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第2話 ストールさんと少女ちゃん

 アングリ・ボアを倒した俺たちだったが一つ問題が出ていた。

 それはこいつを持って帰れないことだ。魔物を討伐した場合その証拠を持ち帰らないといけないことになっている。そもそも本来いないはずの場所にいた魔物だ、そのまま持って帰り報告した方がいいだろう。


「おーい」


 森の入口の方から何人か走って来ていた。あれは...宿にいたオッサン達だ。何故か完全武装である。


「セレン嬢ちゃん大丈夫か?最近森の浅い所で魔物が目撃されてるという話を聞いてな。ってコイツはアングリ・ボアじゃねぇか。これ嬢ちゃんがやったのか。」


「これなら心配して来る必要はなかったかな?」


 彼らはどうやら彼女を心配して駆けつけたらしい。


「えっと...心配してくれてありがとう。」


「いやいや、お礼を言われる程の事じゃないよ。」


「何も無かったのならここから離れるぞ。実際にこの辺りに魔物がいるとしたら異常だ。」


 どうやらアングリ・ボアは彼らが運んでくれるようでテキパキと作業をしてくれた。4人はアングリ・ボアの亡骸に手を合わせる。襲ってきたとはいえさっきまで生きていたのだ。その命を頂いた、そのお礼ということだろう。




「いやー、ダムスが1番に慌ててたんだぜ。ギルドで森に魔物が出たって聞いた時の慌てっぷりっていったらな。」


「黙れテルム、お前も同じような感じだったろ。おいレントも何か言ってやれ。」


「残念ながらあれはホントに面白かったですよ。」


 会話を聞いていて大体わかったが、今馬鹿にされている斧使いの戦士がダムス。からかっているのが弓士のテルム。彼らの中で1番年下であろう魔術師のレント。

 この3人でチームを組んでいるらしく、セレンとも仲が良いらしい。彼らはとても良い人達だった。酒場で見かけた時気持ち悪いとか思ってしまってすみませんと心の中で謝った。


 街に着き依頼と魔物についてを報告、報酬を貰って宿に帰ることになった。

 アングリ・ボアの肉は美味いと有名で報酬の中に肉があったので宿屋で料理してもらう。彼女は宿屋の手伝いもしているようで、配膳や食器を下げたりと忙しそうだ。

 店の席も埋まってきた頃ダムスが大きな声を上げた。


「今日のアングリ・ボアの討伐で嬢ちゃんのランクがDに上がった!今日は祝いだ!セレン嬢ちゃんにカンパーイ!」


「「「カンパーイ!!!」」」


 突然の出来事にセレンも驚いていた。すると店の厨房から女将さんが出てきた。


「あいつらなりのサプライズさ、いつも通りにって頼まれててね。最近あいつらいつも近くにいたろ?セレンちゃんがDランクに上がるのを待ってたのさ。プレゼントを用意してるみたいだから行ってきな。」


「うん!」


 彼女に贈られたのは、ダガーにポーチだった。シンプルだがどちらも上質だ。...これいくらしたんだろ。


「女の子にどういうの贈るのがいいのかわかんなくてなこんなのになっちまった。」


「あ、ありがとうございます。でもいいんですか?」


「ああ、もちろん。というかまだ増えるから。」


「セレンちゃんの装備もそろそろボロボロになってきたろ?でもサイズとかデザインとかわかんないから選んで貰おうってことになってるんだ。」


「服までですか?そんなに貰ったら悪いです。」


 さすがに貰いすぎだと思ったのだろう、頭と手を全力で振っている。


「いいのいいの、貰ってやりな。可愛い後輩ができたんだ、あいつらもやる気が出てるんだろう。まあこちらとしては客が増えて儲かってるからありがたいけどね。」


 女将さんは酔っ払うおっさん達を横目に「今日は寝な。明日は忙しくなるだろうよ。」と言って厨房に戻って行った。


 セレンは貰ったプレゼントを大事に抱えて部屋に戻った。きっととても疲れていたのだろう、さっと寝巻きに着替えて寝てしまった。



 今日1日セレンちゃんと行動を共にして気が付いたことはこの子はとても魔力の保有量が多い。そしてこのストールの体、異常に高度な魔術の紋様が編み込まれている。なんだろうこれどこかで...うーん、わからない。


 それよりも今日1日を振り返って思ったことは、喋れないのはすごく寂しいということ。さっきの宴会や森からの帰り道とか、自分だけボッチみたいな感じでとても悲しかった。という訳で喋れるようになろうと思う。


 方法はいたって簡単。この魔術の紋様みたいに魔法陣を描いてしまえばいい。元からある魔術の紋様を消さないようにするのは大変だけど。ちなみに腕?を動かせるのも同じような原理になっているからだったり。あの時は急ごしらえだったから作り直したほうがいいだろう。


 音を出力する魔法陣に体を動かす魔法陣、多分これからも使うであろう魔力の盾に...必要な魔法陣は描き終わり声を出してみる。


「あ、あ、マイクテスマイクテス。」


 いい感じだ。ちょっと調整は必要だけど。


「うーん、うるさぁい。むにゃむにゃ。」


「す、すみません!」


 起こさないようにボリュームを小さくしつつ調整をした。

 作業をしながらふと今後どうしようと思った。記憶はところどころ飛んでいるみたいだしなんて説明しよう...。


 そんなことを考えているうちにカーテンの外が明るくなっていった。




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