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 シィルがポーションを数本作っているうちに赤い星のメンバーがウルフを倒してしまった。

 真っ先にウルフキングを倒したことによって、今まで統制が取れていたウルフたちが困惑し、ろくに動けなくなっていたことも大きいだろう。

 それでもやはり一番の要因は彼らの強さであった。



「ありがとうございます。本当に助かりました」



 最後のウルフを倒し終えた彼らにシィルはお礼を言いにいく。

 すると剣士の人の足に小さな切り傷があるのに気づく。



「大丈夫ですか、それ?」

「あぁ、こんなの怪我のうちに入らないよ!」



 剣士の人は右手で剣を仕舞った上で、傷口を右手で実際に触る。その上で足を動かして無事をアピールする。

 ただ、助けてもらったのに何もしないわけにはいかないよね。……そうだ、ちょうど作りたてのポーションがあるじゃないか。

 シィルは手に持っていたポーションを赤い星の三人に渡す。



「普通のポーションしかないですけど、ぜひ受け取ってください」

「そうだな、ありがたく受け取らせてもらおう」



 それを受け取った三人はライヘンの下へと向かっていった。




 ◇◇◇




「これで異常は治ったの……ですよね?」



 シィルはポーションで傷が治ったリエットに尋ねてみた。



「まだ調査が済んでないからなんとも言えないけど、明らかに異常な魔物は倒してくれたからね。当面は大丈夫だと思うよ」



 それを聞いてシィルは少しホッとする。これで安心してポーション作りができるなと。



「でもしばらくは一人でここに来るのは控えてね。まだ危険があるかもしれないから」



 それもそうだよね。安全だとわかるまでは誰かと一緒に来るしかないか……。

 大きなため息を吐くシィル。するとそれを見ていたエリーがシィルの手を力強く握りながら言ってくる。



「そ、それなら私と一緒に来ましょう! こう見えても私は魔法を使えますので役に立てますよ!」



 えっ、エリーって魔法使えたんだ!?

 初めてあった時が病気になっていた時なのですっかり病弱のイメージが付いていたけど、貴族ということを考えると魔法の英才教育とかを受けててもおかしくないよね?

 シィルはうんうんと頷く。



「それじゃあお願いしようかな……」



 考えながら言うと、その答えを聞いたエリーはパッと花開いたかのように満面の笑みを向けてくれる。



「はいっ、よろしくお願いします」



 エリーが頭を下げるとリエットが間を割って入り、拗ねるように言ってくる。



「そ、それなら私も……」



 エリーだけだと心配に思ったのか、リエットも一緒に来ると言ってくれる。



「でもリエットはギルドの仕事があるでしょ……」



 シィルの言葉にリエットは地面に手をついて落ち込む。

 朝はシィルが素材採取に行くくらいから夜は遅くまで……ギルド前で彼女の姿を見なかった時はなかった。



「あれっ? でもリエットの仕事ってギルドの受付だよね? どうしていつもギルドの前に……」

「さぁ、早くギルドに戻って仕事しないとね」



 リエットはシィルの質問を聞こえなかった風を装って口笛を吹きながら街へ向かって歩いて行った。



「ちょっと待ってよ! まだ話は……」



 シィルとエリーはリエットを追いかけていった。




 ◇◇◇




 街へと帰ってきたら赤い星と言われた三人がギルド前でシィルを見つけ近付いてきた。



「急に呼んでごめんね。僕はアインヘッド・ラグズリー。アインと呼んでくれ」



 赤髪の剣士の人が手を差し伸べてくる。シィルも同じように手を差し出し握手をする。

 ただ、どうして自分が呼び出されたのかだけがわからなかった。



「俺はニーグ・ミエリアだ。ニーグと呼んでくれ」



 今度は槍の人が真っ白な歯を見せながらはにかんでくる。

 すると側にいた女性たちがうっとりとしてニーグを眺めていた。



「今度は私……。ミリシア・テトリー……」



 必要なことだけ話してあとは沈黙を保つミリシア。



「僕はシィルと言います。この街でポーションを売っています……」

「あぁ、それは聞いた。ミグドランドからお前の護衛を頼まれたからな」



 えっ? どうして?

 シィルは何故自分に護衛をつけるのか不思議に感じた。

 ただ、最近エリーが側にいることが多くなったことを考えるとシィルを……というよりシィルとエリー……もっといえばエリーの護衛を頼んだのだろう。そう結論付けた。



「ポーション売りだとそこまで稼げないだろう。そこでだ。シィル、君は僕たちのパーティに【入る気は】ないか?」



 シィルの目をまっすぐ見ながらアインが告げる。

 ただ、その表情から読み取るにそれは嘘偽りではなく本心で言っているのだろう。


 しがないポーション売りの自分をどうして?

 確かこの人たちはSランク……世界最高ランクの冒険者パーティだ。そんな中にシィルが入ったとしても邪魔になる気しかしない。それにSランク冒険者が受ける依頼となると危険なものが多いだろう。

 うん、そんな危険は犯したくないかも……。今回みたいにそれをしないと生活できない……とかがない限りは。

 少し悩んだシィルは申し訳なさそうに頭を下げる。



「すみません。ありがたい話ですが、断らせていただきます」

「やっぱりそうだよね……。うん、わかってたよ」



 …………? どういうことだろう?

 自分とこの人たちは初対面のはず……。それなのに断ることがわかってたなんてなんでだろう?

 シィルは首を傾げるが、アインはそれ以上教えてくれることはなかった。

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