてオレにクッキーを渡したいのか理解できんが、ここは素直に喜んでおくべきか。


「あははは!オレなんかのためにありがとう。今日帰ったら美味しくいただくよ!」


「は、はい!ぜひ食べてみてくださいね!」


そんなわけで、オレは真木さんを駅まで送り、自宅に帰ってきた。


ふぁぁ・・・オレも少し飲みすぎたようで猛烈に眠たい。


オレはベッドに横になり、真木さんが作ってくれたクッキーを食べようと一つ摘まんだところで寝落ちしてしまった。


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・


目を覚ますと、そこは教会だった。


vol19.へ続く

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

ブクマと★の評価をしていただけると今後の励みとなります!


ぜひぜひ、次作もご期待ください!!

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