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 はっと、目を覚ます。

 見慣れた、明るい天井の木目が、ダンを優しく出迎えた。

 戻って、いる。横たわっているベッドの上でほっと胸を撫で下ろす。だが、次に聞こえてきた小さな呻き声に、ダンは慌てて上半身を起こした。

「アキっ!」

 ダンの足下で小刻みに身を捩るアキの、蒼白な頬に、息が止まる。

「アキっ! しっかりしろっ!」

 しかしすぐに、家全体が震えるほどの大声を、ダンは発した。


 アキが眠る病室から十分に離れたことを確かめてから、小さく息を吐く。

 いつもの発作だと、アキの主治医は言っているらしい。現世の母から又聞きした言葉を、思い出す。身体の弱いアキは、幼い頃から何度も倒れていることも。そんな設定、昨日はあったか? 不意の思考に、ダンはそっと微笑んだ。まあ、それはそれで、問題は無い。

 そのダンの脳裏に、アキの、安らかに眠る青白い顔が過ぎる。

 この世界に生まれた時からくすぶっていた、行き場の無い熱は、まだ、胸の中にある。だが。大きく首を横に振ると、ダンは鞄の中から、件のノートを取り出した。

 手の中にある、ぼろぼろの紙表紙に、もう一度首を横に振る。

 肌身離さず持っていたはずの、そのノートを、ダンは静かに、近くのゴミ箱に落とした。

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