ユースリッドの動向
貴族街にある大きな館でマグニール・ユースリッドは一人テーブルに左手をつけて考えていた。
そして、己が動かない右手を見ながら大きなため息を吐く。
「はぁ……、やっぱりただの盗賊くずれに噂のポーション売りを探させるのは失敗だったな……。後処理が楽だからいい案だと思ったのだがな」
もう一度大きなため息を吐く。
あの盗賊に関してはもう処理をしてしまった。今頃慰み者にでもなっているであろう。
すると、部屋の扉が軽く叩かれる。
「マグニール様、今はお時間よろしいでしょうか?
どうやらノックをしてきたのは執事のセドリだった。
「あぁ、入れ」
言葉短に伝えるとゆっくりと扉が開き、きちんと整えられた執事服を着込んだセドリともうひとり、ボロボロの服と白いエプロンをつけた恰幅のよい男がいた。
「こちらの男性がマグニール様にお伝えしたいことがあるそうです」
「ふむ、なんだ? 申してみよ」
マグニールは顔をその男の方へと向ける。
しかし、その目ではしっかりと男の人柄を調べていた。
へこへこと頭を下げる態度、権力には弱く、逆に力のないものには強く当たるタイプだな。
わざわざここまで何かを伝えにくる……つまり、その結果の恩賞を求めているんだな。
そこまで把握した後に左手を軽く動かしてセドリに合図を送っておく。
すると男には見えないように軽く頭を下げてくるセドリ。
これでいざという時の対策は万全だろう。
そこまでの動作をした後に男の話に耳を傾ける。
「ユースリッド様の御耳に入れときたい情報がございまして尋ねさせてもらいました」
「前置きはよい。本題に入れ」
「はっ!」
男がゆっくりとマグニールへ近づいてくる。
見た目からして襲ってくることはないだろうが、あえてそう言った見た目を取りながら襲いかかってくるような奴もいた。
念を入れてマグニールは左手を剣に添える。
いつでも抜けるような体勢をしておく。
しかし、男は途中で止まると周りに誰もいないことを確認すると小声で告げてくる。
「実は以前ユースリッド様がお探しになられてましたポーション売りですが、この町に来ていますよ」
「な、なにっ!?」
驚きのあまり急に立ち上がったことで座っていた椅子がそのまま倒れてしまう。
しかし、そんなこと御構い無しにマグニールは男へと詰め寄る。
「そ、それは本当なのか?」
「は、はい、私の店に一度足を運んで来ましたので間違い無いかと……。背の低い少年でございました。名前はシィル……あとは二人の連れがいます。一人は少女でもう一人は……」
そこで口をつぐむ男。
最後の一人の情報は言いにくいのか?
とにかくこれだけの情報が仕入れられたことはマグニールにとって朗報以外他はなかった。
少し頬を緩め、笑みを浮かべるマグニール。
「よく伝えてくれた。この情報が事実であることを確認でき次第、主には謝礼を致すとしよう」
「ははーっ、ありがとうございます」
まるで地面に頭を擦り付けそうなくらい深々と頭を下げる男。
そして、シィルの情報を仕入れられたことを細く笑むマグニール。
一度このものの店に参ったということは再び訪れる可能性も高いわけだな。
それならそこで待ち伏せをしておけば……、いや、まずは情報を仕入れてから動くか。
噂が事実ならこんな少年たち三人で出歩いているなんておかしい。
それこそSランク冒険者が複数人で守っていてもおかしくないはずだ。
もしかして同行者がSランク冒険者?
いやいや、それならこの男がそのことを告げているはず。
つまり、少年と同行している人物は有名な人物ではないということだ。
なら、隠れて見張っている可能性が高い。
接触するのはまずそちらの排除が終わってからだな。
出てくるのは一体どんな人物なのか……。
マグニールは次の一手を打つための手段を考え始めるのだった。
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