表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

異なる状況下における唯一人物の本質とその記録

作者: ヒツジ

 その村は凶作の被害を受けていた。数多の人が息絶え、残った人物は残り少なかった。

 生き残った人たちは選択を迫られた。

 生きるために村を捨てるか、思い出とともにこの地で果てるか。

 その中で、その男が選んだのはその地で果てることだった。

 生きるためといっても、要はそれは博打の様なもの。たどり着いた地でも凶作であったなら、結局は死ぬしかないし、そこで死ぬことは迷惑にしかならない。それなら、住み慣れたこの地で果てることが一番だろう。と、それがその男の考えだった。

 大多数の人は村を捨て、僅かな生きる希望にだってすがった。

 「・・・・・・人は、三度生まれ変われるって言うよね」

 残された男は一人、その地で果てながら呟いた。

 「だったら、次は、もう少しまともな人生だといいなぁ」


 その学校では、いじめはほぼ日常化されていた。

 被害を受けるのは常に弱者。はみ出し者。特に誰も哀れになど思わない。誰もが、その弱者の言葉など理解できない風に装うからだ。

 その中で、より陰湿ないじめを受ける男がいた。

 味方などいない世界。うんざりしていた。こんな世界で生きていくぐらいなら、さっさと命を捨てることのほうが得策だろうと、それが男の考えだった。

 「・・・・・・人は、三度生まれ変われるって言うよね」

 屋上。男は虚空に足を踏み出しながら呟いた。

 「だったら、次は、もう少しまともな人生だといいなぁ」


 その富豪の家は何もかもに満ちていた。

 ほしいものは何もかもが手に入り、失うものも、欠けるものも無い空間。

 一人息子の男は、けれどその世界に嫌気が差していた。

 何もかもが手に入ることは、それは何も手に入らないことと大差なかったのだ。方向性。それがどちらにずれているかと言うだけで。それが男の考えだった。

 「・・・・・・人は、三度生まれ変われると言うよね」

 豪華な調度品で満ちた部屋。ビンの中の薬を口に含んで呟く。

 「だったら、次は、もう少しまともな人生だといいなぁ」

 

 残念ながら、その男の人生はそこで終わった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 一駅で読めてしまうくらい超短編ものを探して読み漁っていたのですけど、ちょっと面白かったです。これからも頑張って下さい。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ