異なる状況下における唯一人物の本質とその記録
その村は凶作の被害を受けていた。数多の人が息絶え、残った人物は残り少なかった。
生き残った人たちは選択を迫られた。
生きるために村を捨てるか、思い出とともにこの地で果てるか。
その中で、その男が選んだのはその地で果てることだった。
生きるためといっても、要はそれは博打の様なもの。たどり着いた地でも凶作であったなら、結局は死ぬしかないし、そこで死ぬことは迷惑にしかならない。それなら、住み慣れたこの地で果てることが一番だろう。と、それがその男の考えだった。
大多数の人は村を捨て、僅かな生きる希望にだってすがった。
「・・・・・・人は、三度生まれ変われるって言うよね」
残された男は一人、その地で果てながら呟いた。
「だったら、次は、もう少しまともな人生だといいなぁ」
その学校では、いじめはほぼ日常化されていた。
被害を受けるのは常に弱者。はみ出し者。特に誰も哀れになど思わない。誰もが、その弱者の言葉など理解できない風に装うからだ。
その中で、より陰湿ないじめを受ける男がいた。
味方などいない世界。うんざりしていた。こんな世界で生きていくぐらいなら、さっさと命を捨てることのほうが得策だろうと、それが男の考えだった。
「・・・・・・人は、三度生まれ変われるって言うよね」
屋上。男は虚空に足を踏み出しながら呟いた。
「だったら、次は、もう少しまともな人生だといいなぁ」
その富豪の家は何もかもに満ちていた。
ほしいものは何もかもが手に入り、失うものも、欠けるものも無い空間。
一人息子の男は、けれどその世界に嫌気が差していた。
何もかもが手に入ることは、それは何も手に入らないことと大差なかったのだ。方向性。それがどちらにずれているかと言うだけで。それが男の考えだった。
「・・・・・・人は、三度生まれ変われると言うよね」
豪華な調度品で満ちた部屋。ビンの中の薬を口に含んで呟く。
「だったら、次は、もう少しまともな人生だといいなぁ」
残念ながら、その男の人生はそこで終わった。