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リウとリンダ

 あの後もエリーはどうして襲われていたのか教えてはくれなかった。

 それでも考えられる理由ならある。

 エリーは貴族だし、あの容姿だ。過去に幾度となくあんなふうに襲われることもあっただろう。


 エリーならまず護衛がついているだろうし、大事に至ることはなかっただろうけど、怖いなぁ……。


 だがまさか普通のポーション売りの自分には声をかけられることはないだろうとタカをくくっていた。




 ◇◇◇




「よう、あんたはあの時の少年じゃないか!」



 次の日に町へ出るとシィルは突然昨日の赤髪の女性、リンダに声をかけられる。



「は、はいっ!? ど、どうされましたか?」



 ガチガチに緊張し、上ずった声を上げるシィルにリンダは大きな口を開けて笑う。



「あははっ、別にあんたをとって食おうなんて思ってねーよ! それよりあんたに聞きたいことがあるんだ……」



 グッとリンダが覗き込んでくるのでシィルは思わず後ずさった。

 しかし、ジワリジワリと追い詰められて行き、気がつくと後ろは建物の壁という逃げ場のない状態になっていた。



「ぼ、僕に聞きたいこととは?」



 全身に冷や汗を流しながら確認する。



「そんな怖がらなくていいんだぞ! あたいはとある貴族の命でここに来てるんだ。この町のあることについて調べて欲しいとな」



 それが嘘か本当かはシィルには判断がつかない。

 それがどちらにせよ、昨日エリーの胸ぐらを掴んでいた事実だけは変わらないので、シィルは警戒を解かなかった。



「ふぅ……、まぁそれでいい。それよりあたいが聞きたいのはあのエリーという少女のことだ。どんなポーション売りなんだ?」



 もしかして貴族の人がポーション売りをしたらいけなかったのだろうか?

 いや、そんなことないはずだ。そのことはすでにシィルも聞いていたのだから……。

 その質問の意図を考えながらシィルはエリーに一番被害がない回答を考え、口に出す。



「えっと、そのポーションですけど、僕――」

「あっ、お兄ちゃん! こっち来て!」



 突然呼ばれたかと思うと手を引っ張られる。

 誰がと思ってそちらを振り向くとそこにいたのはリウであった。



「ちょっとまちな! 今はあたいが質問してたんだ!」

「……お兄ちゃんいじめようとするなら私が相手になるの」



 視線をぶつけ合うリンダとリウ。

 しかし、このままじゃ埒があかないと考えたのか、リンダは両手を広げあきれ顔になりながら背を向けてくる。



「こんなガキとやり合ってもしかねーよな。何かわかったらあたいに知らせてくれよ!」

「……知らせないの!」



 背を向けたリンダは手を上げて歩き去って行った。




◇◇◇




「お兄ちゃん、大丈夫だった?」



 リンダが去った後、リウが心配そうに聞いてくる。



「うん、なにかされたわけじゃないからね」

「でも、あの人……なんか怪しい雰囲気があったの。気をつけた方がいいの」



 もう去ってしまって誰もいない方を見ながらリウがつぶやく。

 やっぱりエリーを襲っていた人物だ、警戒してもしたりないだろう。



「お兄ちゃんが心配だから今日はリウが一緒に回るの」



 グッと気合いを入れてくるリウ。



「でも、リウもすることがあるでしょ? 僕なら一人でも――」

「お兄ちゃんだけだと危ないの! だから私に任せて……。お礼なら冒険者ギルドで最近販売し始めたフルーツパフェでいいからね」



さりげなく自分が欲しいものを言ってくる。

それを聞いたシィルは苦笑を浮かべる。



「わかったよ。それじゃあ今日はお願いできるかな? でお昼ご飯はギルドで食べよう」

「うんっ!!」



嬉しそうに大きく頷くリウ。

ずっと働ける場所を探していたみたいだし、たまにはこうゆっくりとした日もいいよね。

あの女性の情報も仕入れておくべきかな?


どういう人なのか……なぜエリーを狙っているのか……わかる人がいるといいんだけどな。


 ただ、今までに見たことない人……ということを考えるとあまり期待はできないだろうな。

 乾いた笑みを浮かべながら、シィルは町の中心へと向かって行く。

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