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プレゼント

この話でポーション売りの少年の第1章第4話が終わりになります。


 イルトが捕まった後、アルタイルとマリナは王都へと帰っていくことになった。

 マリナはすごくさみしそうにしていたが、王族の一人が事件を起こしたとあっては帰らざるを得なかった。そして、その付き添いとしてミグドランドの兵士とギルドの冒険者が数人付いていくことになった。



「シィルさん、今度は是非王都へ遊びに来てくださいねー」



 大きく手を振りながらマリナの乗った馬車が動き出す。アルタイルの方はなぜか馬車に乗らずに近くの小屋の陰でエリーと何かを話しているようだった。

 そして、話が終わるとアルタイルはシィルのことをキッと睨みつけて「エリーさんのことを幸せにするんだぞ! もし何かあったら許さないからな!」と訳のわからないことを言って別の馬車に乗り込んでいた。


 困惑するシィル。するとエリーは呆れながらシィルに話しかける。



「もう……、困った人ですね」



 優しく微笑んでくるエリー。しかし、その回答がさらにシィルを迷わせるのだった。




 ◇◇◇




 アルタイルたちが帰るとシィルはユーグリッド邸に呼び出された。



「よくきてくれた。今回の件はすごく感謝してるよ!」



 両手を挙げてミグドランドに出迎えられた。

 今回って自分は何もしていないのに……。

 困惑するシィル。でもそんなことはお構いなしにミグドランドはシィルをテーブルに誘導する。



「これはささやかな礼だよ。思う存分食べてくれ! あと、何か欲しいものがあれば何でも言ってくれ。できる限り手配しよう」



 ミグドランドが笑顔で言ってくる。しかし、なにもしていない自分がもらってもいいのかな?


 少し悩んだ結果シィルは一応言うだけ欲しいものを言ってみることにした。するとさすがにそれは思っていなかったのか、ミグドランドを驚かせる結果となった。



「ほ、本当にそんなものでいいのかい? 今回の件、前のエリーの件、他にも返さないといけない恩はたくさんあるんだ。それを本当にそんなもので?」

「はい、頂けるのならそれがいいです。でもできなくても全然いいですよ、さすがに高価なものですから……」



 少し悩むミグドランド。

 さすがに今のものは難しいかなと思っていた。

 ポーション売りの自分が一生をかけても手に入るかどうかのものなわけだし。

 しかし、ミグドランドはすぐに笑顔に変わっていってくる。



「他ならぬ君の頼みだ! わかった。なんとかしよう」



 何を考えているのか、ミグドランドが細く笑む。それを見たシィルはなんだか嫌な予感に見舞われた。




 ◇◇◇




 それから数ヶ月の間、特に変わった出来事もなく毎日ポーションを売って過ごしていた。

 すると突然、前に頼んでいたものができたと言う報告を受ける。


 駄目元で言ったことなので、シィル自身も本当にそれがもらえるなんておおよそ思ってもいなかった。

 エリーに連れられてやってきたのは少しだけ西に少し行った緑が多く残る街はずれだった。


 そこの木陰にあったのは普通の人が住むには明らかに大きい家だった。



「えっ!? こ、これって?」

「はいっ、そうですよ。ここがシィルさんの家ですよ」



 まるでいたずらが成功したように、にんまりとするエリー。

 しかし、シィルは目の前の家以外に意識が向かなかった。


 シィルがミグドランドに頼んだ願いは、小さくていいから一人住むことのできる家……であった。

 今までは宿に住んでいたので、雨風が凌げる自分自身の住処が欲しかっただけなのだ。


 少なくともこんな……十人以上呼んでもまだまだ余裕がありそうなほどの豪邸を頼んだ覚えはない。

 ただただ口をパクパクさせていると、中からミグドランドが出てくる。



「おっ、やっときたね。どうだい? 立派なものができただろう?」

「立派って、立派すぎますよ……。ここまでしてもらって……僕は何も返せませんよ?」

「いやいや、この家は私だけの力で建てたものじゃないんだよ……」



 そう言って中に案内するミグドランド。

 そこにはリエットやライヘン、冒険者の面々やいつもポーションを買ってくれる常連の人、他にもマナやライ、マヤなんかもいた。



「えっと……、これは?」

「うん、ここはみんなでお金を出しあって建てたんだよ。なかなかシィルくんって自分の願いを言ってくれなかったからね。みんなお礼がしたいのに……。で、今回が初めてのことだったから、ついついみんな力が入ってね。普通の家くらいのつもりが気がつくとこんなに大きくなってしまったよ」



 リエットがそう事情を説明してくれた。

 中は今すぐにでも住めそうなほどで、家具一式の他に食材もひととおり揃っていた。


 ここまでしてもらうと逆に恐縮してしまう。



「ほ、本当にもらってもいいの?」



 だって自分はポーションを売っていただけなんだよ? あげてたわけではない。販売してお金(対価)をもらっていたのだ。それなのにここまでしてもらうと、嬉しさと同時に申し訳なさすら込み上げてくる。


 しかし、リエットがそんなシィルをさとすように言ってくる。



「貰ってくれないと困るよ。みんなシィルくんのためにお金を出し合ったんだもん」



 リエットの言葉に皆笑みを浮かべながら頷いてくれる。

 そんな彼らを見てシィルは一声「ありがとうございます」と大きく頭を下げるのだった。

たくさんの応援ありがとうございます。これからも更新を頑張っていきます。


これにてポーション売りの少年の第1章が終わりとなります。

第2章はこの家を舞台にして進める予定です。

第2章の開始は10月8日(日)12時を予定しております。


気に入っていただけましたら、ブクマや画面下部の評価をどうぞよろしくお願いします!

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