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1 聖女さんと邪神ちゃん

連載開始しました。よろしくお願いします。

 拝啓、故郷のお父さん、お母さん、お元気でしょうか。


 聖女として選ばれて、勇者様のパーティーに同行するようになってから早半年が経過しました。最初の頃は緊張や重責もありましたが、今では随分と聖女として行動する事にも慣れました。


 そんな私の所属する勇者パーティーは今、ダンジョンの奥深くに足を運んでいるのですが……


「だから! 何で邪神の封印を解こうとしてるんですか!」


「だってそこにボタンがあったら押すだろ?」


「押しますね」


「押すな」


「……zzz」


 目の前にあるのは、封印された邪神とその封印装置。その解除ボタンを目の前にしてこのセリフです。


 そう、私が参加しているこの勇者パーティ、残念なことにアホばっかりなのです。一人に関しては寝てるし。


 お父さん、お母さん。多分私には荷が重過ぎると思います。早く故郷に帰りたいです。






 私のパーティーメンバーは全部で四人。


 まずは勇者様であるユーゴさん。どうやら異世界から召喚された方らしいのですが、とにかく面白さ重視で行動を起こすためトラブルが絶えません。ありていに言ってアホです。


 次に魔法使いのヴェインさん。この方は一見理知的なイケメンなのですが、その頭の中は空っぽです。この間も魔導書と騙されて変な日記を買わされてきました。アホです。


 そしてパーティでは私と二人しかいない女性である女戦士のレリアさん。いわゆる脳筋というやつでしょうか。前線で戦う姿は非常に頼りがいがあるんですけどね。


 最後は寝てる人。戦士のガンツさんです。この人は戦っているとき以外はだいたい寝ています。今も直立不動で爆睡中です。アホです。


 私も聖女として、ヒーラーとして同行していますが、いつもこの人たちに振り回されてばかりです。


「だ・か・ら! ここに封印されてるのは邪神だから、封印を解いちゃいけないって……」


「ぽちっとなー」


「人の話を聞けぇ!」


 私の話なんて柳に風。全く聞いてくれないユーゴさんが、目の前のボタンを押してしまいました。何が面白いのか、手を叩いて盛り上がるヴェインさんとレリアさん。


 大盛り上がりの三人を前に、目の前の邪神を封じた巨大な水晶が光輝き霧散していきます。


 ……ああ、短い人生でした。次はもっと、まともな人生を送れますように。







 水晶が姿を消し、中から現れたのは一人の少女でした。


 美しい黒髪に、整った顔立ち。いえ、そんな事を考えている場合じゃありませんね。この方は邪神なのですから。


 その邪神さんの口が、ゆっくりと開きます。


「そなた等が、妾の封印を解いたのか……。大儀なのじゃ」


「おいヴェイン! 妾だってよ!」


「それにのじゃロリですよ! のじゃロリ! パナイっすね!」


 ユーゴさん、ヴェインさん。もうちょっと緊張感を持って下さい。


「ふん。緊張感の無い奴らじゃ」


 ほら、邪神さんにも言われてしまっているじゃないですか。


 私達を睥睨する邪神さん。残念ながら小柄な方なので、一段高い所に立っていてもレオンさんとほとんど目線の高さは変わっていませんが。


「い、意外と胸があるじゃねーか」


 自分の胸と比較しながら戦慄しているレリアさん。まあ確かに女戦士さんは貧乳ですからね。というか注目するところがそこですか。


 ちなみに私はそこそこのものだと自負しています。ちなみに。


「まあよい。貴様らには感謝している。礼と言ってはなんだが、貴様らを最初の信者にしてやろう。邪なる魔眼(イービルアイ)


 邪神さんの可愛らしい眼が怪しく光輝き、その紫の光が私達に向かって広がります。


 噂に聞くと、この光を浴びたものは精神を蝕まれ、邪神の信者になってしまうようです。


 しかし、しばらく待ってみても私の身体にも、思考にも何も変化はありません。どういうことでしょうか?


「……なぜじゃ! そこの娘はよい、どうやら女神の加護を受けているようじゃからな。他の四人は何故妾の信者にならんのじゃ」


 どうやら私には効かなかったようですね。女神の加護ですか、今まで意識した事もありませんでしたが、どうやらそのようなものがあるのですね。


 他の四人にも効かなかったようですが……一体どういうことでしょうか?


「なあヴェイン、シンジャって何だ?」


「知らないんですかユーゴさん。新種のモンスターですよ」


「食べ物じゃねーか?」


「……zzz」


 あー、これはアレですね。アホ過ぎて効かなかったのでしょう。そういえば、この人たちが精神系の状態異常にかかったのは見たことありませんでした。普段から混乱の状態異常を持っているようなものですからね。


 というかガンツさん、よくこの状況で寝てられますね。


「……なんという強固な精神力なのじゃ。妾の魔眼を無効化するとは」


 ああ、邪神さんが勘違いしています。いや、あながち勘違いではないのかも知れませんね。


 と、そんな時でした。何かを破壊するような大きな音が響き渡り、この部屋の壁が崩れ落ちました。


「ふむ、レッドドラゴンか。丁度よい、妾の力を見せ、貴様らの心を屈服させてやろうかの」


 壁の置くから姿を現したのは、赤い表皮の大きなドラゴン。俗に言うレッドドラゴンというやつです。


 邪神さんはそう呟くと、レッドドラゴンめがけて指を掲げると、一言小さく呟きました。


暗黒の紫電(ダークライトニング)


 パチっという電気の弾けるような音と共に、邪神さんの指から放たれた小さな稲妻が、レッドドラゴンの鼻先に直撃します。しかし威力は全然ありません、調整を間違えたのでしょうか?


 と、その瞬間でした。部屋中に響く轟音と共に、無数の雷がレッドドラゴンに降り注ぎその身を焼いていきます。


「ふん、たわいない」


 目の前で、丸焦げになったレッドドラゴンが地面に倒れ付し、動かなくなります。あまりの熱に白濁したその眼差しからは、もはや生気を感じ取る事ができません。


 一瞬でレッドドラゴンを倒した邪神さんは、満足げにマントをはためかせてこちらに振り向きます。よく見てみれば、邪神さんってかなり際どい格好をされてますね。ビキニアーマーとで言うのでしょうか? その上から黒いマントを羽織っているだけなので、真っ白な肌の大部分が露出してしまっています。


「これで貴様らも妾に信仰心が芽生え「すげえ!」……ん?」


「すげえよこの子、マジハンパねえ! パーティーに入って貰おうぜ!」


 何を言っているのでしょうか、この勇者(笑)は。


「確かに、僕の魔導には今一歩届いていませんが、優秀な魔導士のようですね」


「アタシはいいぜ、こんなもん見せられちゃ、入れないわけにはいかねえしな」


 邪神さんも、目が点になっています。恐らく私も同じような顔をしているのではないでしょうか。


 そしてガンツさん、よく今の轟音で起きませんでしたね。


「おぬしらは一体何を言っておるのじゃ?」


「え? だって俺達のパーティーに入りたいから今の魔法を使ったんだろ? 安心しなって、十分合格だぜ!」



 はあ、本当にこの人達は……


「よーし! じゃあ帰ってこの子の歓迎会だ!」


 言うやいなや、両手を掲げて走り出して行くユーゴさんと、そのほかの三人。ああ、ガンツさんも起きたんですね。


「ふむ、信者にはならんか。本気で言っておるようじゃの……まあよい、外に出るには丁度よいか」


 どうやらこの邪神さん、私達のパーティーについてくるようです。


「あのー、ちょっと横失礼しますね」


「なんじゃ、まだおったのか。ん? 何をしておるのじゃ?」


「いえ、このレッドドラゴンの討伐が私達の今回の任務でして、その討伐証明として鱗を剥いで行かないと……あの人たちは自分達が何をしに来たのかすっかり忘れているようですので……」


 腰のポーチにしまってあったナイフで、レッドドラゴンの鱗をせっせと剥がしながら、邪神さんに事情を説明します。


「おんしも苦労しとるようじゃの……」


 邪神さんに哀れまれてしまいました。

この後続いて第二話の投稿があります。

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