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悪役令嬢は傍観に徹したい!  作者: 白霧 雪。
課外授業にトラブルは付き物です。
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02

 

 精霊の森は、学園のわりと近場にある比較的安全な森だ。

 名の通り、たくさんの精霊が住んでいるから精霊の森と言われているが、多くの人々は精霊を視認することすらできない。


 瞳色順位一位の、高い魔力を秘める紫水晶(アメジスト)の瞳を持つヴィオラはその瞳に精霊の姿を、光を映し出すが、本来のヴィオレティーナに精霊を見ることはできなかったはずだ。


 ヴィオレティーナと、ヴィオラの相違点はあげるとキリがない。

 第一にアリスは姉に苦手意識を抱いているが、実際のアリスはどうだろう。一言目には「お姉さま」、二言目にも「お姉さま」だ。好かれている自覚がある。


「それじゃあペアを作りなさい」


 薬草学教師の声に、同級生たちは仲の良い者同士でペアを作っていく。


 ――右手と左手を掴まれたヴィオラは、眉を顰め、努めて冷静であろうとした。


「……あぁ、そういえばひとり多いのだったわね。いいわ、貴方たちは三人組よ」


 右にスヴェン。左にユリア。

 学年きっての美男子ふたりに挟まれたヴィオラに羨望の目を向ける女子生徒たち。


 ニコニコ笑顔のスヴェンとは対照的に、ユリアは仏頂面だ。

 気まずい雰囲気が三人の間に流れる。否、ヴィオラとユリアの間に、だ。


「……ヴィオラとペアになるのは僕なんだけど」

「ヴィオレティーナは優しいからなぁ。友達の少ない僕を心配してくれているのさ」

「じゃあ別に友達を作ればいいじゃないか」

「僕の一番はヴィオレティーナだからね。一緒に授業を受けたいんだよ」


 飛び交う火花。

 ヴィオラの奪い合い。

 いや、こんな乙女な展開求めていない。ヒロインを挟んでやってくれ。


 深く溜め息を吐き出せば、ふたり揃って「大丈夫?」と聞いてくる。原因はお前たちだぞ、と喉まで出かかった。


 今日の薬草学は、思っていた通り明日の魔法薬学で使う薬草の採取だった。


 光るスズランの花の蜜と、空気に触れると爆発する花を咲かせる発火草と、水精霊の住む湖の水を小瓶にいっぱい。


 水精霊の住む湖の水はすぐに見つかるだろう。発火草も、以前に群生地を見つけている。

 光るスズランの花が難しかった。ただのスズランならば容易に見つけられるが、光るとなれば話は別だ。


「では、笛が鳴ったら戻ってくるように!」


 太陽の寮生たちがすぐに箒に乗って森へと飛び立ち、月の同輩たちは各々の情報共有をしている。

 変わり者ぞろいの星の寮生は、月の寮生が動くのを待っていた。


 それぞれの寮の一学年は十名前後しかいない。魔法使いは、年々数が少なくなっていっている。

 昔は一クラスずつだったが、三つの寮まとめて授業を行っているのが今現在の状況だ。いつの時代も少子高齢化は問題になっている。


「さぁて、僕たちも探しに行こうか」

「君に指図されたくない。……ヴィオラ、行こう」

「いくら温厚な僕だって怒るんだからな」

「……ちょっと、喧嘩するなら私は違う子たちに混ぜてもらうわ」


 それはダメ! と両側から引っ付かれた。

 


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