暗躍
「ユースリッド様がおっしゃっていたポーションを手に入れましたよ? これでよろしかったのですか?」
飴細工のおじさんがユースリッドの館前にいる兵士へとポーションを渡す。
しかし、兵士は渋い顔をしていた。
「これは普通のポーションだな。これは買い取れないな。本当に噂の少年から手に入れたのか?」
「あぁ、間違いないはずだ! 王女様と一緒にいたんだぞ?」
「それなら一応買い取っておいた方が良いか? わかった、銀貨一枚なら買い取ってやろう」
銀貨一枚……元々は金貨十枚と交換してくれるという約束だったはずだ。それなのに足元見やがって……!
「もういい!」
兵士のその態度に腹を立てた飴細工のおじさんはポーションを渡すことなく元の屋台へと戻っていった。
ただ、このおじさんが持っていたポーションは見た目は同じに見えるがシィルの何でも治すエリクサーだったのだが、最後まで兵士の人らは気づくことがなかった。
◇
シィル達は更に祭を見て回った。
ただ、シィルの隣にはリウとマリナが陣取って歩きにくそうにしながら先に進んでいた。
そして、しばらく時間が経ったときにマリナが思い出したかのように呟く。
「そろそろ私の演説の時間です。もちろんシィルさん達も見に来てくれますよね?」
心配そうに尋ねてくる。ただシィル達は当然見に行くつもりだったのですぐに頷く。
「うん、せっかくだから見に行かせてもらうよ」
ただ、そういったシィルの側にリンダが近づいてきて彼だけに聞こえる声で注意を促してきた。
「気をつけろよ? やつは絶対にお前のことを狙ってくるからな」
軽く考えていたシィルを引き締めさせるためにした注意だが、彼は笑みを見せてくる。
「大丈夫だよ。さすがに演説の最中は警備の人たちがたくさんいるしここにはアランさん達もいるんだよ? 油断さえしなければここより安全な場所はないよ」
その言葉を聞いたアランは少し気合いを入れて前にも増して周囲を警戒し始めた。
ただ、それだけじゃ不十分だと感じたリンダは盗賊だった経験を生かし、怪しげな気配がないかを調べ始める。
するとやはりこのタイミングを狙っているのか複数人、怪しそうな気配を見つける。
しかし、それをシィルに伝えても仕方ない。彼は周りを警戒してもらうくらいで十分だろう。彼の真骨頂は別のところにあるわけだし。
そう思い、リンダはアランのそばによる。
ただ、アランはリンダのことを警戒して一歩後ろに下がり距離を空ける。
「……大事な話だ」
少し呆れながらリンダは小声で言う。
するとさすがにその様子がいつもと違うと感じたようでアランも真剣な顔つきに変わり、リンダの話を聞いてくれる。
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タイトル
『大賢者は休みたい ~最強の賢者は転生しても頼られる~』
あらすじ
『最強の大賢者マグナスはたくさんの依頼に追われ、慌ただしい毎日を過ごしていた。
休みも取れず心身ともに疲れ果て、そのまま倒れるように眠りにつく。するとそこは自分の知らない場所だった。
つまり誰も自分ことを知らないこの世界……。
「よし、この世界ならゆったりと過ごせそうだ!」
それでも彼の力に気づき、取り入ろうとする人々は現れる。
しかしマグナスはそれらを躱し、全力でぐうたら生活を送ろうと決意する――。』




