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少女との会話

 謎の少女と二人で近くにあった食堂に入る。

 さすがにピークの時間も過ぎているので中にいる人はまばらだった。



「何か頼む?」



 ミグドランドに家をもらってから宿代を払わなくてよくなってお金に余裕ができた。

 家の税金とかがあるのではとも思ったが、それもミグドランドが全て払ってくれているようで、シィルは代金を払うことは一切なかった。


 ここまでしてもらってもシィルに返すものは何一つない。

 でもそれだけじゃ申し訳ないので、ミグドランドにポーションを売りにいった時にはサービスでもう一本つけるようにしていた。


 初めは一本でいいとなかなか首を縦に振ってくれなかったが、何度も渡そうとするとようやくミグドランドが折れてくれ、最近ではポーションを二本もらってくれている。


 もともとポーションを作るのにかかる費用は空き瓶代だけなのでそれほどお金をかけずに作ることができる。


 すごく貯まっているわけではないが、少し金銭に余裕がある。

 この子に奢るくらいわけないだろう。


 すると少女は首を横に降る。

 何もいらないと言うことだろうか? もしかすると自分でお金を払うものだと思っているのかも。



「遠慮しなくていいよ?」



 このお店は払えないほど高いものは取り扱っていない。

 以前宿に住んでいたシィルもたまに来れるほどの値段であった。

 しかし、少女はメニューを持ったまま固まってしまい、一向に動こうとしない。


 このままだと決まりなさそうだしなぁ……。


 話を聞くことがメインなのにメニューで悩まれてしまっては困る。

 すると少女がジッとデザートのところを見ていることに気づく。



「それ、食べたいの?」



 シィルは尋ねてみる。

 しかし、少女は顔を赤くし、首を必死に横に振って否定する。

 その反応を見てだいたい想像できたシィルは店員を呼び、先ほど少女が見ていたデザートと自分用の飲み物、あとはスラが邪魔しないようにスラ用のご飯を頼んでおいた。



「…………」



 何も言わない少女。ただ、その目は本当にいいのと訴えかけているようだった。



「うん、好きなだけ食べていいよ」



 シィルのその言葉を聞いて少女の顔にパッと笑顔が咲いた。




 ◇◇◇




 少女の前に置かれたのはとっても甘そうなパフェだった。

 手にスプーンを持つと目を輝かせてシィルを見てくる。

 苦笑しつつシィルは先ほどと同じ言葉を言う。



「好きなだけ食べていいよ」



 それを聞いた少女は一心不乱にパフェを食べ始める。


 そして、それほど時間をかけずに完食してしまい、名残惜しそうな顔をしていた。



「もう一つ食べる?」



 シィルがそう告げると少女は何度もコクコクと頷いた。




 ◇◇◇




 それから彼女はあと三回おかわりして満足してくれたようだった。



「それで話を戻すけど、どうして僕の後ろについて来ていたの?」



 その質問をすると少女が顔を伏せる。

 しかし、空になったパフェのお皿を見て、グッと口を噛みしめる。

 そして、小声でゆっくりと話してくれる。



「あの…………、お兄ちゃんから…………、変わった雰囲気を…………、感じたの…………」



 集中していないと聞き逃してしまいそうなほどの声。

 変わった雰囲気?

 シィルは自分の体を見回して、異変がないことを確認すると首を傾げる。



「あっ、ちが……うの。その……なんだかそのカバンの中から眩しいほどの魔力が……」



 魔力? あっ、そうか……。ポーションを作るときに魔力を込めてるもんね。


 シィルはカバンに入っているポーションを一本取り出す。

 すると少女はそれを覗きこむように見て頷く。



「うん、これすごい魔力……これなに?」

「何ってこれ、ただのポーションだよ?」



 変わったことを言うなと思いながらシィルは答える。

 すると少女が首を横に降る。



「これがポーションのはずがない……と思うんだけど」



 最後の方は自信なさげに言ってくる。



「そんなことないと思うよ? 僕は普通のポーションの作り方をしてるから……」

「普通の作り方?」

「うん、薬草と綺麗な水と癒しの魔力を使う普通の作り方だよ」

「確かにそれはポーションの作り方……だけど……?」



 それでも信じられずに首を傾げる少女。

 するとそのタイミングでリエットが現れて声をかけてくる。



「あれっ、シィルくん、こんなところで珍しいね」

「うん、少し話を……ってあれっ?」



 シィルの目の前はすでに誰も座っていなかった。

 ただ、幾多も並べられた空のお皿だけが先ほどの少女が実際にいたことを証明してくれる。

 シィルの目線を追って、空のお皿をみたリエットが冷ややかな目をシィルに向けてくる。



「あまり食べ過ぎたらダメだよ?」

「ってそれは僕が食べたんじゃないよ!?」



 思わずシィルは叫んでしまったが、最後までリエットには信じてもらえなかった。

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