表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い秋  作者: UTUTU
5/18

傷と月

取り留めなく自己セラピー。書くという手段により。

 月光が、その神々しい金の粒子を、僕の皮膚へ刻む。刺青のある皮膚へ。それは冷たく甘く浸透して、浸透し、さらに浸透しながら、夢の神経を覚醒させるんです。こんな易傷期めいた、青くさい感覚に浸るのが僕は好き。音楽にはジョビンを選ぶ。おんおん林立した、これもまた仄青い影や光の粒子みたいな、ボッサのリズムのあいだ、あいだに、陶酔するんです。


 このような時間をひさしく味わっていない。


 肉体もかつて与えられていた機能性を失してしまいました。今の僕にあるのは四十男の見すぼらしい体だ。かつては女性の心を焦がすことも可能でしたが、現在では路ばたの石ころと大差はない。皮膚に象られた傷の魔方陣も、鋭利に響きはしない。月光に共鳴したりはしないんです。


 今朝がた、奇妙な夢を見ました。


 水族館のような場所で、水槽の中に人間の死体を発見する男。まわりに雑談する人物はいるが、男だけが水中の死体という異変に気がついているらしい。男は色を失い、声を失いつつも、異変を周囲へと知らせようとするのですが、刹那。男自身がまるで手品みたいに、その場から消えて失せるんですよね。

 刹那ののち。人々はようやく、ざわめく。何故ならば、水槽中の異変に気づくとともに。さらに、さきほどの男が同じ水中に溺れもがいていることを認めるから。

 そう。そうです。不思議なことだが、男は死骸のある水槽へと瞬間移動したんですよね。

 そこは寂れた水族館で、大して人の目というのがありはしない。

 実際を観察していたのは、人ならぬ水棲生物、魚や、ヒトデ、そんなものらに過ぎないがために、その死体を作り出したのは、同じ水槽の中にいた男ではないか、ということになってしまう。ちなみに死骸そのものには絞殺の痕跡があり、どうも男性の手などで力まかせに首を絞められたようなのでした。

 状況がそろい、男は断罪されてしまいます。


 そのような、取り留めない夢を見ました。

 コメディともトラジェディともつかない。不安の姿が何となく美しいが、さしたる意味も介さない。だからと言うと、だから、何でもありはしないんです。


 起床しましょう。


 今日はまた母を見舞います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ