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ポーション売りの少年 〜彼のポーションは実はなんでも治す伝説のエリクサーでした〜  作者: 空野進
第1章第1話 そのポーションはエリクサーでした。
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ポーション作成

 ユーグリッド邸を出たシィルは町の外へ出てポーションを作るための素材を集め始めた。


 ポーションを作るために必要な素材は綺麗な水ととっても臭い薬草と癒しの魔力。


 水はいつも町の西方に位置する森のそばの小川で汲んでいた。

 ここの透き通るような水は飲んでも喉を潤してくれてとっても美味しい。ただ、少しわかりにくい場所にあるために滅多に人は来なかった。


 それをいつものようにポーションの分だけ汲んでおく。


 そして、次に臭い薬草。どこにでも生えているが、ポーション作りに最適なものはなかなかない。

 まずは街の近くの場所から探していく。


 しかし、いつもは午前中にくるので薬草が他の人に採取される前なのだが、今日はすでに昼前……。

 普段はすぐに見つかるポーション作りに最適な薬草がなかなか見つからなかった。


 ポーションの作り方を教えてくれた先生は臭ければ臭いほど……。さらに青々とした色をしていればいるほど、ポーションが作りやすいと言っていた。

 シィルはいつもそれに合うものを使用していた。


 実は、伝説のエリクサーを作るための素材も、これと全く同じものを使用する。


 水の魔力が豊富に備わった透き通る水。

 薬草の中でも特に傷がよく治る独特の臭いを持つもの。

 それらを寸分の狂いなく適量となる量を加え、更にそれを混ぜ合わせる時に魔力を込めるそのタイミングと威力、込める量も間違えてはいけない。


 普通の人ならまず狙って作れるものではない。

 だからこそ、ほとんど生み出されることがない伝説の薬と言われていた。


 しかし、シィルはそれ(伝説)を何食わぬ顔で寸分の狂いもなく作り上げていた。

 この作り方以外でポーションは作れないと思い、毎回同じ要領で……。


 残念ながら、今日は時間をかけてしばらく探したもののシィルは最適な薬草が中々見つからずに少しがっかりしていた。



「一体何をお探しなのでしょうか?」



 突然後ろから声をかけられてシィルは驚き、慌てて振り返る。そこには大きな帽子をかぶったエリーがにっこりと微笑んでいた。


 実に健康的な魅力にあふれた笑顔だが、つい昨日まではポーションで治る程度とはいえ病気だったのだ。あまり無理しては良くないのではとシィルはソワソワとする。そして、聞かずにはいられなかった。



「こ、こんなところまで来られて大丈夫なのですか?」

「えぇ、お父様からもお医者様からも、部屋にこもっているよりは少し歩いた方がいいと言われましたので散歩に……。それで街の中を歩いていましたら、街の外にシィルさんのお姿が見えましたので……来ちゃいました」



 ちょっとしたイタズラがバレたように小さく舌を出すエリー。しかし、やりなれないその仕草にはどこか照れのようなものが混じっており、頬は紅潮していた。


 確かにここなら街中からでも見えるよね。

 可愛い少女にそんな態度を取られてはシィルも自分に気がある訳じゃないとわかりながらも思わず照れてしまう。



「でも、あまり無理をしては良くないのでそろそろ戻られた方がいいですね」



 照れを隠すためにシィルは戻るように促す。するとエリーは少し拗ねて頬を膨らませる。



「私がいるとそんなに迷惑なのですか?」



 怒らせてしまったのかと慌てふためくシィル。すると頬を膨らませていたエリーもその姿を見てクスクスと笑い出す。



「そうですよね。シィルさんはこれからあのポーションを作らないといけないんですもんね。今日は大人しく帰りますね」



 それだけ言うとエリーはクルッとシィルに背を向けてゆっくりと歩いて帰っていった。

 その姿が見えなくなった後、エリーと話せたということだけでシィルは口から笑みがこぼれ、どことなく幸せな気持ちになっていた。



「よし、もっと頑張ろう!」



 シィルはぐっと手に力を入れ、気合を入れて薬草探しを再開する。




◇◇◇




 なんとか目的の薬草を集め終えたシィルはポーションを五本ほど作り上げ、いつものように販売へと向かった。

 さすがにこの時間だともう売れないかもしれないな。

 時間はすでに夕刻。ポーションを使う冒険者たちなんかはすでに宿に帰っていてもおかしくない時間だ。それでもきっと買ってくれる人はいるだろう。



「ポーションはいりませんかー?」



 声を上げ買ってくれる人を探す。しかし、皆シィルの顔は見るものの、すぐに顔を戻し、どこかへ行ってしまう。


 やはり売れ行きは悪そうだな。

 しかし、歩きながら声を上げていく。

 するとギルドの前でため息を吐いて落ち込んでいたリエットの姿を発見する。



「どうしたの?」



 その様子が気になったシィルはリエットの側によって声をかける。するとシィルの顔を見たリエットが目に涙を潤ませて彼に抱きついてくる。



「い、一体な、何があったの?」

「シィルぐーん、やっぱりポーション売ってくれる―?」



 すぐにシィルから離れたリエットはそれでも目に涙を浮かべたまま上目遣いで聞いてくる。



「えっ、それは僕がお願いしたいことだけど良いの?」

「う゛ん、今日は思いのほか重傷者が多くて……ポーションだけじゃ全然追いつかなかったの……」



 涙を拭うとリエットはエプロンのポケットからお金を取り出す。



「はいっ、これお金。本当にありがとう、これからもお願いね」



 ポーションを受け取ったリエットは笑みを浮かべ、手を振ってギルドの中へと入っていった。

 後に残されたシィルは先ほどの出来事を思い出し、顔を真っ赤に染め上げる。

 しかし、自分が頼られていると言うことに嬉しくなり、軽くスキップをしながら残りの薬を売るために先へ進んでいった。

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