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 外が明るくなる前に、目を覚ます。

 隣で安らかに眠るアキを起こさないようにベッドから滑り降りると、ダンは床に投げ出していた制服を羽織り、あの世界へ行くための呪文を無音で唱えた。

 すぐに、景色が明るくなる。この場所は、王が午後に休憩を取る、執務室と寝室の間にある娯楽室の近く。思った通りの場所に到着したことに口の端を上げると、ダンは人気の無い廊下を早足で進んだ。

 魔法矢をセットした魔法のボウガンを右腕に用意してから、娯楽室の質素な扉を押し開ける。前世の父は、娯楽室で一人、チェスに興じていた。

「やはり、来たな」

 王であるはずの父を守る近衛兵が一人もこの場所にいないことにダンが驚く前に、「こちらへ来い」と父が手だけでダンに指示する。魔法矢を放つためには、ある程度の距離が必要。右腕を隠し、ダンは扉の横を動かなかった。

「あの幼馴染みの犠牲も、無駄だったということか」

 そのダンの耳に、呆れを含んだ声が響く。

 やるなら、今しか無い。心の奥底で頷くなり、ダンは右腕のボウガンを父に向かって構えた。

 だが。構えたはずのボウガンが、その上に乗った魔法矢と共に消える。驚きが口から飛び出す前に、ダンの両足から力が消えた。

〈これ、は……!〉

 魔法? 膝に当たる、冷たい石畳の感覚が、遠くなる。祖父を毛嫌いしていた父だから、父は魔法に疎いと思っていた、のに。身体が、全く動かない。不意に頭上に現れた父の、酷薄な笑みを、ダンは悔しさと共に見つめるほか、無かった。

 その時!

「ダン!」

 聞き知った声と共に、身体の束縛が解ける。

 アキの細い背が、ダンの前で揺れていた。

「約束が違います、陛下っ! 止めてくださいっ!」

「それはできぬ」

 冷たい声が、ダンの耳を叩く。

 頽れたアキの身体を抱き締めると、ダンは一息で、現世に戻る呪文を唱えた。

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