07
すぅ、と深く息を吸って、ゆっくりと吐き出していく。
ピクピクと目の端が痙攣する。緊張している自分に苦笑いした。手のひらが汗ばむ。
ゲームのヴィオレティーナは使い魔を召喚することができなかった。
あくまでもヒロインの姉であり、ゲーム内では深く説明されることはなかったが、設定資料集には書かれていた、らしい。
ヴィオラは購入していないためにその理由は分からずじまいだ。
「珍しいですね、ミス・ナイトレイ。緊張しているのですか?」
「……先生、私だって緊張します」
前の机に座っていたクラスメイトたちに聞こえていたのだろう。クスクスと笑われてしまった。
第二学年から増える使い魔の授業は、魔法生物から派生した授業内容だ。
魔法使いにとって使い魔とは一心同体。一生を共に過ごすパートナーで、成人した魔法使いのそばには必ず魔法生物の姿がある。
第三学年の生徒のそばにも、すでに魔法生物の姿があり、下級生たちは憧れの念を抱くものだ。
やれるだけ、やろう。
先生が用意した魔法陣の前に立ち、早る鼓動を落ち着かせようと深呼吸をする。
――短く息を吐いて、詠唱をする。
「影となり、写し身となるモノ。金わわもたらし、銀を授ける。星を総て、天を覆う。――"現れなさい"」
陣に魔力が奪われていく。光を放ち、教室中が白く覆われた。
次に目を開けた時、みゅう、と小さく鳴く生き物に目を瞬かせる。
キラキラと輝くつるりとした鱗に覆われた体。背中から生えた翼。長いしっぽはトカゲのよう。
「どっ……ドラゴンの幼体!?」
先生の声が広い教室に響き渡った。