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クーロン力

初詣も終わって、あんみつも食べた。


結局おとなしくおごられてはくれなかったけど、あんみつに乗せるオプションのアイスを私が負担することで合意。



「抹茶アイスに黒蜜かけて溶けかけのところを白玉と一緒に食べるのが最高」



なんていつも無表情の彼が頬を少し紅潮させて言ってくれるんだから、オプション料金の二百円なんか安いもの。



「糖分は脳の唯一のエネルギー源だから、いくら摂っても足りない」



とか言いながら一心不乱にあんみつを食べる私の彼、世界一可愛い。



と。

店を出ようとしたとき、店のドアを開こうとした私の手と理系くんの手が触れあった瞬間、右手に強い衝撃が走った。



「いたっ!!」



冬の大敵、静電気。


今日は気合を入れて首周りがもこもこの可愛い服を着ているから、とても静電気が溜まる。


毛がふわふわしちゃって、首回りがこそばゆい。


店を出て右手をさすりながら歩いていると、突然少し大きな暖かい手が私の指をつかんだ。



「静電気の放電にはクーロン力っていうのが働いているんだけど――」



理系くんが私の目を見ないで言う。


うん。ごめん。クーロン力って言葉自体初めて聞いたよ理系くん。


彼は、私の左手を握って歩き出す。


何が言いたいのか分からないので、黙ってついていく私。



「静電気って体の内と外との電位差が大きいときに放電するんだけど、その電位差が大きいほど痛いのね」



私は相槌をうちながら、彼の話を聞くモードに入る。



「だから、こうやって手をつないで電位差を無くせば、僕らの間で静電気が放電することは無いよ」



理系くん。あのね。


そういう言葉を顔真っ赤にして言うの、ズルいよ。



私は理系くんの暖かい右手をぎゅっと握り返した。


理系くんは照れくさそうにそっぽを向くと、慌てたように「あの喫茶店行こうか」なんて言って。


重そうな鉄の扉に手をかける。




バチッ!!!



走った静電気に痛がる理系くんが可愛くて、私はしばらく笑みが止まらなかった。

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