リウの決意
「えっと……、俺金なんてほとんど払えないぞ?」
ケリーが心配そうに聞いてくる。
「うん、それは気にしなくていいよ」
「いえ、そこは気にしてください! 払っていない私の言うことじゃないですけど……いえ、お兄ちゃんの護衛でお金が入りますのでそれでちゃんと払いますから……」
思わずリウが突っ込んでくる。
いつものリウらしからぬ大きな声で。
そう言っても無理にお金を取らないと生活できていけないわけじゃないし――。
シィルがそんなことを思っているとリウがさらにたたみかける。
「お兄ちゃんはそういうことに無頓着なんだよ! ポーションだって……」
そこでしまったといった感じに口をつぐむ。
「えっと……、僕のポーションがどうかしたの?」
シィルが不思議そうに聞き返す。
「えっと……、その……、あの……」
なんて答えたらいいか少し返答に困るリウ。
すると代わりにケリーが話してくる。
「兄ちゃんのポーションはすごいんだ! だって俺全く作れなかったぞ?」
「それはまだ慣れていないからだよ……」
あまりにケリーが自分のことを崇拝してくるのでシィルはどこか胸のあたりがむずがゆくなってくる。
「とりあえず知らない仲じゃないんだし、宿が見つかるまではゆっくりしていくといいよ。お金とかは返せるときに返せるだけ……でいいから」
「おう、俺は兄ちゃんがいいならそれでいいけど……」
ケリーがチラッとリウのことを見る。
するとリウが大きなため息を吐く。
「はぁ……、わかったよ。ただ、人がよすぎるとたくさんの人につけ込まれますよ……」
「そんなことないよ……。この町の人はいい人ばかりだし……」
シィルがそう言うとさらにリウが大きなため息を吐いた。
そして、そのあとにグッと拳を作り、シィルに聞こえない小声で気合いを入れていた。
「お兄ちゃんが気にしないなら私がお兄ちゃんを守らないと!」
一人で気合いを入れているリウを見てシィルは首を傾げた。
◇◇◇
早速ケリーを家まで案内する。
シィルの家を前にするとケリーは口をぽっかりと開けてゆっくりとした動作で家を指さした後、シィルの顔を見る。
「えっと……家って……これじゃないよな?」
半信半疑に聞いてくる。
「これだよ」
シィルが頷くとケリーはリウを手招きする。
そして、小声で質問する。
「えっと、これ兄ちゃんの嘘じゃないよな?」
「うん、ここは間違いなくお兄ちゃんの家だよ」
「う、嘘だろ? 兄ちゃんって貴族様だったのか?」
「それが違うみたいだよ。ただのポーション売りだって言い張っているけどね」
ケリーはどういうことかよくわからずに頭にはてなマークを浮かべていた。
「今はわからなくていいよ。ただ、お兄ちゃんのことは他の人はもちろん、お兄ちゃんにも内緒だからね」
「お、おう……、注意するぜ!」
とんでもないところにきてしまったのかもとケリーは少し冷や汗を流す。
「それじゃあ中に入るよ」
シィルが扉を開き中へ入っていく。
それに続くようにリウとケリーも続いていく。
◇◇◇
「うおぉ! 中もすげー!」
驚きの声をあげるケリーを見てシィルも少しいい気持ちになる。
やはり自分の家を褒められて喜ばない人はいないだろう。
「まずは荷物を置きたいよね? 部屋に案内するよ」
シィルは階段を上がっていき、二階の部屋を案内する。
「まず、一番奥は僕の部屋、その手前はリウの部屋だよ。で一番手前にある部屋は客間として置いておくから残り四部屋……好きなところに入っていいよ」
ケリーは空いている部屋一つ一つ眺めていく。
しかし、結局はリウの隣の部屋を選んでいた。
「中にあるのも好きに使っていいからね」
「ほ、本当にいいのか? 今すぐ払える金はないんだぞ?」
部屋には宿のものよりも遙かにいいベッドやテーブルなどが置かれており、部屋の広さも十分すぎるほどあった。
「うん、どうせ僕とリウ以外に誰もいないからね」
「一応私も大丈夫と判断したから……お兄ちゃんだまされやすいし」
「そ、そんなことないと思うけどな……」
慌てるシィルを見てリウはため息を吐いた。
「例えばお兄ちゃんのポーションが実はエリクサーだと言ったら信じる?」
リウは軽く質問をする。
しかし、視線は鋭く、手はシィルからは見えないように後ろに隠しながらも嘘を見つける光魔法を使う。
「そんなことある訳ないよ。僕はただのポーションを作っているだけなんだから……」
魔法自体に変化はない。
そのことがリウにさらに大きなため息を吐かせることとなる。
21,000ポイント達成!!
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次回更新時間は16日18時予定です。
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