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おじさん

 スライムのスラを連れてユーグリッド邸へと向かっているとその道中でエリーと出会う。



「あっ、シィルさん……とこちらは?」



 スラを見て首を傾げてくる。

 それを真似してかスラの方も体全体を傾げて……そのままシィルの体から転がり落ちてしまう。



「だ、大丈夫?」



 シィルは慌てて拾い上げる。

 驚きのあまりスラは目を回していた。

 シィルは急いでスラにポーションを飲ませる。するとすぐに元気になってシィルの肩へと戻っていった。


 スラがやってきた経緯を説明すると、エリーはくすくすと笑いながら聞いていた。



「可愛らしいかたですね。それに魔物なのに魔の力を感じませんし……」



 どうやらエリーにもスラが大丈夫だということがわかったらしい。

 あとはミグドランドだけだ。



「そうなんだ。それでも一応魔物だからミグドランドさんにも大丈夫かと聞きに行こうと思うんだけど……」

「わかりました。お伴しますね」



 ニッコリと微笑むとエリーはシィルの隣に立ち、ゆっくりと歩き始めるのだった。




 ◇◇◇




「そのスライムを飼いたいだと?」



 ミグドランドにスラを見せると少し驚いた後にため息を吐いてくる。



「うん、君には驚かされることが多いけど、まさか魔物をペットにしたいなんて言うとはね」



 そして、少し考え始まるミグドランド。

 その間、スラはテーブルに出されたお菓子をムシャムシャと食べていた。



「スラは私の方に来ててね。少し大切な話をしてるから」



 エリーがスラを抱きかかえる。

 危険はないと判断したのか、スラもおとなしくお菓子を食べている。



「Sランクの『赤い星』のミリシアとエリー、二人が大丈夫と言ってるんだもんね。おおよそ危険はないだろう。ただ一つだけ約束してくれ。その子が仲間を連れて街を襲うようなことがあれば……」

「はい、それはわかっています」



 もし、街を滅ぼそうとするならその時は討伐してしまうと言うことだろう。

 そう言うことにならないように気をつけないととシィルは気を引き締める。



「それにしても第二王子イルト様の時もそうだったけど、君のポーションは魔の成分を払う効果でもあるのかもな」

「へぇー、ポーションにそんな効果があるんですね」



 シィルはカバンから一本取り出すとそれを眺めて感嘆の声を上げる。

 それを見てミグドランドは呆れ顔で首を横に振っていた。




 ◇◇◇




 無事に飼ってもいいと言う承諾を得られたことでホッとしたシィル。宿代も稼がなくてよくなった分、のんびりと街を歩くことができた。

 すると街の外から少し怪我をしたおじさんが歩いて来た。

 少しだけの傷なら僕のポーションで……。

 そう思いスラを抱えたままシィルはおじさんに近づいていく。



「大丈夫ですか?」

「あ、あぁ……、いや、お前はポーション屋か。ちょうどいい、一本売ってくれ」



 その呼び方……。

 シィルはおじさんをよく見る。すると彼は以前にギルドで大量に食事を取っていた傭兵のおじさんと言うことに気づく。



「とりあえずこれ飲んでください」



 シィルは慌ててポーションを取り出すとおじさんはそれを一気に飲み干す。



「っぱー、やっぱ苦……っておっ?」



 みるみるうちにおじさんの傷が治っていく。

 それに驚きの声を上げるおじさん。



「では僕はこれで失礼しますね」



 家の方に戻ろうとするとおじさんが慌ててシィルの手を掴んでくる。



「ちょ、ちょっとまて! い、今の薬は?」



 わなわなと震えながら空き瓶をシィルの目の高さに掲げてくる。



「えっと、ただのポーションですよ?」



 これでその質問を聞かれたのは何度目だろう?

 鼻頭をかき、少し呆れ混じりに言い返す。



「ただの? いやいや、これがどう見てもただのポーションなはずがないだろ!」



 おじさんが先ほどまであった傷の部分を見せてくる。



「どう見ても中級ポーションなはずだ! い、いや、俺としては助かったが、こんな値段で売っていてはいいように扱われるぞ!」



 おじさんはおじさんなりに心配してくれているようだった。

 ただ、一つだけ違う部分がある。



「いえ、本当にただのポーションですよ。使ってる素材も薬草と綺麗な水と癒しの魔力ですから」



 特にこれは秘匿されていないし、本で調べたらすぐに載っているようなことだ。

 しかし、それを聞いてもおじさんは納得していない様子で首をひねり悩んでいた。



「まぁいいか。お前さんがそう言うならそうなんだろうな。ただ、俺のために言っているならそんな気遣いはよしてくれよ」



 それだけ言うとおじさんは苦笑しながら去っていった。

 ただ、最後にも一度首をひねっていたのは完全に信じ切っていなかったからだろう。

 それを見てシィルは乾いた笑みを浮かべていた。

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