06
着々と悪役令嬢路線を進んでるのは気のせいだろうか。主にクリスルートの。
ゲームでは、ユリアが助けに入らず、ヴィオレティーナは反撃して、クリスの利き腕を切りつけてしまう。
魔法使い、魔女にとって利き腕は武器だ。たとえクリスから手を出してきたとしても、彼の利き腕を傷つけた罪は十分に重い。
二ヶ月の謹慎処分を下されたヴィオレティーナは、ナイトレイ家にあるまじき、と父親に勘当を言い渡されてしまう。
全部全部、アリスのせいだ!! と闇堕ち(ここ重要)して自暴自棄になる、というルートである。
「では、順番に使い魔を召喚していきましょう。敬意を持って接するのですよ。それでは――ミス・アリアナから」
「えっあ、アタシ!? ……はい!」
こつん、と肘で脇腹を小突かれる。ゆっくり瞬きをして隣を見た。
「またぼーっとしてたよ」
「……考え事よ」
「それは僕に言えないこと?」
甘い顔立ちで、悲しそうに微笑まれると「そんなことないよ!!」と全てゲロってしまいそうになるが、自分の顔の良さを理解してやっているのだ、この男は。
私はただ平和に過ごしたいだけなのに、周りがそうさせてくれない。……全部全部、妹のせいだ。
思考して、ハッとする。この思考はいけない。闇堕ちルートそのものだ。
不安そうに、こちらを伺いみるユリアに曖昧に微笑んだ。
不安だ、と口にしてしまえばユリアは「何が不安なの?」とまた子犬みたいな顔で聞いてくる。その表情にまんまと乗せられて「妹のこと」と言ってしまったら最後、ユリアは不安要素を取り除こうとするだろう。
どこでどう間違ったのか、ヒロインに懐くはずのユリアが自分に懐いてしまった。
この時点で卒倒するかと思ったのに、神様はさらにヴィオラに試練を下すのだ。
「では、ミス・ナイトレイ」
「……はい」
気乗りしない、静かな声だ。
教室中がヴィオラに視線を向けている。高嶺の花の彼女は、一体どんな使い魔を召喚するのだろう、と。
――闇堕ちポイントその二だ。ヴィオラは、使い魔を召喚することができない。