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vol.014_里中

ここは・・・システムエンジニア芸満ゲイマンの部屋・・・


オレはゾンビ討伐後に、老婆の即死系魔法を喰らい死んだはず・・・


魔王にやられた時と同じだ。


元の世界で死ぬと、教会送りにならず、別世界にシステムエンジニアとして転生してしまう。


オレは枕元に置いてあるスマートフォンを見る。


今日は、鈴木グローバルテクノロジーシステム社に追加機能の開発費を提示する日だ。


よかった・・・これなら真木さん達に迷惑をかけずに済む。


オレは転生という謎現象に直面しているにもかかわらず、なぜか真っ先に真木さんの心配をしていた。


おそらくだが、元の世界で死ぬとこちらの世界に転生してきてしまうようだ・・・


そして、こちらの世界で就寝すると元の世界(教会)に戻る・・・はず。


試しにオレは二度寝を試みてみた。


ぐぅぐぅ・・・


・・・・・・・


・・・・・・・


・・・・・・・


オレは二度寝から目覚め、ゆっくりと目を開けてみた。


・・・・・・・


が、そこはシステムエンジニア芸満ゲイマンの部屋だった。


あ・・・あれ?オレの仮定は外れてたか・・・


しかも、二度寝してしまったことで、真木さんと約束した集合時間までギリギリ間に合うかという時間になってしまった!


オレは慌てて着替え、カバンを持ち、食パンを口に加えてアパートを飛び出した。


夜に就寝しないと元の世界に戻れない仕様なのか・・・!?


オレは元の世界に戻れない理由を悶々と考えながら、集合場所まで走りに走った。


「はぁはぁ・・・、なんとか間に合った・・・・お、おはよう・・・真木さん。」


「おはようございます。芸満ゲイマン先輩!なんかすごい疲れてますけど、走ってこられたんですか?」


「うん・・・ちょっと寝坊しちゃってね。でも、おかげで良い運動になったよ。ぜぇぜぇ・・・」


真木さんは、朝っぱらからハァハァゼェゼェしているオレを見て笑っている。


ふぅ、本当に間に合ってよかったよ。


昨日、一緒に見積もり作っておいて、当日オレだけ来ませんでしたじゃシャレにならないからね。


オレと真木さんは、鈴木グローバルテクノロジーシステム社の受付で佐伯への取次を頼み、ロビーにあるソファに座って待つ。


ちなみに、金内部長は別件のため、今日はオレと真木さんの2人で見積もりを提示することになっている。


5分ほど待っていると、奥の通路から佐伯がやってきた。相変わらず、不機嫌そうな顔をしてやがる。


「こちらへ。」


佐伯はそっけなく一言、オレたちを応接室に案内した。


応接室に入ると、女性がスッと立ち上がり軽く会釈をしてきた。歳は30歳中盤くらいだろうか?肩にかかるくらいの緩やかなパーマをした髪型に、清潔感のあるジャケットとレースのタイトスカートが非常に似合っている。


「はじめまして、鈴木グローバルテクノロジーシステム社でシステム企画部を担当している里中と申します。佐伯の上司でございます。」


なんと!佐伯のオッサンの上司だったか。まだ若いのに、こんなオッサンを管理する立場にいるのだから非常に出来る女性ということか。


オレと真木さんも挨拶し、事前に教えてもらった名刺交換もした。


里中はオレたちを応接室のソファに座るように促し、落ち着いた口調で話始める。


「先日は、佐伯が内部の不適切なメールを誤送し、大変ご迷惑をおかけしました。今回の追加機能の件は私も同席しますので、公平に進めさせていただければと思います。」


佐伯は視線を落とし、苦々しい表情を浮かべている。


不適切なメールとは、うちの会社に値下げ受注できるように追加機能にバグを残したままリリースさせる旨が書かれたメールのことだ。


この里中という女、佐伯の上司ということであれば、そもそもコイツが佐伯に指示していたんじゃないか?


試しに、この前佐伯の不正を暴いた魔法を使ってみるか。


「パニックス」


オレは咳払いをしながら、小さな声で呪文を唱えた。


本来はモンスターを混乱させる魔法なのだが、こちらの世界では何故かコンピューターを誤動作させる効果があるようだ。


ピロリン


オレのスマホに一通のメールが届いた。どうやら佐伯のPCメールから送信されたものだ。


「あ、あれ!?なんでまた勝手にメールが転送されているんだ!?」


佐伯が慌てふためいている。どれどれ・・・メールの内容は・・・


『ファインダーシステム社に値下げさせる作戦失敗。里中部長にも不正がバレて最悪だ。俺の首が飛ばないように、何か聞かれてもお前たちは知らぬ振りをするように。』


どうやら、佐伯は課長職らしく、直属の部下に不正の内容をこれ以上漏洩させないために口止めのメールをしていたようだ。


「佐伯さん・・・また、あなたのメールが誤送されたようですが・・・」


オレはスマホの画面を佐伯、里中に見せる。


里中は冷静な表情で、その内容を確認し、佐伯に視線を向けた。


「佐伯課長、これはどういうことでしょう?後で説明してくださいね。」


佐伯は、もうダメだとばかりにうなだれてしまった。


どうやら、里中・・・いや、里中部長は潔白のようだ。それにしても、この佐伯という男・・・とことん汚い野郎だな。


里中部長は改めてオレたちの方に向き直り、気を取り直して話を始めた。


「改めて弊社の不手際でご迷惑をおかけし、申し訳ありません。貴重な時間ですので、仕事の話をしましょう。」


オレたちも気を取り直して、見積書を提示し、説明した。


里中部長は一通り話を聞き、ある程度納得してくれたようだ。


「今回の見積もり書、非常に正確かつ詳細に見積もられていますね。問題ありませんので、これをベースに契約について引き続き話を進めさせてください。」


おぉ!オレと真木さんは顔を合わせる。真木さんもきっと心の中で「よっしゃ」と思っているに違いない。金内部長にも良い報告ができそうだ。


「このお見積りの件とは話が変わりますが1点、お願いがあります。」


里中部長が静かな口調で続けて話す。お願いとは何だ・・・?


vol15.へ続く

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

ブクマと★の評価をしていただけると今後の励みとなります!


ぜひぜひ、次作もご期待ください!!

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