マリナとエリー
章分けを『○○章』→『○○話』に変更し、更に大きな枠組みで章を設けました。
さすがに疲れにポーションは効かないだろうし、むしろ今は瓶を持たせるのも怖かったのでシィルは手を振ってリエットと別れた。
そして、宿に帰ってくると想像以上に疲れていたようで倒れるように眠ってしまった。
◇◇◇
翌朝もポーションを作りに出かけるとマリナの姿があった。
確かに昨日帰る時に約束はしたけど本当に来るとは思わなかった。第一王女様に当たるわけだし、ただのポーション売りの所なんて来る用事もないだろう。
それでも来ると言うことは王女様も結構暇なのだろうか?
そんなことを考えていたシィル。しかし、約束をした以上、一緒にポーション作りに取り掛かっていく。
そして、一つ一つ教えていくとついにマリナはポーションを作ることに成功する。
「できましたー!!」
嬉しそうにポーションの瓶を掲げ、シィルに笑顔を見せてくる。それを見るとシィルも教えた甲斐があったなとどこか嬉しくなる。
「ありがとうございます……これもシィルさんのおかげです……」
マリナが嬉しさのあまりシィルに抱きついてくる。その豊満な胸に顔を押し付けられ、少し息苦しくなる。
なんとかマリナに気づいてもらおうと彼女の手を叩く。すると我に帰ったマリナが顔を真っ赤にしてシィルを押し飛ばしてくる。
「あっ、ご、ごめんなさい……。私、あの、その……」
その場であたふたとして頬を染めるマリナ。さすがに今のは恥ずかしかったのだろう……。
シィルも顔を真っ赤にしてマリナを見る。するとそのタイミングで遠くの方から声がしたので、助かったと思いながらシィルはそちらを向く。するとそこにいたのはエリーだった。
「シィルさーん!」
手を振る彼女。どうやらエリーに嫌われたわけじゃないとわかり少しホッとする。
シィルも小さく手を振り返す。すると隣でマリナが面白くなさそうに口を尖らせてエリーを見ていた。
「どうしてあなたがここに?」
不満そうにマリナがエリーに聞く。
それで全てを理解したようだが、エリーは何も言わずにただ微笑んだ。
「ちょうど良かったよ。昨日は会えなかったから心配で家に行こうと思ってたんだよ……」
「ほ、本当なのですか? すみません、昨日はちょっとした用事が急遽出来てこられなかったんですよ」
まさかわざわざシィルが自分の家まで誘いにきてくれるなんて……。その喜びで感きわまりそうになるエリー。一方シィルは、エリーがマリナを見ながら用事の部分を強調していたのがになった。といっても彼女は昨日自分とポーション作りをしていたわけだし用事を作れるはずがないもんね。
シィルは一人何かわからずに首を傾げていた。
「実は風邪か何か引いたのならポーションを届けようと思ったんだよ」
「風邪……部屋で二人っきり……。す、すみません、今からちょっと風邪を引いてきますね」
何か想像したのか、顔を真っ赤にしていきなり走り出そうとするエリー。
「ちょ、ちょっと待ってください! わざわざ風邪を引きにいかないでくださいよ!」
突然のエリーの暴走を慌てて止める。すると彼女は少し残念そうな顔をする。
「それで今日はどうしますか? 僕はポーションを販売するつもりですけど……」
「わ、私もご一緒していいですか?」
エリーが少し慌てながら聞いてくる。別に断る理由もないシィルはそのまま頷く。するとエリーが嬉しそうに笑みを見せる。
「それなら私も同行させてください」
すると今度はマリナが間に割って言ってくる。キッと睨みを利かすエリー。しかし、それに気づかずにシィルは頷く。
「うん、手伝ってくれるなら嬉しいです」
しかし、答えてから初めてエリーが目で拒んでいることに気づいた。
もしかしてまずかった? そうか、よく考えるとマリナって王女様だもんね。今まではなすがままに頼まれたことをしていたけど、販売を手伝ってもらうのはまずいか……。
「やっぱり手伝ってもらうのは申し訳が――」
断ろうとするシィル。
しかし、マリナが嬉しそうにしているところを見ると完全に断り切ることができなかった。
◇◇◇
いつものように声を出しながら街中を歩く。すると、定期的に購入してくれる人やエリー目当ての客がやってくる。が、シィルの横に立つもう一人の人物を見るとそそくさと立ち去ってしまった。
「ポーションってなかなか売れないのですね」
頬に手を当てて首を傾げるマリナ。
「どう見てもマリナ様のせいですよ」
「えっ、どうしてでしょうか?」
エリーが不服そうにつぶやくとマリナが聞き返す。
本当にわかっていないようだった。あまり買ってもらえない理由……それはマリナに萎縮してのことだった。
仕方がないので場所を変えてギルドの前へとやってくる。するとリエットがいつものように小走りで近づいてくる……がやはりマリナの姿を見ると口を開けその動きが止まる。
そして、シィルのそばに寄ってくると小声で聞いてくる。
「どうして王女様と一緒なの!?」
「えっと、王女様が僕にポーションの作り方を教えて欲しいって言ってきたんだよ。それで朝に教えてたらポーション販売も一緒に来ることになって……」
「はぁ……、それで断りきれなかったのね」
呆れ顔をシィルに見せるリエット。
「とりあえずいつも通り五本もらうよ」
リエットは銀貨四枚を取り出すとそのままシィルに手渡す。
「うん、ありがとう……」
「多分、このままじゃポーション売れないから、適当なところで王女様を帰らせた方がいいと思うよ」
シィルにだけ聞こえるくらいの声でリエットが言ってくる。
確かにマリナの姿を見ると誰も買ってくれなかった……。適当なところで切り上げるかな。
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