王都到着
「そういえばアランさんはどうしてここに?」
いてくれたおかげで助かったのだが、町からの距離は結構離れている。
また、すぐ近くにいたならすぐに出てきてくれたはず。
まるで隠れていたかのように微妙な位置を保つ理由……それは?
「えっと……」
困った顔をするアラン。
やはり別の人にはいえない理由。
シィルはその理由がわかる気がした。
「そうですよね。王女様の旅ですもんね。表に出てはこないで隠れて見守る人がいてもおかしくないですよね」
しかし、アランは腑に落ちない顔をしていた。
ただ、その時に横にいたミリシアがアランの脇を突いてくる。
「頷きなさい。どうせ本当のことを言っても信じてもらえないんだから……」
「でも、本当はシィルくんを守ってくれって……」
「だからこそよ。本人に気づかれてない方が動きやすいでしょ」
コソコソと二人で話した後にアランはシィルに向かって頷く。
「あ、あぁ、そうだよ。でもマリナ様には内緒にね」
ぎこちない笑みを向けてくるアラン。
やはりそうだったのか……。Sランク冒険者だもんね。護衛とかにはちょうどうってつけだ。
シィルは小さく頷くと「マリナ様には内緒にするよ」と口に出す。
「私に何を内緒にするのですか?」
「もちろんここにアランたちが……ってマリナ様!? な、なんでもないですよ」
後ろを振り向くとそこにはマリナがいた。
シィルは慌てふためき、とりあえずアランたちのことをごまかそうとする。
それでもマリナは彼らの姿を見るとそれだけで今の状況を理解した。
「ご苦労様です。これからもお願いします」
軽くお辞儀をするとシィルの腕を取り、そのまま馬車の方へと連れて行く。
やっぱりマリナも隠れた護衛がいることくらいわかっていたのかもしれない。
そして、そんなシィルたちを見てアランは微笑みながら小さく手を振っていた。
◇◇◇
それからは何事もなく王都までたどり着くことができた。
本当にあのウルフたちは一体なんだったのだろう?
そんな疑問すら浮かぶが、それ以上に目の前の光景にシィルたちは目を奪われていた。
まっすぐ目の前には大きく立ちつくした石造りの城。
そして、その周りを囲むように沢山の家が立ち並んでいた。
その道には沢山の人が行き来し、かなり活気があることは見て取れる。
「近々行われるお祭りのおかげで町の活気はいつもより大きいですね」
マリナが説明してくれる。
そうか……そうだよね……。いつもこんなに人がいるわけじゃないよね……。
「でも、普段もこのくらいの人がいますけどね」
その言葉はシィルを驚かせた。
「えっと……、普段からこんなに? お祭りの前だからじゃなくて?」
「えぇ、活気なのはお店の方で人はこのくらいですよ」
これだけの場所でポーションを売ったら一体どれほど売れるのだろう……。
試して見たい気持ちになりながらも数に限りがあるからとグッと堪える。
「それじゃあ私についてきてください。宿へご案内しますね」
マリナに案内され、宿へと向かって行く。
◇◇◇
「えっと……、ここが宿?」
シィルたちが連れてこられたのはどう見てもお城の前であった。
「えぇ、客間が空いていますからそこに先に泊まってください」
そう言って案内された先はとても広い客間であった。
シィルが見たこともないような大きなベッドが一つ置かれたとてつもなく広い部屋……。
これだけの広さがあれば三人で眠るにも問題ないだろう。
「それじゃあ後二人は別の部屋に案内しますね」
「えっ、ここに三人じゃないの?」
「いえ、ここはシィルさんだけの部屋ですよ?」
さも当然とでも言いたげなマリナ。
うーん、さすがにこれを一人で使えと言われても困るんだけどなぁ……。
シィルは少し苦笑しながら部屋から出て行くマリナたちを見送っていった。
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