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夢を見る少年

 マナの失敗とも成功とも言い難い微妙な料理を食べた後、ギルド内で以前見たような光景が目に映る。



「おいおい、なんで俺がギルドに登録できないんだよ!」

「ギルドでは年齢制限があるんです。まだ君はその年齢に達していませんので」

「俺の実力はもう大人以上だ!」



 それを見ていたマナは苦笑を浮かべる。



「以前のマナってあんな感じだったんだね」



 客観的にみたらどう見えていたのかわかるようで反省しているようだった。

 そして、見ていられなくなったのか、少年の前に立つ。



「あなた、身の程知らずにも程があるわよ! 来なさい、マナとお兄ちゃんがあなたにはまだ早いってことを教えてあげるわ」



 マナも大人になったんだなとシィルは頷きながら聞いていた。

 が、今自分呼ばれなかったかと顔が固まる。



「えっと……、僕も?」



 念のためにマナに確認する。

 すると、にっこりと微笑んで来た。




 ◇◇◇




 なぜか自分も一緒に町の大広場へとやってきた。

 もしかして審判とかだろうか?

 それなら納得かとおとなしくついて行く。



「うん、ここなら安心かな? それじゃあマナが審判するから思う存分やるといいよ」

「……えっ!?」



 もしかして聞き違いかな?

 シィルは思わずマナに確認を取る。



「えっと、この子と戦うのって……僕じゃないよね?」



 自分を指さしながら聞いてみる。

 しかし、マナは笑顔を見せながら「もちろんお兄ちゃんが戦うんだよ?」と言ってくる。



「いやいや、僕が戦えるはずないでしょ? ただのポーション売りなんだよ!?」

「えっ、お兄ちゃん、ポーション売りなの?」



 シィルが自分のことを話した途端に少年が目を輝かせてきた。



「えっと、君、僕のことを知ってるの?」

「あ、あぁ、元々俺は王都出身だったんだ。でも、この町にとんでもないポーション売りがいるって聞いて馬車を乗り継いでやってきたんだ……。まぁ金はなかったし馬車を洗うことを条件に乗せてもらったんだけどな」



 とんでもないポーション売りって自分のこと?

 シィルは少し困惑した表情を見せる。

 えっと、だって、僕は普通にポーションを売っていただけだよ? そんなとんでもないなんて……。



「俺、あんたに会いたくてやってきたんだ。でも金が尽きて冒険者で生活費を稼ごうとしたんだけど、年齢制限? とかに引っかかってしまってな。でもあんたに会えたのならよかった。俺に戦いを教えてくれ!」



 頭を地面にこすりつけそうになる勢いで頼み込んでくる。

 そう言われても、シィルには戦う方法なんてわからない。



「あの……、顔を上げてよ。僕は戦う方法なんてわからないよ?」

「だってあんた、とんでもないポーション売りなんだろう?」



 そんなこと言われても……。いや、この町に別のポーション売りが……いないな。

 色々と思い返してみるが道具屋以外にこの町でポーションを売っているのはシィルだけだった。



「と、とにかく僕はポーション作り以外わからないよ?」

「そうか……とんでもないっていうのは強さじゃなくてポーション作りのことなのか? なぁ、一度でいいから作ってくれよ」



 服をつかんでねだられる。

 まぁポーションを作るところくらいならいいかな?



「マナも、マナもみたい!」



 先ほどまで審判する気でいたマナもシィルに近付いてくる。

 材料は……少し余っているな。これなら少しくらいポーションを作れるかもしれない。



「うん、それくらいならいいよ」



 そう言うとシィルは必要な素材を取り出していく。

 薬瓶に入ったきれいな水と薬草。



「これだけなのか?」



 少年が不思議そうに聞いてくる。

 シィルは一度頷くと薬草を瓶の中に加え、魔力を込めていく。

 そして、淡く輝いたところで魔力を込めるのをやめる。


 毎日何度も繰り返している工程だけあって寸分の狂いなくきっちりとポーションを作り上げる。



「うん、これで完成だよ」

「こんなに簡単なのか? なぁ、俺にもやらせてくれよ!」

「いいよ、素材ならまだあるから」



 こんな尊敬のまなざしで見られることの少なかったシィルは少し嬉しくなって持っていた素材のいくつかを少年に渡してあげた。



「えっと、こんな感じかな?」



 それを少年がシィルのまねをして作っていく。


 しかし、魔力を込める部分がうまくいかないようで出した素材を全て使ってもうまく作れなかった。



「ダメだー! 兄ちゃんってすごいものが作れたんだな……。俺もいつかはすごい人物になってみたいなぁ……」



 その場で大の字になりながら少年がつぶやく。



「どうしてすごい人になりたいの?」



 ふと思った疑問を少年にぶつけてみる。



「だって俺の父ちゃんと母ちゃんはすごい冒険者だったんだ。その血が俺にも流れている。きっといつかはすごい人物になって父ちゃんたちを見返してやるんだ!」



 少年はそれを見上げ、まるで雲をつかむように手を伸ばす。

 それを見ていたシィル。

 ただ毎日ポーションだけを売っていた自分に目標なんてあっただろうか?

 そのことに少し悩まされた――。


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