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vol.017_蘇生

「APサーバのCPU、メモリ使用率の上昇続いてます!81、82、83%・・・!」


くそっ、五色乃衣ペンタコーディングでサーバの処理能力は上がったはずだが、それを上回る勢いでユーザがオンラインゲームに次々と入ってきているらしい。


真木さんがスマホの画面を見て何かを調べ、慌ててオレに画面を見せてくる。


芸満ゲイマン先輩、今日は私たちが管理しているオンラインゲームのキャンペーンを宣伝していたみたいです・・・!それで、いつもより多くのユーザがログインしてきたことで、サーバの負荷がいつも以上に上がってしまっているんだと思います・・・!」


なにぃ!?そんなこと、なんでオレたちは知らされていないんだ!?


キャンペーンを打つことを事前に知っていれば、こんなに慌てずに済むはずなのに・・・


「真木さん、キャンペーンのことはオレたちには知らされていなかったんだよね?」


「はい、本来であればキャンペーン企画は鈴木グローバルテクノロジーシステムから連携されるはずなのですが、私たちには伝わってきていませんね・・・おそらく佐伯課長の報復かと・・・」


佐伯の野郎・・・!オレが不正を暴いたのを完全に逆恨みしているな。


キャンペーン企画中にサーバダウンさせ、ユーザの不満を続出させ、うちの会社の信用を落とすことが狙いか!?


佐伯のシナリオ通りにさせるわけにはいかない・・・


だが、どうする?


このサーバに対してオレが施せる魔法はもう無いぞ・・・


「こんな時に、もう一台のAPサーバがHW障害でダウンしなければ、何とか負荷に耐えられたかもしれないのに・・・」


真木さんは、そう呟きながらHW障害でダウンしたサーバの復旧目途を技術員に電話して確認している。


「最低でも2時間はかかる・・・そうですか・・・できるだけ急いでいただきたいのでお願いします・・・」


なるほど、真木さんの話から活路が見えたぞ!


要するに、HW障害でダウンしたサーバを復活させれば、今1台で耐えているサーバの負荷を分散することで手助けができるということだな。


俺の残りMPも考慮すると、一発勝負のかけになるが、やってみるしかない・・・!


「真木さん!!」


オレは真木さんが買ってきてくれたお茶を一気飲みし、真木さんの方をキッと見つめる。


「キャッ!げ、芸満ゲイマン先輩、またどうしたんですか・・・?」


「真木さん、何度もゴメン。オレめちゃめちゃ喉が乾いてて、もう一本同じもの買ってきてくれないか?」


オレは小銭を真木さんの白くて小さな手にギュッと握らせる。


真木さんは顔を少し赤めながら、分かりましたと返事をし、走っていった。


ふぅ・・・さて、やりますか。HW障害になったサーバ君よ、待ってろよ。


オレは目を閉じて、ゆっくりと詠唱を始めた。


「地に倒れし英霊よ。汝の身、未だ天に至ること無し。其の役割を全うすべく再び蘇らん。我が魂を喰らいて闘い給え!!!」


蘇生リバイブ!!」


・・・・・・・


・・・・・・・


・・・・・・・


くっ・・・ダメか!?オレが諦めかけたその時だった。


「ダ、ダウンしていたAPサーバが復活しました!!負荷が分散され、ユーザ数の増大にも耐えられそうです!」


オペレータが大声でダウンしていたサーバが復活したことを知らせる。よし!!なんとか復活してくれたか。


お茶を買いに行っていた真木さんも、ペットボトルを持って戻り、一報を聞いて驚いている。


「えっ・・・!?故障してダウンしていたサーバが動き出したんですか・・・?一体なぜ・・・?」


オレは適当に答える。


「オレもダメ元で、サーバをリモート起動してみたんだよ。そしたら運良く動き出してくれたみたいだ。ただ、元々障害でダウンしていたサーバなので、またいつ故障するか・・・なんとかこのキャンペーン中の時間帯を乗り切ってくれると良いのだが。」


「そ、そうだったんですね。故障したサーバが復活するなんて聞いたことなかったから、私びっくりしました・・・」


そう、真木さんの言うとおり、本来は故障したままだったんだ。


おそらく、ダウンしていたサーバが復活したのは、今までの負荷でダメージを受けていた分だけ復活できたはず。


オレが使った蘇生リバイブは、寿命が尽きた者を復活させることはできないからな。


・・・・・・・


・・・・・・・


・・・・・・・


結局、復活したAPサーバはなんとかキャンペーンによる負荷がかかる時間帯も耐えてくれ、ユーザは普段どおりオンラインゲームを楽しんでくれたようだ。


キャンペーン終了後、蘇生リバイブで復活させたAPサーバは再びダウンし、技術員による修理に回された。


なんとかピンチを耐えてくれたAPサーバに感謝だ。


ひと段落つき、金内部長、真木さん、オレは休憩スペースで一息つくことにした。


「いやぁ、どうなることかと思ったけど、ユーザ影響が出ずに助かったぜ!ゲイマン、お前の機転にまた助けられたなぁ!わはははは!」


金内部長がオレの肩をバンバンと叩いてくる。い、いたい・・・


「今日はすっかり遅くなっちゃいましたし、クラウド化の話はまた週明けにでも会話しましょうか。」


そうだった。今後のシステムの在り方を鈴木グローバルテクノロジーシステム里中部長に提案するために、真木さんと作戦をたてなきゃだったな。


しかし、たしかに、もう遅い時間だし、真木さんの言うとおりにするか。


「そうだね、また週明け作戦をたてよう。」


そう言って、オレは真木さんたちとしばらく談笑し、帰宅した。


ふぅ・・・今日は疲れたな。だが、システムエンジニアっぽく障害対応できたことは良い経験だった。


さて、今朝は二度寝しても元の世界に戻らなかったが、今回はどうだろうか?


MPもすっからかんになったオレは、心地よい疲れの中、眠りについた。


vol18.へ続く

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

ブクマと★の評価をしていただけると今後の励みとなります!


ぜひぜひ、次作もご期待ください!!

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