追跡
シィルたちに逃げられて以来、リンダは見つからないように彼を追跡していた。
時折ちらりとこちらを見られてどきりとすることもあるが、別に何かするわけでもないし、何か少しでもエリーというポーション売りの情報が仕入れられたらと思っていたのだが、何一つ入手することができなかった。
あまりにモタモタしていると貴族のユースリッドが追っ手を差し向けてくるかもしれない。
そうなると自分は奴隷落ちさせられるだろう。
もう一度力押しを……。いや、護衛がついているならまず無理だ。
何か罠を……。さすがに町の中で罠を張るのは難しい。
いつものように街道沿いに罠を張って隠れる……なんてことも一人じゃ厳しい上に、エリーはこの町を離れることがほとんどなかった。
「うーん、どうすればいいんだ?」
悩むリンダ。しかしいい案は思い浮かばず、ただ呻いているだけだった。
◇◇◇
次の日からはつきっきりでエリーの監視を始めるリンダ。
しかし、彼女はなかなかポーションを売り始めようとはしない。
もしかすると自分が監視をしているからか?
なるべく気配を消しているつもりだが、貴族の護衛相手では気づかれてしまうのかもしれない。
「ちっ、せめてポーションの秘密だけでも持ち帰って報告しないとな」
町の道具屋で買ったポーションはいたって普通のポーションで特段変わった効果もなかった。
やはりあのエリーが売っているポーション……それを手に入れないとダメだな。
するとちょうど街道をポーション片手に歩いてくるおじさんを発見する。鼻歌交じりにエリーからポーションを買えて喜んでいた。
効果を調べるだけなら何も直接買う必要はないか……。
そのおじさんを見て微笑むリンダ。さりげなくその後をついて行く。
◇◇◇
おじさんがポーションや荷物を置いて魔物を討伐に行った間にリンダはそのポーションを盗み出していた。
以前の彼女なら荷物の方も盗んでいたのだが、余計な波風は立てたくないのでそちらには手をつけずにポーションだけを盗む。
さて、ポーションの効果を確かめるには傷がないとな。
少し歯を固く噛むとリンダは自らの左腕を前に出し、右手で持ったナイフで切りつける。
凄いポーション……とのことなので普通のポーションでは治りきらない、少し深めの傷をつける。
すぐさま盗んだポーションを飲み始めるリンダ。
するとその腕につけたばかりの傷はもちろん、他にも色々あった古傷なども全て治っていくではないか。
それを直接肌で感じ取ったリンダは小さく微笑む。
「くっくっくっ、なんだそういうことか。ポーションと言ってはいるが、実際は上級ポーションなんだな」
実際は上級ポーションでは古傷は治らないのだが、上級ポーションを飲んだことのないリンダはそのくらいの効果があると感じ取った。
それと同時にこれの実物をユースリッドに渡せばお役御免だろうと思うと笑みが止まらなくなっていた。
◇◇◇
翌日リンダは初めてエリーがポーションを売っているところを発見する。
「ポーション、ポーションはいりませんかー?」
その隣にはシィルの姿もあった。彼は荷物持ちなのだろうか? 売れていくポーションをどんどんとエリーに渡す役目をしていた。
さらにその隣にはリウやケリーの姿もあった。
ただ、シィルの顔は少し赤く染まっており、息も荒い。
「お兄ちゃん、あまり無茶しないで!」
「おう、あとは俺たちに任せて帰って寝てくれよ!」
シィルのことを心配する二人。
しかし、彼はそれでも販売の手伝いをしていた。
おそらくそうでもしないと食べていけないほど貧窮しているのだろう。
自分にもそう言った経験があるリンダは頷きながら、ポーションを販売してるエリーへと近づいて行く。




