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リンダ対策

　町の中央ではいつもと変わらない賑わいを見せていた。

「リウちゃん、今日はうちで働いていかないのか？」

「うん、今日はお兄ちゃんの護衛だよ！」

「おい、リウちゃんは次は俺の店の手伝いだろ？」

「ごめんなさい……、お兄ちゃんは特別なの」

　全然働き口が見つからないんだと思っていたが、意外とリウは町では人気だった。

　ただ、決まった場所ではなくお店を転々としているようでそれが本人は気に入らないのかも……。

　ここまで人気なら好きな場所に選びたい放題なのにな……。

　そんなことを思いながらまずはギルドへと向かう。

　◇◇◇

　ギルドの前にはいつものごとくリエットの姿があった。

　こちらはいつもと違って横にリウがいるので驚いたようだが。

「へぇ、二人でいるの珍しいね」

　家では一緒だけどあまり外で一緒にいることはなかったかな。

「うん、ちょうどさっき会ってね」

「お兄ちゃんに悪い虫がつきそうだったし退治したの」

　にっこりと微笑むリウ。

　するとリエットもよくやったと言わんばかりにサムズアップをしてくる。

「ところでその悪い虫ってどんな人だったの？」

「……んっとね、赤い髪のお姉さんだったよ……。なんか眼帯しててお兄ちゃんに詰め寄ってたの」

「あぁ、あの人か……。なんかポーション売りを探していたから怪しい感じだったんだよね……。やっぱりあの時答えなくて正解だったよ……」

　うんうんと頷くリエット。

　彼女たち二人はわかっているようだが、話に置いていかれていたシィルはなんのことかわからずにポカンとしていた。

「えっと……、それはどういう――？」

「とりあえずユーグリッド様に報告したほうがいいね。さぁ、行こう！」

　リエットが受付から出てくるとシィルとリウの手を取るとそのままギルドを飛び出していく。

「リエット、受付は大丈夫なの！？」

「うん、シィルくんの安全より大切なものはないよ！」

　それでいいのかな……。

　シィルは少し不安になりながらもリエットに引きずられる形でそのまま貴族街の方へと向かう。

　◇◇◇

　ユーグリッド邸に着くとそのまま客間へと案内された。

　しかし、さすがに貴族の家に慣れないリエットはその場で汗水垂らしながら、ガチガチに緊張していた。

　ここまで連れてきたのはリエットなのに……。

　そんなことを思いながらシィルはミグドランドが来るのを待っていた。

　すると彼と一緒にエリーもやってきた。

「シィルくん、今日はどういった用かな？」

「えっと、今日は僕ではなく……」

　ミグドランドに声をかけられたシィルはリエットに話を振る。

　すると顔を赤らめて少し慌てふためいていた。しかし、大きく深呼吸をしたあとリエットは話し始める。

「はい、実はですね……」

　リエットが赤髪の女性のことを話し始める。

　そこでようやくシィルは彼女が狙っていたのが自分だったということに気がついた。

「ふむ、それは少しまずい状況だな。シィルくんには少し護衛の数を……いや、数日間アランたちを専属で雇っておくか。ただ、君一人にするにはまずそうだな」

「……そ、それなら、わ、私が……」

　たくさん人がいるからか、緊張した様子のリウがそれでもミグドランドに手を挙げて言う。

「おや、君は？」

「わ、私はリウと言います……。その……、シィルさんの家に……置いてもらって……ひっ！？」

　なんとか言葉を紡いでいくリウ。

　しかし、その途中、シィルの家に置いてもらってると言ったところで突然エリーが立ち上がる。

「あっ、ご、ごめんなさい。気にせず続けてください」

　笑顔で席に戻るエリー。

　しかし、リウはがたがたと震え、それ以上口を出すことができなかった。

「でも一緒に住んでいるなら適任か……。しばらくの間、なるべくシィルくんのそばに居てくれるか？　あまり多くはないかもしれないが一応給金も払おう……」

　給金と聞くとリウは顔を上げる。

　そして、必死に首を縦に振っていた。

「お父様、それなら私も……」

「いや、エリーには別の役目があるだろう？　今回だけ(・・)は我慢しなさい」

　珍しくエリーをたしなめるミグドランド。

　すると少しハッとなるエリー。

　がっかりした様子を浮かべていた。