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共著かも

私たちは今日、図書館に来ている。


静寂というよりも、静謐と言ったほうが似つかわしい空気に、自然と背筋が伸びる。


お互いにレポートの提出期限が迫っていたから、今週は会えない予定だった。

でも、会えないと頑張れなくて、私から理系くんを誘った。


図書館なんて文系女子たる私の独壇場――なんてこともなく、理系くんが隣の席でノート型PCのキーボードを小気味よく叩いている。


お互いに勉強は嫌いじゃないから、理系くんも図書館はよく利用するらしい。


理系くんのレポートはタイトルを聞いてもわからなかった。

けれど、本を見ながら真剣にレポートを打ち込む彼を見て、私も身が引き締まる。


よし。頑張れ私。


文章は読むのも書くのも好きなので、どちらかというとレポートは得意な方だ。

ただ今日の課題は幼児期の心理学。

心理学って理系的な部分もあって、文系の私はちょっと苦手意識がある。


わからない用語を理系くんに相談できたら――なんて思ってたんだけど、静まり返った図書館で声を出すのは躊躇われた。


私は調べ物をしようと思ってスマホを手に取る。


そのとき、ほぼ同時に。

消音モードのスマホに、理系くんからLINEの通知が来た。


『文系ちゃん集中してるとこごめん。数式が、“絶対この形じゃなきゃダメ”なことをレポート的な難しい言葉で言いたいんだけど、思いつく言葉ある?』


聞きたいことがあったのは理系くんも一緒だったみたい。


隣にいても声を出さずにスマホでやり取りするところ、理系くんらしいな。


私は、小声で話しかけようとしてたのに。


理系くんの質問に少し考えて、思う答えを返す。


『必然性とか? 統計とかだと蓋然性が高いとか、“こうなることは必定と考える”とか言い回しいろいろあるかも』


私の返信に、短く『さすが』の三文字と、“ありがとう”のスタンプが返ってくる。


ふたたびカタカタと、キーボードの音が聞こえてきた。


進んだみたいでよかった。

役に立てたようで嬉しいな。


ときどき私もLINEで質問をしながら、レポートは着々と進んでいく。


同じ物を書いてはいないのに、共同作業をしているようで。


最初は集中できないかもと思ってた。


でも、普段は一人でやるレポート作業がお互いの強みで補完されて、いつもより完成度も高いし、早く終わりそうだ。


――理系くんといたら、レポートを書く時間ですら、楽しくなるんだ。


ふと時計を見ると、集合が遅かったから、もう18時を回ろうとしていた。


レポートはあと、結論の言葉を美しくまとめれば終わり。


理系くんはどうかな。


隣を見ると、バッチリ目が合った。一瞬目を泳がせた彼は、ちょっぴりぎこちなく微笑んでスマホを取り出す。


『文系ちゃん、終わった?』


『ううん、でもあとちょっと』


『僕の方は終わったから、このあと行くごはん屋さんでも調べておくね。リクエストある?』


自然と頬が緩む。


――今日は、なんでもない日常だけど。


『ある! 頭使って疲れたから大きなパフェのあるファミレスに行きたい!!』


『あはは。魅力的なお誘いだ。オッケー、調べとく』


こういう一日すら楽しめるのが、素敵だなあと思う。


レポートを書いてるときと同じ真剣さでレストランを探し始める理系くんの横顔を眺めながら、胸の奥がじんわりと温かくなった。



ちなみにレポートはね。

お互いに過去一番で評価が良かった。

だからすぐに『またやろうね』って約束した。


レポートの評価よりも。

お互いの勉強が大変なときでも会えることが確定したのが、一番嬉しかった。

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