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vol.016_増強

金内部長の号令でオレたちはホワイトボードの近くに集合する。


金内部長は、オレたちが見ているシステムの物理・論理構成図と呼ばれるものをスラスラとホワイトボードに書き、どこに障害が発生したのかをメンバーから聞いて状況を整理している。


「ふーむ、なるほど。今回のサーバダウンは2台あるAPサーバのうち、1台がダウンしたということだな。ダウンの原因は分かったか?」


金内部長の問いに、配下の担当メンバーが答える。


「はい、ログを見たところ、OSやアプリケーション上は異常を表すメッセージは出ておらず、ハードウェア側からCPUの異常を検知するログが出ています。おそらく、CPU周りのハードウェア障害がサーバダウンの原因かと。」


金内部長がやれやれ・・・と言った表情で口を開く。


「そうかぁ・・・ついにCPUがぶっ壊れてしまったかぁ・・・とりあえず、サーバを設置している現地に技術員を派遣し、故障対応してもらえ。それから、今はAPサーバ1台で頑張っている状況となってしまっているが、負荷が偏ってしまって、CPUやメモリの使用率が上がってないか?」


金内部長の問いに、また別の配下のメンバーがテキパキと答える。


「今は、APサーバ1台でも問題なく処理できています・・・しかし、これからオンラインゲームのピーク時間に突入するので、その時にはゲームの処理が遅くなるなどの問題が出る可能性がありますね・・・」


金内部長は、頭を抱える。


「まずいな・・・これから障害を減らしていこうと里中部長と話した矢先に、ユーザからクレームが来るのは避けなければ・・・」


金内部長は、そう言いながらオレの方を見る・・・な、なんだ・・・?何をオレに期待している・・・?


芸満ゲイマンよ、なんとかユーザのクレームを回避できるような良い手はないか?」


丸投げ質問きたー!


オレがこちらの世界に転生し初日にシステム障害を復旧させてからというもの、何故かオレはファインダーシステム社内で英雄的な扱いを受けていた。


今回のピンチもオレなら何とか出来るんじゃないか・・・的な雰囲気になっているというわけだ。やれやれだなぁ・・・


「善処してみます。私は自席でシステムの状況を確認するので、みなさんは引き続き対応を続けてください。」


何ができるか分からんが、それっぽく金内部長に回答する。


金内部長はオレの肩をパンパンと叩き激励してくれたが、他の社員は「さすがに、この状況を打開する手段はないのでは・・・?」と懐疑的な表情だ。


とりあえず、オレは自席に戻り、真木さんに教えてもらった方法で生き残ったAPサーバにログインする。


・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


うとうと・・・はっ・・・!!


・・・だーかーら、オレがこんなものを見たところで、何も分からないんだってば!


心の中でそう思いながら、画面をジッと凝視していると、真木さんがオレの隣に座り話しかけてきた。


芸満ゲイマン先輩、ちょっとコマンド叩いていいですか?これから少しずつオンラインゲームのユーザが増えてくる時間帯なので、このAPサーバに掛かっている負荷状況をモニタリングしたくて。」


そう言いながら、真木さんはカタカタとコマンドを打ち込んだ。


ふむ・・・CPUとMemoryの値が少しずつ増えていっているな。85.0%、85.3%、86.0%・・・


「真木さん、このCPU値やMemory値が100%になっちゃうと、ユーザに影響が出てくる感じかな?」


「そうですね。芸満ゲイマン先輩の言うとおり、このまま使用率が100%に張り付いてしまうと、サーバの処理が限界になってしまうので、ゲームの動作が重たくなったり、最悪、画面が固まって何もできない事態となってしまいます・・・」


なるほど、要するにだ。オレがやるべきことは、このサーバの能力を上げてやればいいってことか。


賢者の使える魔法には、味方の攻撃力、守備力、素早さ、魔力、魔法防御力を向上させる各魔法があるのだが、正直なところ、このCPUやMemoryの能力を上げるために、どの魔法が効くのか検討もつかない。


しかし早く手を打たなければ、APサーバの処理能力が限界に達してしまうので、アレを使うしかないか・・・


「真木さん」


オレは真木さんを真剣な顔で見つめる。


「げ、芸満ゲイマン先輩・・・どうしたんですか・・・・?」


「申し訳ないのだけど、さっきから喉が渇いちゃって・・・少し試したいことあるから、オレの代わりにお茶買ってきてくれないかい?」


オレは小銭を真木さんに渡す。


「も、もちろんです!すぐ買ってきますね・・・!」


真木さんは顔を真っ赤にして、走っていった。あれ?もしかしてパシらせたの怒ってるかな?・・・まぁいっか。


・・・さて、オレは目を閉じて、ゆっくりと詠唱を始めた。


「我が身に宿りし精霊よ。大いなる光に導かれその姿を現さん。汝が慈悲の力を顕現し、我が行く道に五色の衣を与えんことを・・・」


五色乃衣ペンタコーディング!!」


ぐっ!!!オレは身体から一気に力が抜けていくのを感じる。


この呪文、味方の攻撃力、守備力、素早さ、魔力、魔法防御力をまとめて向上させることができるのだが、呪文の発動に詠唱が必要なのと、それなりにMPを消費するという、なかなかの大物魔法だったりする。


さて・・・サーバの調子はどうだ?


ふむ・・・CPU、メモリの使用率共に90%近くまで上昇していたのが、40%台まで下がったようだ。


芸満ゲイマン先輩!お茶買ってきました!・・・えっ!!サーバのCPUとメモリ使用率が下がっている?」


真木さんがお茶を買って戻ってくると驚きながら、パソコンの画面を何度も凝視する。


まぁ、滅多に使用しない五色乃衣ペンタコーディングを使ったからね。


芸満ゲイマン先輩、なんでだか分からないですが・・・ひとまず乗り切れそうですね。」


真木さんも安心しているようだ。ふぅ・・・ユーザ影響が出る前になんとか間に合ってよかったぜ。


オレも一息つこうと真木さんが買ってきてくれたお茶を飲もうとした時だった。


「APサーバのCPU、メモリ使用率が急上昇!80%を超えました!」


オペレータが慌ててAPサーバが再び危うい状況になっていることを大声で叫んでいる。


「なんだとっ!?ば、馬鹿なっ・・・・!?」


オレは飲みかけのペットボトルをデスクにドンっと叩くように置き、思わず席を立っていた。


vol17.へ続く

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

ブクマと★の評価をしていただけると今後の励みとなります!


ぜひぜひ、次作もご期待ください!!

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