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vol.001_転生

「ヒールっ!」


オレの詠唱した回復魔法で勇者の傷が癒えていく。


「助かったぜ、賢者さん!」


そう、「賢者さん」と呼ばれたオレの名前はゲイマン。今年35歳で賢者をやっている。


まぁ、賢者っていうと上級職っぽく聞こえるけど、魔法使いと僧侶職を経験すれば比較的だれでも転職できる職業だったりする。


ちなみに、賢者のさらに上級職で大賢者って職業もあるけど、これは難易度が高いのでたぶんオレには無理だろう。


オレは「そこそこ」のポジションになれれば、それで満足だから。


実際のところ、賢者だったら冒険パーティには1人は欲しいってなるので、飯を食うには困らない。


そんなわけで、31歳で賢者になって、特に上を目指すわけではなく、今に至っている。


今いっしょに旅をしている勇者一行のパーティは、これで4組目だ。過去の勇者一行パーティは、途中で大賢者が加わり、オレは仲間から外されてしまった。


今のパーティは勇者、戦士、魔法使いが20代前半という年齢構成なので、オレは少し浮いてしまっているが、まぁ給料のためだし仕方ない。


ちなみに、オレたちパーティメンバーは各々を職業で読んでいる。「賢者さん」、「戦士くん」などだ。


パーティメンバーは状況によって勇者の判断で入れ替えられるので、割と人間関係はドライだったりする。


・・・・・・・・・


「お、おいおい・・・本気で魔王に挑むんか?」


「もちろん、今すげー乗ってるし、気合でいっちゃいましょうよ!」


勇者が、突然魔王を倒しに行こうと言い出し、オレは困惑する。


正直、このパーティだと全滅に決まっている。勇者もまだレベル10だし、他のパーティメンバーなんて初期職業のままじゃないか・・・


だが、この勇者。ひと旗上げて有名になりたいようで、世の中目立ってなんぼで考えているようだ。


それとなく、勇者を説得するものの、聞き入れてもらえず渋々オレも魔王討伐に付き合うことになった。


あんまり反対すると、またパーティから外されて就職活動しなきゃいけないから、こちらとしても強く言えない切実な理由があるのだ。


まぁ、一回全滅したら、理想と現実のギャップに気づいてくれるだろう・・・死んでも教会に瀕死ステータスで送還されるわけだが、それなりに痛いのでイヤなんだけど。


・・・・・・・・・


なんやかんやで、なんとか魔王のところまでやってきた・・・バトルは殆ど行わず、モンスターに襲来を縫うように駆け抜けここまでやってきた。


この先に魔王がいるのか・・・


「みんな!!ここまで来たら後は自分たちの力を信じよう!この世界に光を!!!!」


勇者がパーティ一同を鼓舞する。


まぁ、ある意味よくここまで来たもんだ。この勇者、若いけど将来大物になるかもしれんな。オレとは違って。


扉を開けると、そこに魔王が待ち構えていた。


勇者が放つ光の一撃、魔法使いが放つ炎の玉が魔王を苦しめる。魔王も闇の魔法でパーティ一行を葬り去ろうとするが、戦士が持つ光の盾でそれを防ぐ。


オレも得意の風魔法で、魔王にダメージを与える。魔王から受けたダメージも回復魔法ですぐ治療。これ賢者の特権ね。


これはイケるかも!?魔王倒したら、オレも一躍有名人じゃね!?


そう思った矢先、魔王がドラゴンに変身。聞いてないよ・・・


ドラゴンに変身した魔王は、口から闇色の光線を放ち、オレの意識はそこで途絶えた。


「あぁ、これ教会に飛んだな・・・」


途切れ行く意識の中、久しぶりに頑張った自分に満足しているのを感じた。


・・・・・・・・・


「おーい、寝るなー」


牧師さんの声だろうか、なぜか怒っているようにも聞こえる。寝るなも何も、死んでたんだから仕方ないでしょ。


そう思いながら目を開けると、そこは教会ではなかった。


整然と並んだデスク、カチャカチャと響く無機質な音。


そして、目の前には無精ひげを生やし、白いシャツを腕まくりした初老のオッサンがオレを見ていた。


「どこだ、ここは・・・?」


オレがつぶやくと、初老のオッサンはため息をつきながら答えた。


「ここは会社だ!」


vol2.へ続く

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

ブクマと★の評価をしていただけると今後の励みとなります!


ぜひぜひ、次作もご期待ください!!

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