04
妹たちが帰ってくる前にさっさと退散させてもらったが、ジュキアが思いのほか言葉が通じることに驚いた。
ゲーム上での彼は情熱的で、熱い男というイメージだった。
まさに太陽の寮が似合い、赤褐色の髪から連想されるとおり炎属性の魔法を使う。生い立ちや彼の背景は……ヴィオラには関係がないので割愛しよう。
あの地獄のお茶会で、生き抜くためにより厄介だと感じたのはクリスだ。
穏やかな碧眼は笑みを浮かべているのに、鋭い瞳で一挙一動を観察してくるのだ。
「ねぇ、聞いているの? アリスのお姉さん」
その厄介な奴に、捕まってしまっている。カフェテリアから離れたからと安心して警戒を解いた自分をぶん殴りたい。
ニコニコ笑みを浮かべているのに、右手には物騒なことに、水で作られた短刀が握られている。
月夜ばかりと思うなよとはよく言うが、まさかこんな真昼間からこんな堂々と襲われるとは思わなかった。
「私に何か用かしら?」
肩にかかった黒髪をはらい、腕を組む。
やられる前にやるのみ。だが、ただ手持ち無沙汰だからわざわざ魔法で水の短刀を作り出しているというだけかもしれない。もしそうだったらやばい奴認定してやる。
「アリスがね、お姉さま、お姉さまぁって、いっつもあなたのことばっかり話すんだ。昨日のお姉さまは素敵だった、今日のお姉さまはもっと素敵、明日のお姉さまはさらに素敵! 僕としてはアリスの話が聞きたいのに、出て来るのは貴方のお話しばっかり!」
にっこりと、爽やかな笑みに澱んだ瞳。いい具合に捻くれているなぁ。ねじれてるなぁ。腹黒キャラだけど、ヤンデレではなかったはずなのに。
「だから、邪魔だなぁって思って」
水の短刀を振り上げる。彼の周囲に多数の刃が現れる。振りかざされた瞬間、刃が飛んだ。