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青い秋  作者: UTUTU
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それ、について

多くは語りませんが。ガスが噴出するのです。

 多分、その背徳感に昂揚するからなんでしょうか。僕は「それ」の耽溺性にあいも変わらず、あきれながらも、息を潜めて目を見張るんです。まったく。身の毒。心の毒。しかし。実は「それ」が与えてくれるのは、まことに静かな熱中なんです。それを人は知らない。あるいはそれは秘蹟に似ていたのかもしれません。徳に背を向けるというより、なにかベールの奥にひかりを見いだす作業に僕には思えた。感ぜられたんです。


 秘匿のうちに萌える輝きを、みずからのまなこのみが、発見したという悦び。そうなんでしょうか。

 珍しい植物を深山にみとめる、老いを友とした採集家のように?

 安部公房の、砂の女に描かれていた、熱狂的気質の幽閉者が、そもそもの迷走のきっかけに、蝶を追い、追い、なにか踏み外していったように?

 そうなんでしょうか。


 肝心かなめの「それ」が何物かを、ここでは明らかにしますまい。すでにお話しした「それ」です。


 こうして、ある種の感応を、まるで音楽や味覚のごとくに語れるのは幸せなことかもしれません。ですが、普通には奇怪な現象なのでしょうし、事実、自分自身でもそう理解しています。ですが。換言すれば。


 怪物になる夢を見て、めざめてみると、ただの中年男だった。


 という悪夢。


 前後、脈絡のない言葉を連ねていますが、おのれの胸裡では整合が取れているんですよね。


 なにしろ、灰色の日常が続きます。僕はガス抜きという言葉があんまり好きではありませんが、実相に基づいた経験則的な言葉、行為なのでしょう。たとえば食事、排泄、コイトスに似た。


 怪物ではない僕たちはガスで充満している。しかも、それは可燃性ではない。


 忍びない次第ですが、まるで共犯者意識を求めるように、一人称を複数形としてしまいました。さもしいことです。


 ガスの海にて。


 読んでいただきまして、本当にありがとうございます。

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