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エリーの災難

 ギルド内は朝早くということもあり、人がまばらにしかいなかった。

 その中で空いているテーブルへと向かう。



「それで私に何が聞きたいのかな?」



 向かいにリエットが座ると早速先ほどの質問について聞いてくる。



「うん、リエットは将来の夢とかってあるの?」

「うーん、私はとりあえず生活していくのでいっぱいいっぱいだなー。そんなことまで考えたことないよ」



 乾いた笑みを浮かべるリエット。

 まぁそんなことまで考えられる人はなかなかいないよね。


 実際にシィルも家を貰えるまでは宿代を稼ぐのも結構必死だった。

 ただ、最近はシィルのポーションを求めて色んな人が押し寄せてくる……。


 あれっ? なんでわざわざ自分のポーションを買いに来るんだろう?

 少しだけ不思議に思う。なぜか一度買ってくれた人は結構な割合で常連客となってくれている。

 知り合いだからポーションを買うときはわざわざ自分のところで買ってくれている……ということも考えられる。


 少し腑に落ちないながらも他に考えられることはないのでとりあえず納得しておくことにする。



「お兄ちゃんたち、何話してるの?」



 リエットと話をしていると厨房にいたと思われるマナが声をかけて来る。



「シィルくんにどんな夢を持ってるのかって聞かれたんだよ」



 リエットがマナに説明してくれる。

 するとマナが嬉しそうに両手を上げて答えてくれる。



「マナはね、もちろんおじいちゃんみたいな超一流の冒険者になるんだ! そのために毎日特訓してるんだよ!」



 そう言って取り出したのはフライパンだった。

 一体なんの練習をしているのだろうと思ったら顔を赤くして、フライパンを戻すと小さな短剣を改めて取り出していた。



「うん、こっちだよ。ここの給料で買ったんだよ」



 マナのお爺さんって確かマリウスって人だったよね。

 このギルドの銅像にもなるくらいだからやはり相当すごかったんだろうな。



「うん、これからも頑張ってね」

「うんっ!!」



 嬉しそうに大きく頷くマナ。




 ◇◇◇




 やっぱりいざ自分がしたいことって考えてもなかなか思いつかないな。

 マナとリエットにお礼を言ったあと、シィルはギルドを後にした。

 すると冒険者なのだろうか? ちょうどシィルと入れ違いにギルドへ入ってくる人がいた。

 背丈はシィルより高く、真っ赤で長い髪をした女性。片目は眼帯で隠しており、大人の女性らしい体つきをしていた。


 すれ違いざま、彼女はシィルを一瞥し、中へと入っていった。

 自分が何かしただろうかと不思議に思うシィルだったが、特に思い当たることもないので気にせずに次はエリーに会いに行くことにした。




◇◇◇




 ユーグリッド邸へと足を運ぶ。

 しかし、エリーはどこかに出かけているようで家へ行っても会えなかった。

 よく考えるとこの時間はいつもエリーとポーションを売っている時間だったな。もしかすると町の方で自分を探しているかもしれない。

 そう考えると早足で元来た道を戻っていった。


 すると道具屋近くで、先ほどシィルを一瞥していった女性に絡まれているエリーの姿を発見する。



「もう、あなたは何なのですか?」

「しらばっくれんじゃねーよ! お前がポーション売りなんだろう? いいからその何でも治せるというポーションをよこしな!」



 女性はエリーの胸ぐらをつかむ。するとエリーを守るように数人の兵士たちがどこからともなく現れる。



「エリー様を離せ!」

「ちっ、ここは見逃してやる。だがあたいは諦めねーぞ!」



 さすがに多勢に無勢と思ったのか、エリーを離すと捨て台詞を吐いて女性は去って行った。




◇◇◇




 兵士たちに介抱されているエリーにシィルは慌てて近付いていく。



「一体今のは?」

「あっ、シィルさん……。い、いえ、何でもないですよ……。たまに変わった方がいますよね……でも、もう大丈夫です」



 少し咳き込みながらもシィルには笑みを見せてくる。

 シィルは鞄からポーションを取り出すとそれをエリーに渡す。



「これ、少しはマシになると思うよ」

「あ、ありがとうございます……」



 エリーはポーションを受け取るとそれをゆっくりと飲んでいく。

 ただ、シィルは先ほどのことが気になって、ポーションを飲み終えたエリーに聞いてみる。



「今みたいなことってよくあるの?」



 シィルは一度も経験したことがなかった。

 それは、エリーが代わりに絡まれているからシィルまでは被害が及ばないだけ……なんてことも考えられるのではないかと思い聞いてみた。

 しかし、エリーは直接の返事を避け、ただにっこりと微笑んできただけだった。 

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