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 低い木々が作る陰に身を潜め、機会を待つ。

 ここでは今は夏だから、夜明け前の、空気が熱くならないうちにこの中庭を散歩するのが、この国を統べるあの王の日課。あいつのせいで王には近づくことすらできないが、魔法で具現化したこの必中の魔法矢があれば。右腕に現れている、半ば透明のボウガンに、ダンは息を吐くことなく微笑んだ。

 ボウガンにセットされている、これも魔法で具現化した矢には、ダンが試行錯誤の上で調合した、現在ダンが生きている世界の毒が塗ってある。解毒剤も治療法も、この世界には無い毒薬。どこから飛ばしても軌跡を変えて狙った場所に当たるこの魔法矢が、あの王のどこかに当たれば、あの憎き王は死ぬ。たとえあいつが、あらん限りの魔法を駆使してあの王を守っていたとしても。女の子にしか見えない丸顔が脳裏を過ぎり、ダンは無意識に首を横に振った。これまでさんざん、あいつは俺の裏をかき、俺の邪魔をした。しかし今日こそ、俺を殺した、あの憎い王の命を。

 ダンが唇を噛みしめた正にその時、大柄な影が、視界の端を横切る。少し、遠いか? いや、この必中の魔法矢なら、……いける! 確信と共に、ダンは右腕のボウガンを構えた。この距離なら、あいつが気付く前に魔法矢をあの王の身体に当てることができる。

 だが。

 矢が弓を離れる前に、視界が揺らぐ。

「なっ!」

 戸惑う声が響いたのは、弱く寒い夕刻の光が踊る、四角四面の空間。

「くそっ!」

 まただ。また、あいつに邪魔された。丸顔に浮かぶ微笑みを消すために、目の前の、広い机の分厚い天板を強く殴る。その衝撃で少しだけ浮いた、手描きしたボウガンの絵が映る色褪せたノートを、ダンは叩くように、化学実験室の大きな机から落とした。

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