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第二王子の異変

総合評価15000突破しました。そして、週間五位に入りました。本当にありがとうございます。

 次に行く場所……と考えて、昨日治療したあのマヤという少女のことが気になった。

 かなり重そうな病気が、シィルのポーションで良くなったといっていたが、おそらく気持ちが前向きになって良くなったように感じてるだけだろう。

 もしかして、再び見にいったらもっと悪くなってるかもしれない。

 それだけ確認するために町外れにあるボロボロの家へと向かう。




 ◇◇◇




「あっ、お兄ちゃんだー」



 マヤはシィルの姿を確認すると小走りで近づいて来て、しがみついてくる。

 その様子から病気だった雰囲気は微塵も感じられない。



「もう走っても平気なの?」

「うん、もうしんどくないの」



 本当に気持ちだけで治ってしまったようだ。

 いや、実は精神的にまいっていただけで、本当は病気でも何でもなかったのかもしれない。うん、きっとそうだろう。

 シィルはただのポーションで病気が治った理由を必死に考え、自分なりの結論を出す。



「あっ、兄ちゃん。わざわざどうしたんだ?」



 抱きつくマヤを離そうと四苦八苦していると、昨日シィルから金貨を盗んだ少年が帰ってきた。



「うん、マヤちゃんの様子が気になったんだ……」

「あぁ、見ての通り元気が有り余っているぜ!」



 まだシィルの脚にほお擦りをしてくるマヤ。

 確かに元気そうだ。



「あっ、そうだ。せっかくだからこれ持って帰るか?」



 少年が差し出したのはたくさんの果物だった。



「へへへっ、俺、八百屋で働き出したんだ。兄ちゃんとの約束通り、もう人からものを盗むのはやめて、これからはマヤと二人頑張っていくぜ!」



 少年は誇らしげに鼻がしらをこすっていた。



「それでこれはお店の人がお土産だっていってくれたんだ。ただ量が量だから俺たちだけでは食えなくて、あの薬のお礼とまでは言わないけどもらってくれると嬉しいな」



 シィルは少しホッとして少年が差し出した果物を一つ取る。



「それじゃあこれ一つもらっていくね。ありがとう……あれっ?」



 少年の名前を言おうとしたが今の今まで聞かなかったことを思い出して口を閉ざしてしまうシィル。



「どうしたんだ? お兄ちゃん?」

「えっと……そういえば君の名前を聞いていなかったなと思ってね」

「それもそうか……。俺はライだ。兄ちゃんは?」

「僕はシィルだよ。よろしくね」



 それだけ伝えると手を振りながらライたちに別れを告げた。



「何かあったら言ってくれよ! 必ず力になるからな」



 ライが大声で叫んでくる。そんなことは起こらないだろうけど、その気持ちがありがたい。

 シィルは更に大きく手を振る。




◇◇◇




「そういえば今日はエリーと会わなかったな……」



 いつもなら外にいると必ずと言っていいほど遭遇していたエリーだが、今日はその姿すら見えなかった。

 もしかして嫌われた? ……なんてことはないよね。となるとまた風邪なり病気なりにかかっているのかもしれない。


 ライの家に行った帰りで、すでに日が沈みかけていた。さすがに今日エリーの家に行くのは迷惑だろう。

 それなら明日ポーションを作り終えた後に一度見に行ってみるのも良いかもしれない。

 とりあえず今日は宿に戻ろうと歩いていると、その道すがらで王子の一人であるイルトが何やら苦しそうにうめいていた。



「だ、大丈夫ですか?」



 明らかに異常な状態……。シィルは慌てて彼に近づいた。



「離せ!!」



 シィルが近づくとイルトは手を振り暴れ出す。

 そんな彼の目は充血し、血管は浮き出て前に見た温厚そうな雰囲気は一切感じられなかった。むしろ、魔物とかの類いにも見える。



「と、とりあえずこれを……」



 シィルがカバンからポーションを取り出す。しかし、それも手で払いどけてしまう。



「余計なことをするな……ぐおぉぉぉぉ!!?」



 手を振り払ったときにポーションの瓶が割れて、それがイルトにかかる。すると突然苦しみだす。

 手からは煙のようなものが上がり、その部分を押さえて地面にのたうち回る。


 えっ、な、何があったの?


 特に自分がなにかしたわけでもないのに目の前で苦しみ出されて困惑するシィル。

 するとイルトは手を隠しながらまるで親の敵でも見るようににらみつけて走り去っていった。



「僕、何かしたの?」



 後に残されたシィルは誰も答えてくれないその問いかけを一人呟くのだった。




◇◇◇




 宿に戻る途中、ギルド前に着くといつものようにリエットが前を掃除していた。しかし、その表情はどこか疲れているようだった。



「あっ、シィルくーん……」



 シィルの姿を見つけると大きく手を振ってくる。ただ、疲れはあるようでどこかゆっくりとした動作だった。



「なんだかお疲れみたいだね」

「うん、あの後もずっとあの人たちご飯食べてたんだよ……。もうすっかりギルドの食料庫は空になってるよ……」



 そんなに食べてたんだ……。

 シィルは驚きを隠しきれなかった。



「あっ、その時にあの人たちのことを聞いたよ。なんでも貴族の人の依頼を受けて任務をこなす傭兵……の人らしいよ」



 傭兵……ギルドの人とどう違うのだろう?

 疑問には思うもののギルド職員のリエットにはさすがに聞かなかった。

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