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ポーションの疑惑

「えっ、うそ……だって……」



 困惑するシィル。

 今までずっと普通のポーションだと言い続けてきた。

 ただ、それでもいくつかの思い当たる節はあった。


 定期的に買ってくれる人たち。

 自分の周りに集まる人たち。

 そして、今回のように狙われること……。


 それら一つ一つは些細なことかもしれないが、それら全てが重なり、なおかつ奴隷であるリンダからはっきりと言われるとシィルもそのことを考えざるを得なかった。


 ただ、自分が使っている素材は間違いなく普通のポーションのものであった。

 それは自分にポーションの作り方を教えてくれたおじさんのことを考えてもほぼ間違いないだろう。

 実際にそれをみたマリナも何もいってこなかったわけだし。


 と、とにかく、一度ポーションを作ってみよう……。そうすれば何かわかるはずだ……。


 あまりに突然のことでろくに頭の働いていないシィルはなるべく音を立てないようにしながらポーションを作っていく。


 いつも通りならのこり十本は作れるくらいの材料……。

 しかも、ポーション作りを教わってから毎日同じ作り方ばかりを繰り返してきた。


 寸分の狂いなく同じものを作れてきた自信もある。

 今の浮ついた気持ちでもそれは変わらないはず……。


 早速ポーションを作り始めるシィル。

 そして、あっさりと作り上げることができる。



「ほ、ほらっ、これは普通のポーションですよ」



 完成したものをリンダの目の前に見せつける。

 すると何を思いついたのか、リンダが突然ナイフを手に取るとそれを自分の腕に突き立てた。



「これを見てもまだそんなことが言えるのか?」



 リンダが少し苦しそうに血が溢れ出る腕を押さえながらシィルに近づいてくる。

 その様子を慌てふためきながら見ていたシィルはリンダに手に持っていたポーションを取られてしまう。


 そして、それを一気に飲み干してくる。

 するとリンダの傷がちょっとずつ治っていく。


 しかし、リンダの傷は完全に治りきらずに血は依然として流れたままだった。



「な、なんでだ?」



 困惑するリンダ。しかし、次第に抜ける血が増えていくと言葉数が減っていく。




 ◇◇◇




 動揺していたシィルに包帯を巻かれ、その後に騒ぎで起きてしまったリウの回復魔法でなんとか血は止まってくれた。



「もう、こんな遅い時間に何やってるの!」



 睡眠を邪魔されたリウはすこし不機嫌そうにシィル達を怒る。



「それで何をしていたの?」



 腕を組みながらリウが聞いてくる。

 シィルは先ほどあったことをリウに説明すると途端にリウの顔に陰りが見える。



「そ、それでお兄ちゃんは?」

「うん、単なる勘違いだってわかったよ。やっぱり僕はただのポーションしか作れなかったよ」



 乾いた笑みを浮かべるシィルだが、リウの表情は暗いままであった。



「お、お兄ちゃん、もう一度ポーションを作ってくれる?」



 あまりにリウが心配そうな顔を見せるものだからシィルは再びポーションを作り始める。


 そして、普通のポーションを作り上げる。



「うん、出来たよ!」



 それをリウに差しだすシィル。

 しかし、そのポーションを見たリウの顔は浮かばれなかった。



「これ、いつもの作り方をしたんだよね?」



 何を言っているんだろう?

 シィルは首を傾げながら一度頷いた。



「一応これ、リンダさん飲んでおいてください。回復魔法では足りないかもしれないですから」



 そう言いながらリウは手に持っていたポーションをリンダに渡す。



「あ、あぁ……」



 自分の想像が外れたリンダは受け取ったポーションとシィルの顔を交互に眺めていた。

 そして、ポーションをゆっくりと口にしていく……。


 するとリンダは大きく目を見開いて、からになった瓶と包帯の巻かれた腕を交互に見返していた。

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