ポーションの飲み比べ
「うーん、やっぱりあのポーションはどう見ても中級ポーションっぽいよな?」
シィルと別れた後もおじさんは首を傾げていた。
「どうしたんだ? 頭を使うなんてランドルムらしくないじゃないか」
おじさんに話しかけてきたのはいつも行動を共にしていたミューストン。
「お前ならわかるか? 普通のポーションの作り方を」
「ポーション? 使うのは薬草と水と癒しの魔力だろ? そんなこと常識じゃないか」
ミューストンがあっさり答えるのを聞いてランドルムはさらに首をかしげる。
「やっぱりそうだよな……。でもあのポーションは絶対中級ポーションだと思うんだが……」
「それなら飲み比べてみるのがいいんじゃないか?
ミューストンの回答にランドルムはハッとなる。
確かにそれもそうだな。幸い今日稼いだ金がまだ残っている。これで中級ポーションとあの少年のポーションを買って飲み比べたらはっきりとわかるな。同じものかそうではないものか……。
◇◇◇
翌日、ランドルムは開くと同時に道具屋へと駆け込んだ。
「親父、中級ポーションをくれ!」
「中級だと!? 何に使うんだ、そんなものを」
「なんだっていいだろう。ほらっ、金はあるんだ!」
ランドルムは中級ポーションの値段である銀貨四枚を道具屋のおじさんに手渡した。
「はぁ……、金を払うなら客だからな。持っていくといい……。ただ、これはそれなりの怪我でも治す薬だ。無駄遣いするなよ」
「わ、わ、わかってるよ!」
上ずった声を聞いておじさんはまた無駄遣いかとため息を吐くが、ランドルムはそのことに気づかなかった。
◇◇◇
次にポーション屋のほうだが、街中で売り歩いているということもあって中々会うことができなかった。
しかし、冒険者ギルドの前までやってくると受付の少女と話すシィルの姿を発見する。
「ちょうどよかった。探したぞ、ポーション屋!」
ランドルムとしては普通に声をかけたつもりなのだが、必要以上に驚き飛び跳ねるシィル。
「あっ、昨日の……。どうかされましたか?」
おどおどとした様子で話しかけてくるシィル。
そんなに怖いかなとランドルムは乱雑に生えた自身のヒゲを掻くとここにきた理由を話す。
「実はポーションを一つ買いたいんだ? 売ってくれるか?」
「も、もちろんですよ!」
シィルはまさかもう一度買ってもらえるなんて思っていなかったようでとても驚いていた。
急いでポーションを一つ出そうとして考え直す。
そして、数回頷いた後に薬瓶を二つ取り出す。
「これ、サービスですよ。またご贔屓にしてください」
予想外の人に連日買ってもらえたことを喜んだシィルは少しだけサービスすることにした。
「そうだな。ポーションを買うときはここに寄せてもらう」
ランドルムはそういうとポーションの代金を支払い、二本のポーションを受け取った。
◇◇◇
ポーションを買い終えるとランドルムは早速宿に戻り中級ポーションとシィルのポーションを並べる。
基本的にポーション系の見た目はそれほど違いがない。
といってもやっぱり隣に並べるとはっきりとわかる。
この二つは別のものだろうと。
ただそれでもあの効果……絶対に中級のはずだと信じて疑わなかったランドルムは両方の瓶を開けると同時に飲んでいく。
するとその違いが見た目以上にはっきりとわかる。
中級ポーション……これは凄く苦かった。
シィルが作っていたポーションの数倍苦い。
これのせいでちょっとずつしか飲んで行けないから治りが遅いのだろうか?
対するシィルのポーションはかなり飲みやすく後味すらない。
なるほど……、薬を飲みやすくすることでポーションでも傷を治しやすくしたんだな。
一本一本飲んだ時にはわからないほどの微々たる違いだが、それでもランドルムはシィルのことをすごいやつだと認識するのだった。




